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中国政府による徹底したロックダウン(都市封鎖)が、一般庶民の消費に大きな後遺症を残している。収入が極端に減少した中での「食いつなぎ」が、人々の生活パターンを大きく変えてしまった。必要な物を最低限購入するという節約生活だ。一方、庶民の勤め先である中小企業も景況不安を抱えている。中国経済の回復力は、大きく削がれている。

 

『ロイター』(9月26日付)は、「回復鈍い中国の消費、低所得層の『コロナ節約志向』顕著」と題する記事を掲載した。

 

中国では新型コロナウイルスの感染がほぼ抑制されてから何カ月も経過し、消費者はゆっくりと財布のひもを緩め始めている。だが、ロックダウンのつらい日々を過ごした多くの低所得世帯は、なお精神的なショックが残り、節約志向をやめようとしていない。

 

(1)「中国の今年第1・四半期は、1992年の四半期ベースによる統計開始以来、初のマイナス成長を記録した。その後の中国経済の回復ぶりは、他の多くの国よりもかなり先行しているとはいえ、まだ全面的に上向いているわけではない。特に消費の弱さは、習近平国家主席が推進する内需主導型の「双循環」モデル達成の足を引っ張る恐れもある」

 

習近平氏は、中国経済立直しの柱として内需主導型を理想型に選んだが、個人消費の中で低所得層の購買活動が低調である。内需主導型経済は、不発に終わる危険性が高まっている。

 

(2)「実際、製造業はロックダウンに伴う落ち込みから比較的素早く立ち直った半面、消費者信頼感の改善は緩やかなペースにとどまっている。小売売上高が前年比でプラスに戻ったのは8月になってから(0.5%増)で、1~8月の前年同期比は8.6%減とさえない。また、イタリアの高級ブランド・プラダのバッグなど一部ぜいたく品の支出は、「コロナ危機」を迅速に乗り切ったが、日々の生活に欠かせないモノやサービス消費の回復は鈍い。アナリストによると、これは低所得世帯が特に慎重な態度を維持していることが主な理由だ。1~8月の小売売上高の内訳を見ると、衣料品・靴は依然として15%減、ガソリンやその他石油製品は17.3%減で、食品・飲料は26%を超えるマイナスだった」

 

一部贅沢品の購入は増えたが、一時的現象であろう。永続性を期待できないからだ。低所得層では、下線部のように1~8月の小売り売上高の内訳は、生活必需品が極端に買い控える傾向が強まっている。

 

(3)「アリババ傘下の金融会社・アントの調査部門と中国の西南財経大学が共同で公表した四半期リポートでは、コロナ流行に対する低所得層の脆弱性が浮き彫りになった。年収10万元(1万4800ドル)未満の世帯のほとんどは、第1・四半期と第2・四半期に資産が減少した一方、年収30万元超の世帯は資産増加が続いたという。ガベカル・ドラゴノミクスのアナリスト、Wei He氏は「所得が比較的高い世帯は、恐らく貯蓄を増やした。なぜならロックダウン中は消費の縮小を強制されたからで、今は支出を拡大する態勢にある」と指摘。家計の正常化に「より長い道のり」をたどることになるのが低所得世帯だと説明した

 

年収10万元(約150万円)未満の世帯では、上半期の資産を取り崩している。一方、年収30万元超(約450万円以上)では、ロックダウン中の消費がままならなかったことを背景に資産が増えている。こうした両極を見ると、中国の個人消費が増勢傾向を辿るにはかなりの時間を必要としている。

 


(4)「京東商城(JDドット・コム)のデータからは、6月に中小の都市や低所得層の消費の伸びが、主要都市と高所得層に比べて弱かったことが分かった。同社のフィンテック部門JDディジッツのチーフエコノミストは、これは普段とは逆の動きだと指摘する。多くの低所得労働者を雇っている中小企業が、コロナの影響をより大きく受けたからではないかというのが同氏の見方だ。低所得層の苦境が中国の消費に及ぼす打撃は、相当大きくなる可能性がある。李克強首相は5月の演説で、月収が1000元(約1万5000円)程度しかない労働者は6億人前後存在すると明らかにしていた。6億人といえば全人口の4割を超える」

 

低所得層の消費低迷は、中小企業がコロナ禍の影響を大きく受けている結果だ。中小企業は民営であり、政府支援は受けにくい層である。月収が1000元(約1万5000円)程度しかない労働者は、全土に6億人前後も存在する。すべて、中小企業勤務者か自営業であろう。コロナ禍で、経済的にもっとも苦しむ国の一つは中国である。