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韓国公務員が漂流中、北朝鮮軍により殺害された事件は、事件後10時間も文大統領に報告されずにいた。これは、現在の韓国が法的に「休戦中」という事態にあることを忘れた、緊張感の欠如した振る舞いと非難されている。

 

韓国大統領府で、このような弛緩した行動が起こった背景は、文大統領が北朝鮮問題だけを特別視している結果であろう。北朝鮮との問題では一切、揉めごとを起こさず、北朝鮮の言うがままに対応する、という暗黙の了解ができているのでないか。そういう疑いが浮かんでくるほど、無気力な対応をしているのだ。

 

『中央日報』(10月15日付)は、「元秘書室長ら『最近の韓国大統領府はおかしい』」と題する記事を掲載した。

 

文在寅(ムン・ジェイン)政権の西海(黄海)公務員銃殺対応過程に対する議論は沈静化していない。青瓦台は「大統領の時間はあまり早くてもならず、あまり遅れてもならない、ただ一度の断固とした決定に向けた苦心の時間」と説明した。果たして正しい言葉だろうか。青瓦台のシステムをだれよりもよく知る複数の元青瓦台秘書室長に意見を聞いてみた。全員秘書室長として1年6カ月から2年以上勤務した人たちだ。回答は慎重で用心深かった。



(1)「質問:今回の北朝鮮銃殺事件の処理過程をどのように見るか。
(答え)青瓦台も韓国社会の一部門にすぎず、他の国ではない。常識のラインで回るのが基本だ。青瓦台にはNSCがどのように作動するのか詳細で正確に規定したマニュアルがある。もちろん大統領の個人的性格により多少異なることもあるが大きな原則は揺らがない。これまで出てきた報道を見ると今回の対応過程には首をかしげるほかない。簡単には納得が行かない」

 

大統領府も韓国社会の一部門である。緊急事態発生に応じて行動を起こして当然である。今回の公務員射殺事件では、大統領府の対応が遅かったのである。事件発生後10時間も、文大統領に報告されなかったのだ。

 

(2)「(答え)私が秘書室長だった時の青瓦台は常に休戦国という事実を意識していた。休戦状態ではどんなささいな挑発でもともすれば大惨事に広がりかねないという緊張感を持って動いた。ところが文在寅政権はちょっとおかしい。安全保障より平和と終戦を強調するのを見ると私の時とは違う考えで判断しているようだ。今回は秘書室長も深夜のNSC会議に参加したという。私がそうだったならすぐに国政状況室長を通じて大統領に直接報告しただろう。文大統領は青瓦台秘書室長を経験しているので報告の重要性をだれよりよく知っているはずだが…」

 

法的に言えば朝鮮戦争は現在、休戦中である。ちょっとした南北の誤解によって「大事」に至ることもある。その意味で、大統領府は、24時間緊張を強いられる場所である。その緊張感が、文政権に欠如している。文大統領は、「安全保障より平和と終戦を強調する」ユートピアである。有り体にいえば、「暢気」なのだ。正恩氏と差しで話したから、もう大丈夫というのであれば、専制主義の怖さを知らない「坊ちゃん」大統領である。

 

(3)「(答え)現政権が午前1時~2時30分にNSC緊急閣僚会議を開いたのを見ると今回の事案を重大懸案と判断したのは明らかだ。だが北朝鮮軍による銃殺と遺体焼却を大統領に報告したのは情報入手後10時間後となる23日午前8時30分だった。また、南北首脳が親書を交換するチャンネルが生きているのに韓国の国民が射殺される時まで北に救助要請をしなかった

 

真夜中にNSC(国家安全保障会議)を開いているほどだから、大統領府では「重大事」という認識はあった。だが、北朝鮮に救助を依頼しなかったのだ。韓国人公務員を見殺しにすることの重大性に気付かなかったとすれば、事なかれ主義で南北関係に波乱を引き起す事態を忌避したのであろう。ここまで、北朝鮮に気を配っていることを示している。

 

(4)「これに対し文在寅政権はなぜこのように今回の事態に消極的なのか、元秘書室長らは首をかしげた。その上で用心深く2種類を指摘した。ひとつは大統領の性向だ。文大統領がもしかすると朴槿恵前大統領のように社交的でなく他の人たちとの交流を避けているのではないかということだ文大統領は朴前大統領のように文字中心の書類報告が多いという

 

大統領府側近が、文大統領への報告を怠ったのはなぜか。一つに理由は、文氏が社交性に欠けていること。夜中に大統領に報告して「睡眠妨害」を恐れたのであろう。国民の運命がかかっていたにもかかわらず、文氏の「安眠」を優先した。

 


(5)「もう一つは、大統領が北朝鮮を過度に意識したために参謀が報告をためらったのかもしれないと指摘した。文大統領は2018年6月14日の米朝首脳会談直後と2019年3月4日のハノイ会談直後の2回だけNSC全体会議を開いた。大統領が主宰し首相と行政安全部長官まで参加するNSC全体会議は、それから1年半以上開かれていない。6月に北朝鮮が開城(ケソン)南北共同連絡事務所を爆破した時も、今回の公務員銃殺事件の時もNSC全体会議は開かなかった。代わりに安保室長が主宰するNSC常任委員会で代替された。南北首脳会談以降北朝鮮を刺激しないようにする意図がにじみ出る」

文大統領は、「北朝鮮フアン」である。文氏の両親が北朝鮮出身だ。文氏も北に生まれる運命であった。それだけに、北への独特の愛着心があるに違いない。文大統領は、情緒派であろう。メロドラマを見れば感激して泣き崩れるという。冷静な判断を下す政治家タイプでない。