a1320_000159_m
   

米中冷戦で中国勝利説の曖昧

欧州が人権で中国へ反旗翻す

習近平氏の地位は安泰でない

中国は「第二の日本」で零落

 

中国を巡る情報分析では、従来になかった「習近平失脚」が出てきた。今年に入って、新型コロナウイルスが世界に広がるパンデミックによって、中国は内外で苦境に立たされているからだ。国内ではロックダウン(都市封鎖)による経済損失が尾を引くこと。海外では、パンデミックの責任論が重くのしかかっている。中国は、未だにWHO(世界保健機関)による武漢での現地調査を阻んでいるが、いずれ「中国原因説」が確定した場合、習近平氏の責任論に降りかかると見られている。

 

習氏は、「中国原因説」を振り払うように周辺国への強硬策を取っている。これが一層、中国国内での論争を招いている。ただ今のところ、習氏の責任を直接に問うものでなく、日本が太平洋戦争に突入した歴史的背景を議論することで、間接的に現在の中国の置かれた危険性を示唆するものだ。こういう日本を軸とする「歴史論争」は、過去になかったことである。

 

英国紙『デイリー・エクスプレス 電子版』(9月12日付)は、英軍元将校で国防問題専門家のニコラス・ドラモンド氏のインタビュー記事を掲載した。新型コロナウイルスの独立調査の中間報告によって、習近平氏が失脚する可能性があるとの見方を示して注目されたのだ。このインタビュー記事は、1週間後に削除されたという。中国からの圧力がかかったと見られている。

 


習氏の国家主席任期は2022年までだ。すでに、国家主席の任期限定は改正され、「期限なし」とされている。習氏が、今回のパンデミックが起こらなければ、22年以降も「続投」となるのだろうが、にわかに状況が変わってきた。

 

習氏と取り巻きの民族派は、強硬突破の方針だろうが、それを阻止する党内の「反習派」との間で厳しい争いが起こる可能性が出てきた。それは同時に、中国周辺で「きな臭い」軍事衝突を招く要因になろう。国内不安に関わるストレスは、対外衝突で解消する「帝国主義パターン」が予想されるからだ。

 

その衝突第1号は、台湾への武力攻撃であろう。中国は、台湾の半導体工業を差し押さえたいという欲望も重なって、「台湾解放」を名目に軍事攻撃するというものだ。最近、米国政府の高官が相次いで訪台しているのは、米台緊密化を印象づけて中国の台湾攻撃阻止を目的にしている。以上の、中国内外の動きは、後で詳細に取り上げる予定だ。

 

米中冷戦で中国勝利説の曖昧

ところで、「米中新冷戦でアメリカに勝ち目はない」という、勇敢な主張が出てきた。最近では、珍しい中国支持の議論である。この説に従えば、習近平氏の「辞任」などはあり得ないことだ。逆に、習氏の株が上がることで、習氏の権力基盤は一段と高まるはずである。

 

『ニューズウィーク 日本版』(9月8日付)は、丸川知雄・東大教授の「米中新冷戦でアメリカに勝ち目はない」と題するエッセイを掲載した。

内容は、タイトルから分るように米中新冷戦は中国が勝つ、というものである。先ず、丸川氏の主張を要約したい。その後で、私のコメントを付す。

 


1)通信の専門家でもない政治家が、「中国製の(通信)機械は危ないから使うな」と命令すれば、通信事業者は中国製を使いさえしなければいいんでしょと考えて、かえって情報の漏出防止に対して必要な対策を怠る危険性がある。

 

2)いま米国がやっている中国のハイテク企業いじめには、いったいどのような戦略的意味があるのか説明がなされていないし、説明することもできないのではないか。ファーウェイに輸出するのはだめだが、ファーウェイと同じ中国の民生用スマホメーカーであるシャオミやオッポやZTEに売るのは特に規制しないというのでは道理に合わない。

 

3)米国が、安全保障上の脅威を理由にする輸出規制の「成果」はショボいものでしかない。ファーウェイは自ら5Gスマホを作る道を断たれるならば、自社の技術を他社にライセンスするだろう。その結果、中国国民が手にするスマホのブランドは、ファーウェイから他社に変わるかもしれない。最新鋭の5Gスマホが、入手できるのである。これで安全保障上の脅威が減じることになるのだろうか?

 

4)米国が、中国に対して輸出管理という経済戦争に勝利できるかどうかは、米国およびそれに同調する国々が、中国が他から入手できないものをどれだけ効果的に封じ込められるかにかかっている。ファーウェイを封じ込めても、中国が他からいくらでも代替品を入手できるのであれば封じ込めの効果はない。(つづく)