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中国政府は、環境問題から電気自動車(EV)の普及に力を入れている。これに伴い、EV関連の国産部品の品質が向上しており、上海進出のテスラは100%中国国産部品で賄えるという噂が広まってきたという。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月18日付)は、「テスラ100%中国製『現実味』 EV部品の供給網広がる」と題する記事を掲載した。

 

中国・北京で10月上旬に閉幕した世界最大級の自動車展示会「北京国際自動車ショー」で、「米テスラの小型EV(電気自動車)『モデル3』は電池に続いてモーターも中国企業製になるらしい」という噂が駆け巡っていた。


(1)「テスラにモーターを供給し得る中国企業候補はいくつかある。例えば蘇州匯川聯合動力系統。証券会社の分析によると、威馬汽車、理想汽車など中国の新興EVメーカー向けで実績を積んでいる。テスラを手始めに外資大手にも顧客網を広げる勢いがある。すでにテスラはEVの基幹部品となる電池で、中国最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)製を採用している。テスラに電池を供給してきたパナソニックや韓国LG化学にとってCATLは強力なライバルだ」

 

EV(電気自動車)の部品点数は、内燃機関(ガソリン車)よりはるかに少ないという利点を生かして、中国自動車部品メーカーはEVで成長してきたのであろう。この裏には、中国政府の多額の補助金があることを忘れてはならない。トヨタは、EVの基本特許を無料で公開しており、こういう面からの刺激効果もあるに違いない。

 

(2)「電池だけではない。中国の調査会社によると、EV用熱制御部品メーカーの浙江三花智能控制の顧客リストにはテスラや独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズが名を連ねる。EV向け電子部品を生産するアモイ宏発電声もテスラやVW、独ダイムラーと取引する。欧米自動車大手を顧客に持つ中国部品メーカーは増えている」

 

欧米自動車メーカーが技術支援しているはずだ。中国で部品を調達するほかない環境では、より良い部品を供給してもらうほうが利益になるからだ。

 

(3)「中国企業の強みは安さだけというのは間違った認識だ。世界最大市場でのメーカー間の競争が技術的な進化を後押しする。テスラが電池にCATL製を選んだのは、低コストに加え、「コバルトを使わない新しい電池の開発に向けた技術力の高さ」(関係者)とされる。日系自動車大手幹部は「CATLの電池技術はある領域で世界をリードしている」と指摘し、独自動車大手幹部も「EV部品の調達ではもはや中国メーカーが欠かせない」と明かす」

 

問題は、EVの良質の部品を供給できても、中国自動車メーカーが外資系自動車メーカーに対して、品質的に対抗できるEVが生産できるかである。部品は部品で、EV全体の乗り心地などを左右するのは、ノウハウが左右するからだ。

 

(4)「裾野が広がる中国の車部品産業。習近平(シー・ジンピン)指導部も従来は日米欧大手に対抗できる世界的な自動車メーカーを育成することを目標に掲げていたが、今では中国独自のサプライチェーン(供給網)の構築に重点を移している。米中対立や新型コロナウイルスによる国際物流の停滞が戦略転換を促した」

 

中国では、輸出よりも内需にシフトしたサプライチェーンづくりに励んでいるという。それは、過剰投資を抑えた「小ぶり投資」ということだ。部品の設備投資規模が、ぐっと小型化しているという意味だろう。

 


(5)「習指導部が7月に打ち出した新しい経済政策「双循環」とも深く絡む。内需と外需を好循環させて質の高い成長につなげる新政策。戦略立案に関わる清華大学の薛瀾教授は「まずは国内の大きな経済循環を構築する」と国内サプライチェーン強化の方針を明かす。中国の車の業界団体が開く部品に関する会議名が「サプライチェーン大会」に変わったのも、習指導部の姿勢を受けてのことだろう」

 

経済政策の「双循環」は、内需主体で外需がカバーするというものだ。これまでの経済政策と真逆になる。国内競争は激しくなるはずだ。品質向上に専念せざるを得ない環境になる。日本で言えば、2000年代に入ってからの「停滞下の競争激甚」時代と同じだ。

 

(6)「世界のEV市場の約半分の規模を誇る中国で進むサプライチェーンづくり。CATLだけでなく、三花や宏発はすでに日本企業より世界シェアが高いとの調査結果もある。「EVのほとんど全ての部品は中国企業の製品で問題ない」。新興EVメーカー、小鵬汽車の顧宏地総裁は指摘する。「中国のサプライヤーが全ての部品を提供する日も近い」。北京国際自動車ショーではこんな声も漏れた。現実味を帯びる「テスラ100%中国製」。お家芸としてきた車産業の基盤をEV時代にどうつなぐのか。日本企業に残された時間は多くない」

 

日本企業はグローバルである。中国企業は、米中対立の影響で海外での活動を抑制されるので、国内市場が中心となろう。このグローバルと国内市場の差は、中国企業に大きな足かせになる。中国がEVで有利とは一概に言えるはずがない。日本の技術の厚みを忘れた「中国礼賛」は危険だ。