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韓国文政権を支えるメディアの『ハンギョレ新聞』が、米大統領選でバイデン民主党候補が当選すれば、南北交流が促進されるという「おとぎ話」を広めている。外交問題は、政権が変わっても大きな変化がない。これが先進国の実例である。米国が、トランプからバイデンへと政権が変われば、従来と180度も変わるのか疑問である。

 

文政権が最近、「終戦宣言」を頻りと提案している。これは、米国の政権交代を視野に入れたもので、バイデン民主党候補へ売り込んでいるとも言われる。『ハンギョレ新聞』が、文政権の意向を受けて「おとぎ話」を広めているのかも知れない。

 

『ハンギョレ新聞』(10月15日付)は、「『バイデン当選』後は『文在寅・金正恩の時間』」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチョン・ウィギル国際部主任記者である。

 

(1)「ドナルド・トランプ大統領は北朝鮮に対して「怒りと火炎」という表現で核兵器を使いうると威嚇し、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射で応酬した。この危機は、シンガポールとハノイで2回の朝米首脳会談を行う歴史的イベントにつながった。文在寅(ムン・ジェイン)―トランプー金正恩(キム・ジョンウン)の組合せは、皆が任期初期ということから朝鮮半島問題解決の希望をこれまでになく膨らませたが、結局、長年の障害物を越えられなかった。北朝鮮核問題の解決策をめぐり、北朝鮮が主張する「行動対行動」の段階的核放棄と、米国が主張する「核放棄後の補償」という問題に引っ掛かった

 

下線のように、北朝鮮の主張した「行動対行動」は、過去の米民主党政権も北朝鮮に騙された苦い経験を持つ。だから、トランプ政権は「核放棄が前提」という立場を固執した。北朝鮮には、相手を騙すという奥の手があるのだ。

 

(2)「それから2年が経ち、またバイデン氏の当選が見え隠れしている。金正恩‐トランプを仲裁した文在寅大統領はもう任期をまとめる時間に入る。バイデン氏はトランプ大統領が北朝鮮の金正恩国務委員長と首脳会談をしたことを「ショー」だとこき下ろし、そのようなやり方の北朝鮮へのアプローチはないと明らかにしてきた」

 

バイデン氏は、見返りがほぼないのに金正恩政権に対する影響力を手放すとして、トランプ大統領のやり方を批判。前提条件のない会談には応じない方針を示している。バイデン氏が、米朝首脳会談を「ショー」と批判したことは、自らは前提条件のない会談を拒否することを指している。決して、米朝の安易な妥結を求めているのではない。

 

(3)「ハノイでの朝米首脳会談決裂後に韓国を激しく非難した北朝鮮も、最近、金正恩委員長の肉声で南北協力に対する信号を相次いで送ってきた。北朝鮮も、バイデン当選後に南北関係を進展させることが実利だけでなく朝米関係の改善に役立つと考えたのだ。バイデン政権も南北の交流と協力によって北朝鮮の核問題が悪化しないことに反対する理由はない。南北関係の改善は、中国の浮上を抑制しつつ、米中関係を予測可能な安定状態にしようとするバイデン民主党政府に対して韓国の価値を上げる方法だ。米国と中国も、米中関係に散在している地雷の一つである北朝鮮という変数を安定化するという点で、異なる意見はないだろう」

 

このパラグラフでは、バイデン氏が米国の政権を握れば、米朝関係がスムースに行くと見ている。これを反映して南北関係の話合いが軌道に乗るという安易な予測である。だが、この超楽観論は別格である。次のような現実論が登場している。

 

『日本経済新聞』(10月15日付)は「対話かミサイルか『米大統領選』固唾のむ朝鮮半島」と題する記事を掲載した。

(4)「民主党のバイデン氏が勝った場合、トランプの対北朝鮮政策は失敗と判断され、緊張が再び高まるリスクがある。金正恩は米国を振り向かせられるのは大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけだと認識している。オバマ氏が再選した直後の2012年12月に人工衛星と称する長距離弾をフィリピン沖へ飛ばし、トランプが選ばれた4年前は「ICBMの発射実験準備は最終段階」と宣言した。10月10日のパレードで公開した新型ICBMは、大統領選後の米政権との交渉を有利に運ぶカードだと専門家は見る」

 

バイデン氏が当選すれば、米朝緊張関係が再び高まるという予測をしている。『ハンギョレ新聞』のコラムとは、全く異なる予測だ。

 

(5)「ソウルの外交関係者は、『バイデンが勝てば、文のレームダック化が一気に進む』とみる。米大統領選後には、塩漬け状態にある20年の在韓米軍駐留経費交渉など、ほかの外交課題が噴き出し始める」

 

文政権にとって、南北交流事業が大統領として唯一の業績として残るかどうかの瀬戸際である。『ハンギョレ新聞』は、これを後押ししているが、「贔屓の引き倒し」になりかねない。最大の問題点は、バイデン氏が米大統領に当選した場合、従来の民主党政権が歩んだ米朝交渉「失敗の道」を繰返すかどうかだ。その可能性はゼロだろう。とすれば、トランプ政権と大差ない政策が踏襲されるとみるほかない。文政権は、枕を高くして眠れない状況が続くであろう。