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米中デカップリングは、確実に進んでいる。米国アップル・サプライヤーの台湾大手3社が、揃ってインドでの投資を増やすことになった。今後5年間で総額9億ドルという規模である。インド側は投資支援策で、この大規模投資に対して歓迎の意をあらわしている。インドが、確実に「第二の中国」として登場する。

 

『大紀元』(9月30日付)は、「アップル主要サプライヤーの台湾企業3社、インドでの生産拡大に多額の投資」と題する記事を掲載した。

 

米アップル主要サプライヤーの台湾企業3社は、インドでのアップル製品生産量拡大のため、インド政府の「PLIスキーム」製造推進計画に参加し、今後5年間でインドに約9億ドルの投資をする計画を立てていることが、この問題に詳しい関係者2人によって明らかになった。この3社はフォックスコン(富士康)、ペガトロン(和碩)、ウィストロン(緯創資通)となっている。

 

(1)「インド政府が今年導入した「PLIスキーム」とは、インドで製造されたスマートフォンなどの販売拡大を目指す企業に対し、売上高の増加分の4~6%の割合で補助金が今後5年間支払われる奨励金制度で、企業の輸出向け生産拠点をインドに移管する動きをさらに加速させるのを目的としている。情報筋によると、フォックスコン約400億ルピー(約573億3233万円)、ペガトロンとウィストロンはそれぞれ約130億ルピー(約186億3721万円)と約120億ルピー(約171億9970万円)を投資した。その大部分はiPhone生産規模拡張の計画に使われ、約1万人の雇用創出が予想されるという」

 

売上高増加分の4~6%の補助金が5年間支給されるという。アップルにとってはありがたい制度である。アップルのサプライヤー3社が、今後5年で9億ドル投資して約1万人の雇用を増やす計画である。

 


(2)「2017年から、アップル社はウィストロンのバンガロール(インド)の現地部門を通じてインドで低コストのiPhoneモデルを組み立てていた。 フォックスコンも2019年から、同じくインドでiPhoneの組み立てを開始し、ウィストロンはその後、事業を拡大している。世界的な調査会社カウンターポイント社のアソシエイトディレクターであるタラン・パサク氏は、「アップルが中国を超えるグローバル的な事業を展開するためには、インドが鍵を握っている」とし、「他の製造拠点に比べ、インドでは熟練労働者への支出コストが低く、そのうえ巨大な国内市場と輸出に大きな可能性がある」と指摘した。先週、アップル社はインドでオンラインのアップルストアをオープンし、また、2019年には金融センターのムンバイにアップルストアの第1号店をオープンした」

 

アップルは、インドでの生産が中国IT企業を超える鍵と見ている。インドの人件費が安いことと、巨大国内市場が絶対的な強味となるからだ。インド人口は、2027年以降に中国を上回り世界一になる。

 

MA Online(8月19日付)は、アップルの意向が強いインド生産」と題する記事を掲載した。

 

アップルは、これまでも前モデルの「iPhoneXR」やタブレット端末の「iPad」はインドで生産しているが、出荷量は少ない。「iPhone」の現行機種が加わることで、インドでの生産量は大幅に増加すると見られる。インド生産の増加はフォックスコンの判断だけでなく、アップルの強い意向が働いているという。なぜ、ここに来てインドでの生産に力を入れるのか? 理由は三つある。

 

(3)「第一は、関税の問題だ。インドで組み立てることにより、同国政府が輸入電子製品に課す20%の関税を回避できるのだ。インドは中国に次ぐ世界第2位のスマホ市場だが、アップルのシェアは2019年で1%にすぎない。これは国民の所得水準が低いためで、低価格スマホを販売する中国のシャオミ(インド国内シェア28%)や韓国のサムスン電子(同21%)に大きく離されている。「iPhone」は、ただでさえ単価が高いために苦戦しているのに、さらに20%もの高関税が課せられるため、一部の富裕層を除いては手が届かないのだ。そこでインド国内での組み立てを増やすことで、関税分の販売価格引き下げを狙う」

 

インドでの組立ては、20%の関税が不用になる。これは、コスト面で大きなメリットである。他社との競争条件が大幅に改善されるのだ。


(4)「第二は、「地政学的リスク」の回避だ。アップルはほとんどの「iPhone」を中国で生産している。しかし、米中の貿易摩擦が激しくなり、米国政府による中国生産の規制や、それに対する中国政府の報復措置が懸念されるようになった」

 

米中対立の長期化を考えれば、インドで生産することがどれだけ「安全」であるか分らない。

 

(5)「第三は、インドの高価格帯スマホ市場でのアップル人気の向上がある。スマホ全体では1%のシェアしかないアップルだが、高価格帯市場では2019年第2四半期(4月〜6月)に41.%、同第3四半期(7月〜9月)に51.%のシェアを獲得し、トップを独走している」

 

高価格帯のスマホでは、アップルが約半分のシェアである。品質の優秀性が理解されているだけに、現地生産になれば普及品でも十分、対抗できる見通しが立つのであろう。