a0960_008426_m
   

事大主義が招いた外交音痴

米国からも出た文政権批判

無知!米軍に統帥権寄こせ

破綻の韓国外交バランス論

 

間もなく退任する安倍晋三首相は、「地球儀を俯瞰する外交」を標榜し着々と実現に向かっている。日・米・豪・インドを巻き込んだ「インド太平洋戦略」は、安倍氏の地球儀を俯瞰する外交政策から生まれたものである。

 

韓国の文在寅大統領は、さしずめ「朝鮮半島を俯瞰する外交」である。2045年までに南北統一を果たすという夢に向かって進んでいるが、米中対立の長期化という新たな国際情勢の変化には、まったく無頓着である。米中に深くコミットしないで、上手く泳ぐ「洞ヶ峠」を決め込んでいる。旧朝鮮李朝末期の外交戦略とほとんど変わらない有様だ。

 

事大主義が招いた外交音痴

旧朝鮮李朝末期の外交戦略も、隣国日本の存在を極めて軽んじていた。明治新政府が、李朝に公式文書を届けても受取りを拒否したほど。日本が届けた公文書が、明治天皇の名前であったからだ。日本のごとき儒教上の野蛮国が、「天皇」という称号を使うことは許されないという理由である。朝鮮では、日本についての知識が完全に欠落していた。

 

こういう李朝と文政権の間に、対日知識においてどれだけの差があるだろうか。ほとんど、同じである。韓国が、国際法を覆す判決(旧徴用工賠償問題)を出しながら、それを当然と考えている文政権は、李朝による日本の天皇称号を拒否するのと同じ振る舞いである。韓国は、国際情勢の変化に極めて疎いのだ。

 

普通であれば、周囲を「強国」に取り巻かれている場合、国際情勢の変化に鋭敏に反応するはずである。韓国では、それが全く見られないのである。真空状態である。これは、歴史的に中国の属国であったことが災いしている。「事大主義」という独特の中国依存心が生んだ結果であろう。その事なかれ主義が、文政権にも色濃く引継がれている。朝鮮戦争によって生まれた米韓同盟が、文政権によって揺さぶられているのは、その「事大主義」に依存して南北統一を先行させようとする民族主義によるものだ。

 


文政権は、民族主義の集団である。主義主張を超えて、南北は統一すべきという素朴な議論である。北朝鮮の人民弾圧に目を瞑り、韓国も北朝鮮化して言論の自由を圧迫する行動が始まっている。進歩派を任じる文政権が、検察改革を強引に推し進めた理由は、政権の不正を捜査させないための防護壁にしたのである。その意図が、今や明確になっている。秋法務部長官(司法大臣)の息子に関わる徴兵時代の「違法休暇」の訴えが10件以上も告訴されているが、捜査は意図的に遅らされていると批判を浴びている。公権力が、私益に奉仕しているのだ。

 

米国からも出た文政権批判

注目すべきは、同盟国の米国から韓国批判の言説が出始めてきたことである。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(9月11日付寄稿「韓国の活動家弾圧、北朝鮮に倣う行為」)は、下記のように指摘している。筆者のジョシュア・スタントン氏は、米国の弁護士。もう一人のイ・ソンユン氏は、米タフツ大学フレッチャー外交大学院助教である。

 

「文(在寅)氏の最終的な目標は2045年までに南北を統一させることであり、1990年のドイツ統一の条件とは異なる条件を受け入れる意向だ。同氏は国会に対し、『イデオロギーや制度の違い』を超越し、『朝鮮人主導による独立した統一』――これは『米国から独立している』という意味で北朝鮮が使用している文言――を達成するための北朝鮮との一連の合意を批准するよう要請する計画だ」

 

ここでの指摘は、韓国が民主主義を捨てても北朝鮮と統一するとしていることだ。その際は、米国から独立(米韓同盟破棄)するという青写真である。実現すれば、朝鮮半島が大きく左傾化する。

 

こういう青写真が、米中対立の長期化の中で実現する可能性があるだろうか。旧李朝で混乱した外交戦略では、清国(中国)を後ろ盾にする案と瓜二つである。米国政府は、文政権の底意を知った現在、急速に韓国へ冷淡な態度を取り始めている。その一例を示したい。

 

韓国外交部の崔鍾建(チェ・ジョンゴン)第1次官が9月11日、米国務省のスティーブン・ビーガン副長官と会談した。崔次官は会談後、「(米韓両国が)外交当局の局長級実務協議体の『同盟対話』を新設することで共感した」と発表した。米国務省は即時に、「(新設に)同意したことはない」と崔次官発言を否定したのだ。そして、「おそらく今後もやらないだろう」と語った。『朝鮮日報』(9月12日付)が報じた。

 

この食違いは、なぜ起こったのか。米国側が、韓国に言質をとられないように警戒姿勢をとっているからだ。米韓には、同盟国関係においてあり得ない冷え冷えとしたものを感じるのである。(つづく)