テイカカズラ
   

建国以来、非同盟が旗印であったインドが、中国脅威に対抗して海洋で日米豪と同じ歩調で進む意図を鮮明にしている。中国は、人口大国インドを敵に回すという最悪の選択をしてしまった。2027年には、インドが中国を上回って人口世界一になる。この潜在的成長力のあるインドが、中国の「喉」を覗うという地政学的課題に発展している。すべて、中国のインド脅迫が招いた結果である。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月25日付)は、「インドが海洋進出にかじ、対中共闘で国際協力強化」と題する記事を掲載した。

 

国境沿いでの中国との衝突を受けて、軍事力で見劣りするインド政府が従来とは異なる対応を模索し始めた。世界で影響力を強める中国に対抗するため、対中共闘を目指す他国との協力を深め、海上での軍事能力を重視する戦略へとシフトさせている。

 

(1)「インドは、中国にとって石油・ガスの調達先である中東、および主要輸出市場である欧州を結ぶインド洋の航路上にちょうど位置している。中国の海軍は急激に拡大しているものの、まだ遠洋で展開する能力は限られており、自国の裏庭では米国と対峙しなければならない状況にある。インド海軍の元トップ、アルン・プラカシュ氏は「北部の国境では、膠着状態に持ち込むのがせいぜいだ。だが、海では中国に対して優位に立てる」と話す。「海上での軍事力を誇示することで、ぜい弱な立場にあることを中国に思い知らせることができる。つまり、われわれは中国の輸出やエネルギー調達にいつでも手を出すことが可能で、中国経済を脅かすことができるとのメッセージだ」としている」

 

6月15日深夜、インド兵はヒマラヤ山中で中国軍の急襲にあい20名が死亡した。インドは、その恨みをインド洋で果たすという決意である。インドが、確実にインド洋で中国経済を脅かす存在であることを知らしめる、と強硬だ。

 


(2)「インドはここにきて、米国などの友好国と海軍の合同演習を強化している。一方で、新たな艦艇を建造するとともに、インド洋の海運交通に目を光らせるため、沿岸に監視を担当する前哨基地のネットワーク構築を進めている。インドは核保有国であるパキスタン、中国と長距離にわたって国境を接しており、軍事戦略も従来、国境警備に重点が置かれてきた。しかしながら、インド指導者らはここ10年で、インド洋を重視する姿勢へと傾いている

 

インドが、中国をけん制するのは国境線でなく、インド洋であることを認識した。これは、大きな発見である。海洋では、他国と共同して中国に対抗できるからだ。

 

(3)「背景には、国際貿易の拡大に加え、インドが自国の影響下にあるとみていた南アジアの小国に中国が進出し始めたことがある。インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相はインタビューで「インドは海洋大国で、インド洋のちょうど中心に位置している」と指摘する。「過去数年にも、この点に十分注意を向けていないとの意識はあった。貿易の拡大に伴い、輸入も増えており、単に国家安全保障の観点だけでなく、広範な地政学的観点からも、海洋の相対的な重要性が高まった」と指摘する」

 

中国は、すでに海洋戦略でインドを包囲するように「真珠の首飾り戦略」を展開している。パキスタン、スリランカ、バングラディッシュ、ミャンマーなどに軍事拠点・基地に準じた港湾施設を構築しようとするもの。インドが、これに対抗する戦略を立てるのは当然であろう。

 


(4)「国際貿易でインド洋が果たす役割を強調しすぎるということはない。世界の海上貿易の75%、世界の石油供給の半分はインド洋を通過する。東のマラッカ海峡や、西のホルムズおよびバブ・エル・マンデブ海峡などの難所では、軍事衝突が発生すれば海上輸送の大半が危険にさらされる。中国がインド洋へと着実に進出してくるのに伴い、米国や地域の友好国に対するインドの見方は根本的に変化した」

 

インド洋は、世界の海上貿易の75%が通過する重要な拠点である。ここで、中国に対抗する海軍力を同盟軍と共に保持できれば、インドの杞憂は消える。

 

(5)「冷戦時代に「非同盟運動」を主導してきたインドは、かつてすべての外国勢力に対し、周辺から軍事プレゼンスや基地を排除するよう求めてきた。現在では、インドの南端から南西1100マイル(約1770キロ)程度に位置するディエゴ・ガルシア島にある戦略基地を米国が維持することにも警戒感はない。インドは米国、フランス、オーストラリア、日本などとの軍事・外交協力を着実に強化している。これらの国々はいずれも、インドと同様、アジアで覇権を握ろうとする中国に対する懸念を共有している」

 

下線部にあるディエゴ・ガルシア島は英領。米軍が、租借しており重爆撃3機を常駐させている。南シナ海での軍事衝突に備えた基地だ。

 

(6)「前出のジャイシャンカル外相は「世界は変化した。率直に言って米国はかつて懸念要因であり、脅威でさえあった。現在ではパートナーだと認識されている」と語る。「インド洋で今起こっているのは、政治的に互いに容認できる関係にあり、世界全体の視点から懸念を共有する国々の利害がここに集まりつつあるということだ」。インドは2016年、米政府との間で、米印海軍による港湾施設の相互訪問の促進や共同演習の実施を定めた合意を締結。非同盟時代からの方針を転換した。インドはそれ以降、フランスや韓国、オーストラリアとも同様の合意を結び、今月には日本とも締結した」

 

インドにとって、米国はかつて脅威であった。現在は、パートナーであるという認識は重要である。それは、中国という新たな脅威が現れたからだ。世界情勢の急変を意味する。中国が、帝国主義国家として登場したことを示すのである。