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米国が、中国の半導体受託生産(ファウンドリー)大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)向けの輸出に規制を課した。これを受け、中国はハイテク分野の新たな「長征」に備える必要があるとする社説を『環球時報』が掲載するほどの衝撃を受けている。

 

米政府筋によると、SMICへの制裁を提案したのは米国防総省とされる。同省は中国軍のテクノロジーの進歩に手を貸しているとして、SMICを危険視してきた。SMIC側は、中国人民解放軍とは無関係と主張しているが、ファーウェイ同様ににわかに信じがたい話である。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(9月26日付)は、「米のSMIC制裁、対中関係は新局面へ」と題する記事を掲載した。

 

米政府が半導体受託生産の中国最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に制裁を科したことが明らかになった。中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に米国の技術を使った半導体の供給を停止したのに続く措置で、中国の半導体産業にさらなる打撃を及ぼしそうだ。

 

(1)「英『フィナンシャル・タイムズ』が入手した米商務省の通知文によると、同省は9月25日、SMICと取引のある企業に対し、SMICへの輸出には「軍事目的」に転用される「容認できないリスク」があると警告した。米政府が輸出規制を発動すれば、SMICは半導体の製造に必要な米国のソフトウエアや装置の供給を受けられなくなる恐れがある。各社がこうした製品をSMICに輸出するには、事前の許可が必要になる」

 

今回の輸出規制は、1952年に制定された「チンコム」(対中国貿易調整委員会)の復活を思わせる措置である。すでに、ファーウェイにも実施されているので、いずれは、「現代版チンコム」が登場するのであろう。米国が、世界覇権に挑戦する中国を絶対に容認しないという強い姿勢を見せている。

 


(2)「米ユーラシア・グループでテクノロジー政策部門を統括するポール・トリオロ氏は、「米国がどれだけ厳格に制裁を執行するかにもよるが、最悪のシナリオはSMICへの供給は完全に断たれ、中国の半導体生産能力は大幅に低下する事態だ。そうなれば米中関係は新たな局面を迎えることになるだろう」と語った。SMICは中国政府が目指す半導体の国産化で重要な役割を担う「国策企業」だ。7月には上海市場に上場して76億ドルを調達し、中国では2010年の中国農業銀行以来の大型上場となった。同社は、すでに米国によるファーウェイへの制裁強化で既に打撃を受けている。売上高の5分の1を占める最大の顧客に製品を供給できなくなったからだ。SMICは上場の際の目論見書で、米国が制裁をさらに強化するリスクについて警告していた。

 

米国が、SMICに対してファーウェイ同様に、完全な輸出禁止処分にした場合、中国の半導体生産能力はさらに低下する。現在の中国における半導体自給率は、20%を割り込んでいる。これが、さらに低下することだ。米中関係は、「新たな段階に進む」と抽象的に言っているが、具体的にはどうなるのかだ。

 

考えられるのは、米中関係の悪化である。つまり、軍事的衝突である。南シナ海で小競り合いか、中国軍による台湾攻撃である。ただ、米軍はすでに重爆撃機3機をインド洋に配置しており、準備に怠りはない。5時間で紛争現場に到着するという機動力を確保しているのだ。実戦経験ゼロの中国軍が、百戦錬磨の米軍とどう戦うのか。普通の感覚であれば躊躇するはずだが、奢り昂ぶっている中国のこと。自らの限界を忘れて暴走する危険性は大きい。

 


(3)「米商務省は4月、敵とみなす国の軍事システム開発を支える技術の輸出を禁じる新たな規制を発表した。新規制では、既存の輸出管理規制における軍関連組織の規定を大幅に拡大した。中国が「軍民融合」戦略を通じ、民間企業と共同で兵器開発を進めるのを阻止する狙いがある。新規制ではさらに、許可が必要となる軍関連組織向けの輸出品の範囲を大幅に広げたほか、軍事利用の定義も厳格化し、最終製品の部品だけでなく開発や生産を支える製品なども対象に加えた。米商務省は9月26日、次のような声明を発表した。「商務省産業安全保障局(BIS)は米国の安全保障と外交政策に対するあらゆる脅威を絶えず監視・評価している。特定の案件にはコメントできないが、各省庁と協力し、必要に応じて適切な措置をとる

 

下線部は、事実上の「チンコム」復活を意図している。米国の技術支配力を利用して、「米国発の技術&ソフトウエア」を利用する世界中の工業製品は、中国への輸出規制対象にするという強い姿勢である。習近平氏は、完全に米国の実力を見誤った。2008年のリーマンショックで、米国は再起不能と誤解したことが、今日の中国における悲劇を招いている。中国の勝てる相手ではないのだ。

 

日本は、米国と2度戦い敗れた国である。一つは太平洋戦争。もう一つは、戦後の日米経済摩擦で半導体産業を奪われたのである。米国は、巧妙な相手なのだ。中国は負けるだろう。