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鴻海は、iPhoneの受託生産で急拡大した企業である。将来の新たな柱として、各社からEV(電気自動車)の受託生産を始める方式を発表した。EVは、次世代カーとして注目されているが、内燃機関のガソリン・カーには多くの点で遅れを取っている。

 

世界で最もEVに力を入れている中国市場でも、補助金なしでは販売失速という状態である。これが、補助金なしで独り立ちできる時期はいつか。誰も、その時期を予測できないという厳しい状況が続いている。それでも企業は、必ずEV時代が来るという信念だけで頑張らざるを得ないのだ。

 

世界の自動車メーカーが、昨年1年で合計7万5000人近くを解雇した。あるメーカーのトップは、自動車事業では立ち止まることは許されない、拡大するか削減するかのどちらかだと語った。今回の人員削減がこれまでと違うのは、その理由が市場のシェア争いや石油ショック、経済危機ではなく、「もうすぐ電気自動車(EV)ブームが来る」という認識である点だ。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2019年12月9日付)がこう伝えた。

 


『日本経済新聞 電子版』(10月16日付)は、「鴻海、EV世界シェア10%狙う、CATLと電池開発も」と題する記事を掲載した。

 

(1)「台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は16日、今後2年以内に電気自動車(EV)の生産に乗り出し、EV事業を本格的に始めると発表した。基幹部品の電池も、同分野で世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)と共同開発し、2024年に商品化するという。同日、台北市内で開いた記者会見で、経営トップの劉揚偉董事長は「25~27年にはEV市場で世界シェア10%を獲得する。年間3000万台のEV市場なら、300万台を獲る」と述べた」

 

鴻海は、25~27年にEV市場で世界シェア10%を獲得目標である。現状からいえば楽観的過ぎるようだ。iPhone生産では、新商品ゆえにライバル企業が存在しなかった。EVでは、新参者ゆえにすべてがライバル企業になる。その中で世界シェア10%とは、高い目標設定であろう。

 

(2)「具体的には、主力事業のiPhoneの受託生産と同様に、複数メーカーの協力を得てEV事業を進める。自社ブランドのEVを投入するかは現時点で言及を避けた。車両開発は既存の車メーカーと協力して行う。台湾大手の裕隆汽車製造(ユーロン)と共同で設立する新会社「鴻華先進」で2年以内に新型EVを投入する。中国合弁で交渉中の欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とも共同開発を行う予定。劉氏は「FCAとの詳細な計画は、年末か年始には公表する」とした」

 

フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と提携してEV車を生産予定である。受託生産方式である以上、「桁外れの低生産コスト」が絶対要件である。ということは、高級車の生産でなく普及車(低価格車)の生産が主体だ。それは、低付加価値になるので、大量生産が前提である。だが、EVの普及は遅れている。これが、大きなネックになろう。

 


(3)「基幹部品である電池にも力を注ぐ。現在主流のリチウムイオン電池に代わる「次世代電池の本命」とされる全固体電池をCATLの」ほか、米ソリッドエナジーシステムズ(SES)と開発する。SESは有力電池ベンチャーとして知られ、米マサチューセッツ工科大学(MIT)発の企業だ。現在の電池重量の約半分、体積は6分の1にした電池を24年に投入する。劉氏は「(米グーグルの基本ソフトの)アンドロイドのように、どんな企業も参加ができるオープンな車両開発のプラットフォームを提供し、開発時間を短縮し、コストも減らしEVを作る」と意気込みを語った」

 

確かに新しい試みである。鴻海方式によるEV生産が軌道に乗る状況になれば、世界中がEV時代へ転換した証であろう。既存自動車メーカーは、どう対抗するのか。あるいは、どう利用する時代になるのか。EVが、スマホ同様の受託生産体制に移行すれば、世界の電力供給に赤信号が出るはずだ。そうなると、究極の無公害燃料電池車(FCV)が本命として登場する。EVは、その繋ぎ役となろう。

 

(4)「鴻海の純利益は19年まで3年連続で減り続けており、収益体質の改善に、EVなどの新事業の育成が課題となっている」

 

EVの開発費用は莫大である。トヨタでは、EV開発で系列下のダイハツ・スズキ・日野・いすゞの研究員を一堂に集めて共同研究をスタートさせている。それだけ、開発資金を食うと言うことだ。鴻海本体の利益が減っている中で、EVを予定通り開発できるのか。この面での課題も抱えている。