a0960_008707_m
   

中国の習近平氏が、「一帯一路」プロジェクトを推進した理由は、国内の過剰生産能力解消が目的であった。吉林省などの内部資料が、これを証明している。当時は、過剰生産物としての処理対象は、セメント・鉄鋼・化学などの素材が挙げられていた。これら素材は、安値輸出されて、ダンピング問題を引き起していた。このほかに、自動車の過剰生産が顕著となり、これを「一帯一路」で販売しようという構想を生んだことが、今回の内部資料で明らかになった。

 

中国の過剰生産物の解消先が、「一帯一路」プロジェクトとしても、中国はこれら諸国に融資して購買力を供与しなければならなかった。今、中国の金融力が大幅に低下している。国際収支の経常黒字が、急速に低下する見通しの中で、どうやって融資を継続できるのか。新たな問題が起こっている。

 

『大紀元』(10月15日付)は、「一帯一路で過剰生産能力解消、吉林省などの内部資料」と題する記事を掲載した。

 

中国吉林省などの内部資料は、当局が巨大経済圏構想「一帯一路」を推進する目的の1つは国内産業の過剰生産能力を他国に輸出することであると裏付けた。米国などは、一帯一路政策によって、沿線国が中国の過剰生産能力の受け皿になるほか、債務の罠に陥り、資源が収奪され、安全保障が脅かされると批判してきた。大紀元は、「一帯一路」構想に関する吉林省政府の政策方針を示す内部文書「吉林省が一帯一路構想に溶け込む」を取得した。文書が作成された日付は不明だが、2015年以降のものとみられる。

 

(1)「同文書は、一帯一路構想について、中国が「世界の指導的な立場に立つことに大きな戦略的意義がある」と称賛し、中国の産業構造転換の主要任務の1つは「一帯一路構想を通じて過剰生産能力を解決することである」と示した。また、一帯一路戦略の下で「わが省は、新たな消費市場を開拓し、過剰生産能力を消化し、経済構造を調整して、産業転換を推し進めることで、製品のモデルチェンジを加速していく」とした。特に、同省の自動車メーカー、中国第一汽車集団(一汽集団)とその関連部品メーカーにとって、一帯一路構想は新しい市場を得る「貴重な機会」であるとした」

 

吉林省の自動車企業は、過剰生産能力の処理が大きな課題であった。中国全体の自動車産業が、大きな過剰生産能力の圧迫を受けていたからだ。中国政府が、一帯一路参加国を幅広く募った理由は、過剰生産能力の受け皿探しであった。EU(欧州連合)が、早い段階で「一帯一路」プロジェクトを見限ったのは、正しい選択である。

 

(2)「中国大手証券会社、国信証券が発表した2019年中国自動車産業研究報告によれば、2018年において、中国主要自動車メーカーの一汽集団、吉利汽車、奇瑞汽車、比亜迪汽車(BYD)などの生産能力利用率(設備稼働率)は70%に達していなかった。また、中国汽車工業協会の統計では、自動車販売台数の減少と過剰生産で、中国乗用車産業の生産能力利用率は、2017年の66.55%から2019年の53.74%まで低下し、過剰生産能力が深刻化した」。

 

2019年の中国自動車産業の操業度は、53.74%で大赤字を示唆する低レベルである。そこで、一帯一路へ猛烈な輸出ドライブを掛けたのだ。

 

(3)「吉林省政府は、この背景の下で、一帯一路構想に積極的に参与する姿勢を示した。同省政府が2016年に作成した内部文書、「設備製造および生産能力分野における国際協力プロジェクト・バンク」では、パキスタンにある一汽集団の合弁工場での「軽自動車、トラック、乗用車のローカライズプロジェクト」を紹介した。このプロジェクトは、一汽集団はすでにパキスタンで「軽自動車3000台、中型および大型トラック1000台の生産能力を形成した。乗用車5000台の生産能力を計画している」

 

パキスタンでの現地生産を目指しているが、中国の設備を移転しないかぎり、中国の過剰生産能力は減らないはず。この間の事情が不明である。

 


(4)「吉林省トップが一汽集団の過剰生産能力の輸出について、外国政府の高官に打診したことがある。大紀元が入手した吉林省の2016年「わが国の関華兵・駐ラオス大使との談話参考」によれば、同年32日、国家発展改革委員会と吉林省政府は、ラオスでの設備製造や生産能力に協力することで合意した。合意は、吉林省政府が中心にラオスでの設備製造などを行っていくとした。吉林省トップの巴音朝魯(バヤンチョル)党委員会書記は、2016年11月にラオスを、18年にはミャンマーをそれぞれ訪問した際、両国の政府に一汽集団など地元企業を売り込んだ」

 

ラオスやミャンマーでの自動車生産計画である。これも、新規の設備立上げであれば、中国国内の過剰設備解消にはならない。新規投資であれば、初期投資の負担が大きく、赤字はさらに増えるはずだ。

 

(5)「2016年の内部文書、「設備製造および生産能力分野における国際協力プロジェクト・バンク」は、同年まで、吉林省政府には生産能力を輸出できる国際協力プロジェクト216件があった。総額282億ドル(約2兆9685億円)。協力先の国は主に一帯一路の沿線国だという。一方、安徽省滁州市政府の2019年2月27日付「生産能力および設備製造分野に関する国際協力2018年活動報告と2019年活動要点の報告」も、同省政府と滁州市政府が、「余った生産能力」を解消するために一帯一路戦略に積極的に参加していると示した」

 

下線部分であれば、過剰設備の移転である。これが、正解であろう。