a0960_008572_m
   

中国民営企業は、官僚による賄賂要求で経営が困難になっている。習近平氏による「国進民退」政策で、国営企業が主体の産業構造に転換している。民営企業は、官僚によって食いものにされる傾向が強まっている。

 

中国脱出の中で、民営企業経営者が目立っている。中国に止まると、賄賂の請求によって経営が成り立たないからだ。悪質なケースでは、過大な賄賂を請求して支払わない場合、逮捕して刑務所送りという想像もできない事態が発生している。中国の暗黒部分だ。

 

『大紀元』(9月15日付)は、「米亡命の中国元副市長『民営企業がほぼ消滅』15兆円以上負債の地方政府も」と題する記事を掲載した。

 

米国に亡命した中国黒龍江省鶏西市の元副市長、李伝良氏はこのほど、中国東北部の各レベルの地方政府が職員の給料を支払えず、財政破綻に近い状況にあり、地方の民営経済はほぼ壊滅していると明らかにした。

 

(1)「中国当局が、巨大経済圏構想「一帯一路」政策などを通じて、国内外に中国経済が繁栄していると吹聴している。李伝良氏は、当局は宣伝で「深刻な景気悪化、地方民営企業の倒産ラッシュ、人々が安心して暮らすことが出来ない現状を隠したいだけだ」と非難した。李氏によれば、一部の地方政府は公務員への給料支払いや、貧困層への救済金給付を延滞している。一時解雇された労働者は、最低限の生活を維持する給料をもらえない状況だという」

 

中国経済の減速とともに、地方経済の不振が目立っている。この記事の舞台は中国東北部であり、かつての重工業地帯だ。産業構造の転換に乗り遅れ、GDPの水増しで有名な地域である。この衰退に輪をかけているのが、官僚の賄賂要求である。

 


(2)「中国の重要な工業地帯だった東北部が長年、経済不振にあえいでいる理由について、李さんは「地方政府から中央政府までの根強い腐敗にある」とし、民営経済が発展できず、今は破滅な状況だ。同氏によると、地方政府のトップが民間企業の経営者に賄賂を強要した場合、経営者が贈賄を拒否すれば、濡れ衣を着せられて拘束される可能性が大きい。経営ができなくなることを避けるため、民間企業の経営者らが次々と賄賂を渡しているという」

 

中国官僚は、清国時代そのままである。賄賂を懐に入れるのが常識という世界だ。先進国では不正を許さない近代官僚制に比べて、専制主義下の家産官僚制は極めて恣意的な行動をとることで有名だ。マックスヴェーバーが、つとに指摘した通りの絶望的な振る舞いである。

 

(3)「李伝良氏は、黒龍江省伊春市の著名な実業家、馮永明氏の例を挙げた。中国当局は2008年、汚職の容疑で馮氏と兄弟2人を拘束し起訴した。11年、伊春市中級人民法院(地裁)は馮氏に対して、執行猶予付きの死刑判決を、また、兄弟2人に対して無期懲役をそれぞれ言い渡した。さらに、3人は政治的権利を終身はく奪され、すべての個人財産も没収された。李氏によれば、馮一族は地元で「光明家具」という家具会社を経営しており、地元に1万人以上の雇用機会を提供し、政府には毎年巨額の法人税を納付していた」

 

官僚が、自らの欲望を満たすために、あらぬ罪名で民営企業の経営者を刑務所へ放り込むという極悪非道ぶりである。これでは、民営企業の発展はあり得ない。中国の恥部である。

 

(4)「当時、伊春市トップである市党委員会書記の許兆君氏(のちに同省鶏西市党委員会書記になった)は、馮氏らの財産を自分の所有にするため、不法経営や脱税という罪名で馮氏らを拘束した。「馮氏らが有罪判決を言い渡された後、光明家具の資産はすべて競売にかけられた。許兆君氏の知り合いの実業家が落札したと言われている」。馮永明氏らの遭遇は、中国企業家がたどる末路の典型例だという。官界の裏のルールの下では、「民営企業はほとんど消滅した。経営者らはビジネスをしたくても、いつか当局の取り締まりの対象になると常に不安を持っているからだ。だから、中国の経済危機の根本原因は、この政治的体制にある」と李伝良氏が語った」

 

下線部の指摘は、重要である。専制主義下で経済が発展するはずがないのだ。習政権は、この歴史的な事実を反芻することなく、「国進民退」を貫いている。

 

(5)「李伝良氏は、地方政府による経済データの水増しも地方経済の悪化を招いた一因であるとした。「すべての経済データはうそだ。実績を上げようとする役人らは、必要性や地方の財政状況を考えずに、見せかけの工業区や特別開発区を建設してきた。実際に、それの大半はゴーストタウンだ」。しかし、この状況を指摘し、監督管理しようとする人がいないだ。中央政府から地方政府まで、すべての幹部が利益でつながっているため、「不正行為について、他の幹部は見て見ぬふりをしているのが実情だ」

 

中国の家産官僚制は、先進国の近代官僚制と比較して、邪悪・不公正・恣意的という最低の集団である。こういう集団の率いる中国が、脆弱であることはいうまでもない。崩れる時は、あっけなく崩壊するであろう。