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菅首相による最初の外国訪問先は、ベトナムとインドネシアになった。19日のベトナム訪問では菅首相が地元大学において講演し、日本企業のサプライチェーンをASEANへ移転させると明言した。これは、米国との共同歩調であり、将来のTPP(環太平洋経済連携協定)参加国を増やす効果をもたらすはずだ。

 

ベトナムは、すでにTPP加盟国である。中国からのサプライチェーン移転先として有望地域となっている。今回の「菅発言」で、さらに日本企業も移転効果を期待しているであろう。ベトナムは親日国であり、TPP発足では日本を側面から支援した。この裏には「嫌中国」ムードが強く働いている。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月19日付)は、「首相、東南アジアに供給網分散、経済・安保で対中連携」と題する記事を掲載した。

 

ベトナム訪問中の菅義偉首相は19日、現地の大学で演説し、日本企業のサプライチェーン(供給網)を東南アジア各国に分散させる方針を示した。新型コロナウイルス禍で、供給網が中国に集中する状況にはリスクがある。安全保障面で中国を警戒する各国と連携を深める狙いだ。首相は「日本は供給網の強靱(きょうじん)化を進め、危機に強い経済を構築するために東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力を深める」と強調した。

 

(1)「海洋の安全保障でも対中国で連携を呼びかけた。首相は「法の支配や開放性とは逆行する動きが南シナ海で起きている。日本は南シナ海の緊張を高めるいかなる行為にも強く反対する」と述べた。名指しを避けながら、対中国での連携が必要だと訴えた。過去10年のASEANの貿易総額を見ると、中国への依存度は急上昇している。2009年に1.5兆ドル規模だったASEANの貿易総額は19年に2.8兆ドルに増え、中国が占める割合は11.%から18%になった」

 

ASEANは、貿易面で中国との関係が深まっている。だが、中国は南シナ海で各国の島嶼を不法占領する、負の問題も引き起している。日本が、ASEANを味方に引入れる機会が極めて大きい理由でもある。

 

(2)「一方でASEAN諸国は安保面で中国の脅威にさらされている。南シナ海では中国が人工島を建設し、周辺国と領有権を争う。貿易や投資で関係が深いASEAN各国でも、中国に不満を抱く国は増えている。首相は就任後初めての訪問国にASEANを選んだ。中国への警戒を強めるベトナムと、ASEANの域内総生産(GDP)や人口の4割を占めるインドネシアだ」

 

(3)「国際外交では首脳の初訪問先がどこになるかは重要なメッセージだ。外務省幹部は「菅外交は『まず対中国でASEANと連携する』と伝わるはずだ」と狙いを説く。ベトナムは4月、南シナ海で漁船が中国公船に体当たりされて沈没する事件に巻き込まれた。インドネシアも5月、同海域での中国の主張を否定する書簡を国連本部に送った。首相が選んだのは中国と距離が出始めた2国ともいえる」

 

日本の安全保障では、ASEANが重要なポストを占めている。日本の防衛白書によれば、米国、豪州、印度に次いでASEANが4番目にランクされている。韓国は5番目だ。

 


(4)「ASEANにとって、いまの日本は中国ほどの貿易額はない。とはいえ日本企業は東南アジア各国に多数の生産や販売の拠点を持つ。米中対立下で日本はGDP世界1位の米国と緊密な関係がある点も各国には魅力だ。首相は今回、安保面での連携と共に、経済面でもASEANへの配慮を示した。供給網を分散させる方針のことだ。中国に集中する日本企業の供給網を分散させるなら、ASEANでの日本の製造拠点が増え、各国に経済的な恩恵がある。茂木敏充外相は安倍晋三前首相が辞任表明する前の8月、2回に分けてASEAN各国を訪ねた。南シナ海問題などで中立的なシンガポール、マレーシア、中国に融和的なミャンマー、カンボジア、ラオスに足を延ばしていた。首相は茂木氏を外相に再任しており、ASEAN重視の方針も継承する」

 

日本は1980年代の超円高時代を背景にして、ASEANへ生産機能を移転している。輸出から現地生産へのシフトで、各国の経済発展に寄与してきた。これが、「親日国」を増やす要因となった。かつ日米同盟を背景にして、日本を通して米国へも意思疎通できるというメリットが評価されている

 

(5)「中国もASEANとの関係維持に動く。王毅(ワン・イー)外相は今月11~15日にカンボジア、マレーシア、ラオス、タイを公式訪問し、シンガポールも経由した。マレーシアでは同国の主要輸出品のパーム油の大量購入を表明し、従来通り経済をテコに攻勢をかける姿勢がのぞく」

 

中国は、ASEANへの接近に神経を使っている。だが、南シナ海での不法占拠という傷が与える負のイメージによって、多くの国から警戒されている。当然である。