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これまで、中国企業の発行するドル建て債券(オフショア=中国本土以外の市場)は、暗黙裏に中国政府保証が期待されていた。中国政府は3年前、外貨準備高を増やす目的で企業に積極的なドル建て債券発行を奨励したほど。今そのブーメランに苦しんでいる。中国特有の無計画性によるものだ。

 

『大紀元』(9月25日付)は、「中国企業ドル建て債の不履行、昨年3倍の約1.3兆円」と題する記事を掲載した。

 

フランス投資銀行ナティクシス(Natixis)の統計によると、今年に入ってから、中国企業のドル建て債の不履行(デフォルト)規模が120億ドル(約1兆2645億円)に達し、昨年1年間の3倍となった。香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが9月23日報じた。

 

(1)「報道によると、新型コロナウイルスの世界的な大流行、米中対立、原油価格の低迷などで、中国企業の返済能力は低下し、デフォルトが急増した。各分野の中で、今後、不動産企業と半導体企業のデフォルトリスクが高くなるとの見通しだ。中国当局は8月末、不動産企業の債務急拡大を防ぐため、資金調達規制を実施し始めた。各企業は流動性が圧迫しているため、今後、ドル建て債務の返済がさらに難しくなるとみられる」

 

今後、不動産企業と半導体企業のデフォルトリスクが、高くなるとの見通しである。その背景は、中国経済構造の急変である。不動産企業はバブル崩壊。ハイテク企業は、米国の技術とソフトウエアの対ファーウェイへの輸出禁止措置が波及すること。グローバルサプライチェーンの見直しなどが大きく響く。

 

(2)「Natixisのアナリストは、中国の半導体およびハイテク企業のデフォルトリスクが高まっていると指摘した。中国の半導体メーカーなどの海外向け収益は高かったが、米中貿易戦以降、グローバルサプライチェーンが見直され、中国半導体企業の収益が減少した。さらに、中共ウイルスの世界的大流行で、グローバルサプライチェーンの再構築が一段と進んでいることや、米政府による中国半導体企業などの禁輸措置も、デフォルトリスクの高まりにつながっているという」

 

これまで、グローバル経済の成長発展と軌を一にしてきた中国経済は、新型コロナウイルスを契機に、明らかな「天変地異」が起こっている。今まで当然と思ってきた需要が、朝になったら消えていたというほどの激変だ。ドル建て債券を発行する企業は、グローバル経済への依存が大きかったはずである。その仕え棒がなくなってしまったのである。

 

(3)「Natixisの専門家は、中国国有企業のドル建てデフォルト率が初めて民間企業のデフォルト率を上回ったと指摘した。北京大学系列国有IT企業、北大方正集団はすでに5銘柄のドル建て債を不履行した。総額17億ドル(約1791億円)。中国天津市が保有する天津物産集団も5銘柄のドル建て債が不履行となった。総額は17億5000万ドル(約1844億円)。同社は今年6月、地裁に破産・債務再編手続きを申し立てたと発表した」

 

中国国有企業のドル建てデフォルト率が、初めて民間企業のデフォルト率を上回った。国有企業は、政府の熱い庇護を受けてきたので経営合理化面で遅れていた。その咎めが、一挙に現れたものであろう。習近平氏は、「国進民退」で国有企業を保護してきた。習氏の責任に帰せられる問題だ。ドル建て債券のデフォルトは、急に起こったものではない。これまでも次のように、メディアが取り上げてきた。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(6月24日付)は、中国企業のドル建て債 デフォルト増加へ」と題する記事を掲載した。

 

アジアで人気が高いドル建て「ジャンク債(低格付け債)」市場がショックに見舞われそうだ。3年前にブームのように売れたが、その主な発行体である中国の企業がその対応に追われている。ここ1年で中国企業がオフショア(中国本土以外)市場で発行した債券のデフォルト(債務不履行)が2倍以上に増えた。

 

(4)「直近では香港上場の油田サービスの海隆控股(ハイロン・ホールディングス)の社債1億6500万ドル相当が不履行になった。これまでも何度か危険な兆候があった。海隆は2020年に満期を迎える社債の借換期限を4回延期し、米格付け会社大手ムーディーズはデフォルトが起きる前に海隆の社債の格付けを投資不適格級に引き下げていた。同社の株価は今年になって72%下落している」

 

当時のオフショア債券市場では、ドル建て債券には別格の信頼を置いていたことが分る。今から3ヶ月前である。事態がいかに急変したかが分るであろう。

 

(5)「それでも、投資家がこうした兆候をあえて無視したことは驚くにあたらない。高利回りのオフショア債は、長らく外国人投資家に人気が高かった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)にもかかわらず、日本を除くアジアの今年のドル建て債発行総額は1400億ドル超と過去最高となっている。ドル建て債は発行体の国の政府が暗黙の保証をするものと受け取られている。中国企業が発行するドル建て債のデフォルトは特に珍しい

 

幻の政府保証期待が、この段階では大きかったことを示している。現在は、すべて崩れ去った。これが今後、危機感を増幅して新たな危機を招くであろう。