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ともかく、韓国は日韓関係打開に焦っている。菅首相の返書があったというだけで喜ぶほどだ。外交儀礼上の返書で、それに特別の意味があるわけでない。韓国が、外交的に行き詰まっている証拠である。

 

韓国では、菅首相がリアリストであるという認識も深まっている。「北東アジアの安定のために」といった抽象的なテーマで、管氏が日韓会談に応じるようなことはない。韓国が、旧徴用工賠償問題について解決案を出さない限り、日本は首脳会談を開かないだろうと見るようになっている。焦る韓国では、自らの譲歩案を用意すべし、との意見が強いのだ。

 

『中央日報』(9月23日付)は、「韓日首脳が書簡を交わした今、『譲歩イニシアチブ』推進を」と題する記事を掲載した。

 

この記事は、韓国の日韓問題専門家を集めた座談会記事である。出席者全員、韓国が「譲歩案」を用意しなければ、日本は首脳会談に応じないだろうと見ている点に注目したい。

 

16日の菅義偉内閣の発足をきっかけに、ふさがった韓日関係を改善すべきだという声が高まっている。18日に開催された「韓日ビジョンフォーラム」で、出席者らは「菅首相は韓日関係を改善しようという意志があるため、我々が先に11月の韓日中首脳会議の前に水面下交渉を積極的にすべきだ」という意見をまとめた。



(1)「菅氏は外交の門外漢でない。最長寿官房長官として国家安全保障会議を通じて主な情報を集め、韓日懸案に関する熟知度が高い。また庶民派であり、名誉に対する執着も少ない方だ。右派団体の「日本会議」に参加するが、中心人物でない。理念性向も少なくて実用的だ。韓国が主導的に対話による問題解決に取り組めば、菅氏も反応を見せる可能性がある。カギは今年末から来年初めにかけて、日本企業の差し押さえ資産の現金化が近づくのを防げるかだ

 

菅首相についての認識は、韓国側にも相当深まっている。思想的背景で、韓国に対応しているのでなく、韓国の度の過ぎた対日要求に辟易しているという認識だ。文政権にとっては、やりにくい交渉相手であろう。単なる「反日意識=歴史認識」で立ち向かうと、ぴしゃりとやられると見ているのだ。

 

(2)「日韓首脳会談を開催できる、前提条件は次のようなものだ。

▼司法的に現金化を猶予できるか

▼文喜相(ムン・ヒサン)案に続く尹相ヒョン(ユン・サンヒョン)案のように特別立法で強制徴用問題を解決できるか

▼政府が代位弁済した後に求償権を請求するのは可能か

▼国際法的な協議・仲裁・裁判への回付が可能か--

これらを議論する必要がある。これらすべてが失敗する場合の危機管理対策も必要だ」

 

以上のような4点について、韓国が国内でコンセンサスをつくる必要がある。韓国は、謝罪とか誠意などの情緒的言葉が入り込む余地のない合理的な案をまとめることだ。それができなければ、日韓首脳会談は開けない。

 

(3)「安倍内閣の最長寿官房長官の記録を立てただけに、当分は「安倍氏のいない安倍内閣」を維持するだろう。特に菅首相は官房長官として内政だけでなく外交に関与したうえ、2015年の韓日慰安婦合意当時には安倍首相が消極的な姿勢を見せると菅氏が関与したほど韓日間の懸案をよく知っている。我々がどんな案を日本に提示するかがカギだ。菅首相こそが「韓国は度が過ぎる」と考える普通の日本人であり、草の根ナショナリズムの典型だ。日本の首相が交代したので日本が先に動いてほしいという接近はいかなる効果もない。我々が代案を作り、日本が対話に出てくるよう引き出すのがよい」


菅首相は、安倍政権7年8ヶ月を裏で支えた官房長官であった。それだけに、日韓関係にも精通している。「日本の首相が交代したので、日本が先に動いてほしいという接近はいかなる効果もない」と見ている。文政権は多分に、日本が先に動いて欲しいという願望だろうが、それは全くの見当違いである。

(4)「強制徴用判決は特別なものではなく、最近の大法院の判決のトレンドだ。人民革命党事件および光州(クァンジュ)民主化運動などでも被害者に慰謝料を支払うことにした。現金化は司法手続きに基づいて進行され、世論のため止まることはできない。立法を通じて解決するのが最も望ましいだろう。日本もやむを得ず交渉に応じるのではないかと考える」

韓国では、過去の歴史事件の被疑者に慰謝料を払う流れがつくられている。旧徴用工賠償問題もその一つとして政府が慰謝料を払い、日韓問題解決に乗出すべき、としている。文大統領の「三権分立」という原則論では、問題が永久に解決しないのだ。