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米国は、中国の送り込んだスパイ逮捕に大童だ。これを未然に防ぐには、疑わしい人物の入国拒否がもっとも有効な策である。そこで、中国人ビザ1000人余を取消し処置とした。「水際作戦」の展開である。

 

中国外務省は米国の行動は、「あからさまな政治的迫害で人種差別」だとし、留学生の正当な権利を侵害していると主張。北京での同日の記者会見で、「中国はさらなる行動を起こす権利を有する」と同省の趙立堅報道官は述べた。

 

趙立堅報道官は、「戦狼外交官」として有名である。恫喝発言を連発するからだ。「人種差別で、留学生の正当な権利を侵害していると」大段平を切っている。米国が、自国の機密情報窃取を阻止することが、人種差別で中国人留学生の正当な権利の侵害と騒いでいる。頭を冷やして発言すべきであろう。

 

『ブルームバーグ』(9月11日付)は、「米国、安全保障理由に中国人1000人余りのビザ取り消し-中国側は非難」と題する記事を掲載した。

 

米国は国家安全保障を理由に中国人留学生・研究者1000人余りのビザ(査証)を取り消したことを明らかにした。中国政府は抗議するとともに、報復の可能性を示唆している。

 

(1)「(在中)米国大使館の報道官は9月10日の声明で、「高度な軍事力を開発する目的でテクノロジーと知的財産、情報」が中国人の大学院生や研究者に窃盗されるのを防ぐ措置の下、ビザが撤回されたと発表した。影響を受けるのは「少数の学生・学者」とし、米国は引き続き「合法的」な学生・研究者を歓迎するとコメントした」

 

ここで米国大使館が発表した、中国人留学生・研究者1000人余りのビザ取消しは、肩書きを偽ってビザ申請した者を調査した結果、はじき飛ばしたのであろう。今回の措置は、5月の米大統領布告によるもの。すでに4ヶ月の時間を経ており、米国が厳重に身元調査して「スパイ予備軍」を排除したのであろう。多くは、中国人民解放軍ないし関連大学や研究所に所属する「スパイ予備軍」だ。これまで、FBIに逮捕された人間は、すべてこのケースに該当する。

 

それにしても1000人余とは凄い。1人1テーマのスパイでも、1000余のテーマが労せずして中国に渡るリスクを、米国は抱えるところだった。油断も隙もならない中国の泥棒根性に呆れる。

 

(2)「中国外務省は米国の行動は「あからさまな政治的迫害で人種差別」だとし、留学生の正当な権利を侵害していると主張。北京での同日の記者会見で、「中国はさらなる行動を起こす権利を有する」と同省の趙立堅報道官は述べた。米国大使館によると、ビザ取り消しは中国人民解放軍と関係のある中国国民を対象にした5月の大統領布告の下で行われた。ビザが無効になった個人についての情報は明らかにされていない」

 

米国大統領布告で、すでにビザ発給を厳重にすると予告している。中国は、それでも1000人余も申請ビザに潜り込ませてきたのだ。その大胆不敵なやり方に、腹が立つやら、またそこまでやらなければ、先端情報を得られないという後進国特有の事情を抱えているに違いない。こんな状況で「世界覇権」を夢見ている。どこか、頭の構造がおかしくなってしまったのだろう。

 

米国留学が困難になれば、日本へ向かってくるだろう。日本も入国ビザはより慎重にして、「ネズミ一匹」通さない体制を組むべきだ。日本国内にある「孔子学院」は、スパイの拠点になるので、警察庁は監視の目を光らしておくべきだ。

 

中国外交部の「戦狼報道官」は、「中国はさらなる行動を起こす権利を有すと」と、大見得を切っている。そういう啖呵を切る前に、中国人留学生が米国でいかなる「スパイ活動」をして逮捕されているかを知るべきだ。

 


『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月8日付)は、「
FBIから逃げる中国研究者、緊迫の攻防」と題する記事を掲載した。

 

米当局が中国軍とのつながりが疑われる中国人研究者の捜索を強化する中、追う側も追われる側も緊迫度が増している。検察当局の話からは、逃亡計画失敗やごみ箱に捨てられた証拠、空港での捕物劇といった生々しい攻防が浮かび上がる。

 

(3)「連邦捜査局(FBI)捜査官は今夏、数十人の研究者を尋問し、研究内容や軍との関連を問いただした。ここ数週間、捜査範囲が拡大したことを受け、一部の容疑者は当局の追及を逃れようとし、少なくとも2人の研究者が逮捕された。彼らの研究は、中国人民解放軍の計画と関係している疑いがある。検察側の裁判資料でそれが明らかとなった」

 

FBIが、集中的に捜査している。スパイ予備軍の摘発である。中国にとっては、スパイほど、「おいしい稼業」はない。ほとんど無コストで、莫大な成果を手に入れるからだ。

 

(4)「検察当局によると、うち1件では、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の人工知能(AI)分野の研究者グアン・レイ容疑者が、FBIが捜査中の技術窃取疑惑に関連する証拠を破壊した罪に問われている。グアン容疑者は、ロサンゼルス国際空港から出国するところを止められ、その数日後、データを消去したコンピューターのハードドライブ(HDD)をごみ箱に投棄した。検察側はこう主張する」

 

証拠隠滅罪である。禁固刑で20年が予想される。

 


(5)「もう1件では、バージニア大学で流体力学を研究する科学者フー・ハイチョウ容疑者が、指導教官のプロプライエタリソフトウエア(ソースコードが未公開のソフト)のコードを盗んだ疑いがある。この教官は米海軍の資金援助を受け、20年前からソフトの開発に取り組んでいた。フー容疑者は先月、シカゴ発の便に搭乗するところを米当局に阻止された。指導教官は彼が中国に戻るつもりだとは聞いていなかったという。検察側は裁判資料でこう主張した」

 

米海軍の資金援助を受け、20年前から研究してきたソフトの窃取容疑である。もし、中国の手に渡っていたらと、思うとゾッとする。これは、証拠隠滅罪を上回る窃盗罪である。重い罪に服するのだろう。