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中国外交を眺めて気付くことは、外交に「進化」がないことである。秦の始皇帝が、中国を初めて統一した手練手管は「合従連衡」であった。敵側の「合従」(同盟)を崩して、「連衡」(一対一の関係)に持込み、征服するという古典的手法である。この裏には当然、謀略が伴う。

 

習近平外交も、始皇帝が編み出した「合従連衡」策を多用している。手始めに、韓国を米韓同盟から引き離すという策略を始めている。当の韓国では、それに十分に気付いていない向きもいるが、第三者から見れば「見え見え」である。この魔術に引っかかっているのは、今のところ韓国だけ。大半の国は、「危ない中国」に警戒観を強めて逃げ腰だ。

 

習氏は、始皇帝が漢族だけに通用する「合従連衡」であった事実を見落としている。この「恫喝戦術」が、他民族へ用いられると反発される点に気付かないのだ。私が、中国外交に「進化」がないというのは、まさにこの点を指している。

 

『日本経済新聞』(9月26日付)は、「『インド太平洋』中国が追い風に」と題する記事を掲載した。筆者は、米ランド研究所上級防衛アナリストのデレク・グロスマン氏である。

 

米国のトランプ政権のインド太平洋戦略は、中国に威圧されない「自由で開かれた」地域を維持するという目標の達成に向け、追い風を受けているようにみえる。皮肉なことに追い風となっているのは中国の動きだ。

 

(1)「中国は(同じ中華圏の)台湾のほか、東シナ海・南シナ海、インドとの国境紛争などを巡り領土的な野心を強めている。結果としてインド太平洋地域の内外で、中国の強引な姿勢は歓迎されないという、かつてないほどの合意が得られつつある。懸念を深める国々は、中国の脅威に対抗しようと、米国などとの安全保障関係を強化した。例えば戦略対話の枠組みを持つ日本と米国、オーストラリア、インドはどうだろうか。4カ国は、ルールに基づく国際秩序と行動規範を維持することの重要性を確認し、安保面での協力を強めているといえる」

 

中国の恫喝に萎縮する国は、韓国ぐらいであろう。他国は、「何を言っているんだ」と反発して、逆に中国を封じ込めてやるぞ、という気持ちになる。この遅れてやってきた「帝国主義国家」中国が、思い通りに領土拡張ができるはずもあるまい。21世紀の現在、20世紀の領土拡張の夢に酔うのは時代錯誤である。

 

(2)「オーストラリアは7月、中国を念頭に、新たな対艦ミサイルの導入などの防衛戦略を発表した。中国はインドとの国境について、閣僚級会談で双方が早期に撤退する方針を確認したが、(域内の別の問題での軟化姿勢も)後の祭りとなったかたちだ。日本は2020年版の防衛白書で「現状変更の試みを執拗に継続している」と中国を批判している」

 

骨のある先進国は、中国の思い通りにさせない戦術として同盟を選ぶ。中国がもっとも嫌う「合従」である。これを防ぐのは、始皇帝を以てしても不可能である。

 

(3)「南シナ海などを巡る中国の高圧的な行動を受け、東南アジア諸国連合(ASEAN)でも米国の評価が高まっている。ベトナムは、米国の安保上のパートナーとしての存在感を増しており、20年のASEAN議長国でもある。ベトナムは19年11月、(米国を想定した)他国と必要で適切な軍事協力を発展させる可能性を示唆した。フィリピンは6月、米国と距離を置いているようにみえたドゥテルテ大統領が通告した「訪問軍地位協定(VFA)」の破棄を、保留すると明らかにした。VFAは両国間の軍事同盟に実効性を持たせる重要な協定で、合同軍事演習などを可能にするものだ」

 

ベトナムの歴史は、中国の武力支配をはね返してきた点だ。根っからの「中国嫌い」である。朝鮮は中国の支配に屈し、儒教まで国教にするという「おべんちゃら」に徹した。この両国の歴史的比較が、極めて興味深いのである。ベトナムは、日本を助けてTPP(環太平洋経済連携協定)復活に最大支援をした国だ。理由は、中国経済圏から逃れることにあった。このベトナムが、公然と中国に反旗を翻すと、中国は窮地に立つ。その先には、インドも反中の旗幟を鮮明にしているのだ。

 


(4)「ASEAN以外の国・地域では、台湾があらゆる面で中国からの強まる一方の圧力に直面している。中国の動きが、米台関係の改善に大きく寄与したことになる。インド太平洋の域外でも、英国とフランスは、海軍の艦船を中国の近海に派遣した実績がある。欧米の国々は、中国による香港の自治侵害に懸念を示す」

 

台湾は、米国との連携を一層、強化している。中国が軍事的に脅迫すればするほど、米国が武器売却を増やす契約内容になっている。南シナ海の監視所として、地政学的に重要な役割を果たす。

 

(5)「もっとも、地域のすべての国が米国のインド太平洋戦略を支持しているわけではない。カンボジアやラオス、ミャンマーなどからの支持はあまり期待できないだろう。シンガポールのリー・シェンロン首相は7月、米中関係の安定がアジアの繁栄の礎になると、対立沈静化に期待を寄せた。また、米国を支持しているようにみえる多くの国々が、全面的に中国よりも米国を選ぶとは限らない。ASEANの大半の国は、米中どちらかと敵対するのを避けるため、逃げ道をつくっておく公算が大きい

 

カンボジア、ラオス、ミャンマーは経済的に自立化が難しく、中国の支援を頼りにしている。下線のように、ASEANは、中国との直接対決を回避している。内心は、中国の横暴を許さない気持ちが強い。

 

(6)「中国が、強引にもみえる影響力の拡大姿勢を変えなければ、関係国はいずれ、より積極的に米国を支持するようになるかもしれないということでもある。中国がインド太平洋地域で頼りにできるのは、北朝鮮やパキスタンのような国だけになってしまうだろう


中国は、「戦狼外交」と呼ばれるように、威張り散らして相手国を支配する卑劣な手段を使っている。これでは、中国が好かれる国になるはずもない。中華帝国は、近隣諸国に号令を発したいという「幼稚」な国である。