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韓国経済にまた一つ、重荷が増えた。ムーディーズは、韓国を代表する企業26社中の15社に対して、上半期業績不振を理由に信用格付け引下げを警告した。これは、韓国のマクロ経済にも重大な影響を及ぼすものだ。

 

『朝鮮日報』(9月24日付)は、「ムーディーズ、韓国大企業の信用格付け引き下げを警告」と題する記事を掲載した。

 

世界的な信用格付け会社、ムーディーズは23日、韓国の大企業の信用格付けを一斉に引き下げる可能性を警告した。ムーディーズは韓国の非金融分野の企業26社を分析した結果、半数を超える15社の上半期の業績が不振だったと評価した。

 

(1)「ムーディーズは、「世界的な景気低迷が続く中、韓国の非金融企業の信用度に圧力が続きそうだ」と予想した。特に石油精製、化学、鉄鋼、自動車産業など景気に敏感な産業が大きな打撃を受けた。ムーディーズは「これら産業はコロナによって最も大きな打撃を受け、景気回復遅延など外部のショックに弱い」と分析した。一方、通信業などはコロナによる影響をさほど受けていないとされた」

 

韓国経済を代表する企業の業績不振が明らかになっている。石油精製、化学、鉄鋼、自動車産業などだ。コロナ・パンデミックの大波を被った結果である。世界景気の回復を待つほかない。

 


(2)「今後の景気回復は、コロナの広がりをどれだけ抑制できるかにかかっているが、現時点で楽観は難しいとの見方を示した。ムーディーズは、「最近新規患者数が急増したのは、効果的なワクチンが登場するまでは(コロナの拡散を)継続的に抑制するのが難しいことを示している」と指摘した。ムーディーズは韓国を代表する企業の信用格付けが引き下げられる可能性が高いとした

 

韓国大企業の信用格付けが、引下げられれば株価へ影響する。それは、通貨危機への序章となりかねず、韓国は緊張を強いられるのだ。

 

(3)「ムーディーズが格付けの対象にしている韓国の民間・非金融企業は、サムスン電子、現代自動車などを含む26社だ。うち格付け見通しが「ネガティブ(弱含み)」なのが13社、「ステイブル(安定的)」なのが9社となっている。格付け見通しが「ポジティブ(強含み)」の企業はなかった。信用格付けが「ネガティブ」とは、今後2年以内に信用格付けが低下する可能性が高いことを意味する」

 

格付け見通しが「ネガティブ(弱含み)」になれば、2年以内に格付け引下げの可能性が高まる。韓国経済には悪材料だ。ここで、先々の経営環境がさらに悪化するという悲観的な見通しが高まっている。それは、文政権による企業規制立法が実現することである。

 

『中央日報』(9月24日付)は、「外国資本の投機との訴訟を助長しながら経済活性化を望むのか」と題する社説を掲載した。

 

企業は来るべきものが来たという雰囲気だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権が国政課題として推進してきた「企業規制3法」(公正取引法・商法・金融グループ監督法)が国務会議の議決を経て国会通過の直前段階に入った。第20代国会でも企業の経営に致命打になるという懸念のためブレーキがかかったこの法案が、巨大与党の国会掌握をきっかけに推進力を得ることになり、企業は危機を迎えている。

(1)「現在の法案は世界的に類例がない急進性を帯びているのが問題だ。憲法が保障する経営の自律性はもちろん、国際的な慣行から見ても反企業的な条項を持つ。最も大きな問題は資産2兆ウォン(約1800億円)以上の企業に対する多重代表訴訟制と監査委員分離選任だ。この2つの条項は企業の経営に対する無差別的な訴訟と投機の口実を与える。「財閥の経営透明」という名分の中、国内企業に対する投機資本の攻撃が日常化する可能性があるということだ」

 

資産1800億円以上の企業は、多重代表訴訟制と監査委員分離選任という2つの新たな問題が課されることになった。それぞれの内容は、後のパラグラグで説明する。

 

(2)「多重代表訴訟は、親会社の株主が子会社の経営不信を理由に子会社の取締役を相手に訴訟を提起できる制度だ。子会社の上場の有無とも関係がないため、企業の新規事業もすべて訴訟の対象になる。訴訟乱発の可能性が高く、米国・日本でも親会社が子会社の株式100%を保有する場合に限り認められる。実情がこうであるにもかかわらずそのまま導入する場合、持ち株会社体制の国内企業は子会社の経営の失策を口実に限りなく訴訟に巻き込まれる可能性がある」

子会社をつくる理由は、将来の成長が不透明な場合、とりあえず「子会社」として発足させて様子を見るケースだ。ベンチャー的な色彩もある。親会社役員が、この子会社まで業績不振を理由にして訴訟対象になるのは、子会社をつくれないという消極経営に追い込む。

 

(3)「監査委員の分離選任は、企業の取締役会に投機資本のトロイの木馬を入れるような格好になりかねない。3人で構成される監査委員会で社内監査委員の議決権行使を制限する規定があり、大株主の影響力はすでに遮断されている。今回の改正案はこのルールの対象を外部監査委員2人に拡大する。この場合、投機的な外国資本が株主総会で力を合わせて監査委員選任に影響力を行使することができる。これも米国や日本では導入されていない」

 

監査委員は、3人で構成される。具体的には、企業出身監査委員と外部出身監査委員である。だが、企業出身監査委員は議決権行使を制限し、外部監査委員が2人へ増やされ、大幅な決定権を握る。ドイツ流監査役制度の導入であろう。これは、投機的な株主の恣意的な運営にもなりかねず「危険」というもの。韓国株式市場は、外国資金が大きな影響力を持っているので、韓国企業が振り回される公算があるとしている。

 


(4)「結局、過度な企業規制は新型コロナ克服と経済活性化を推進する政府の政策にも逆行する。企業の支配構造を透明にするのはよいが、急進的にすれば企業は厳しい状況に直面する。国政課題という理由で強行することではない。企業の現実を十分に確認して失敗を犯さないことを望む」

 

前記の多重代表訴訟制と監査委員分離選任が、現実を無視して行われるとどうなるか。韓国企業は、守勢に回らざるを得なくなる。立法主旨は、企業の恣意的行為を抑える目的であろう。ただ、理想論が先走ってしまうと、最低賃金の大幅引き引上げ時と同様、大きな反動をもたらす危険性が高い。韓国経済は要注意だ。