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韓国の民主主義がどの程度のものか。それを知らせるリトマス試験紙は、法務部長官(法相)が金融詐欺事件に関わったとされる与党議員の捜査を中止させるため、検察総長から捜査指揮権を奪ったことに現れている。つまり、韓国の民主主義は政権側が権力擁護に悪用するシステムであることだ。

 

秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長に尹総長およびその家族に関連して提起された4つの疑惑とライム資産運用(以下、ライム)の政界・官界に対するロビー疑惑事件に対する捜査指揮を中止するように指示したのである。

 

秋長官就任以来、2回目の捜査指揮権発動である。事実上、検察に尹総長に関連したすべての疑惑を捜査するように指示する強硬な対応を取ったと分析されている。また、尹総長を辞任に追い込む圧力を最大に強めたとも解釈されている。野党では「明白な捜査指揮権の乱用であり、職権乱用」という批判が出ている。

 

尹検察総長は、最高検察庁の報道官室を通じて「法務部の措置によって総長はこれ以上ライム(詐欺)事件の捜査を指揮できなくなった」と明らかにした。また「検察の責務を厳重に受け止め、大規模なファンド詐欺を犯した勢力とこれを庇護する勢力を徹底的に断罪することで被害者の涙をふいて国民の期待に応じることを願う」と捜査チームに呼びかけた。



この尹検察総長の捜査チームへの呼びかけは、「大規模なファンド詐欺を犯した勢力とこれを庇護する勢力を徹底的に断罪する」という言葉に表われているように、政権に向けられた批判であることは疑いない。文政権の「公平・公正・平等」とは、こういうものである。

 

『中央日報』(10月20付)は、「韓国法務部長官の捜査指揮権発動…検察総長・家族を直接狙った」と題する記事を掲載した。

 

(1)「秋長官は19日「ライム事件(詐欺事件)と検察総長の家族に関連した事件に対して公正かつ独立的な捜査を保障する必要がある」として捜査指揮権を発動した。秋長官は尹総長関連の事件とライム事件を捜査中であるソウル中央地検、ソウル南部地検に「大検察庁など上級者の捜査指揮を受けずに捜査結果だけを検察総長に報告せよ」と指示した。これを受け、法務部は「尹総長本人や家族、側近がかかわった事件は検事の倫理綱領や検察公務員の行動綱領により(自ら)回避すべき事件」としながら「捜査チームに徹底して独立的な捜査進行を一任するのが当然だ」と明らかにした」

 

検察総長家族の問題は、噂話の程度であり法務部長官が捜査指揮権を発動させる事件ではないという。狙いは詐欺事件の捜査を中止させて、与党議員を守るという目的と指摘されている。

 

(2)「法曹界では与党の相次いだ辞退の圧力にも尹総長が辞任しなかったところ、秋長官が強硬な態度を取ったという分析がある。ある検事は「『尹総長は本人の事件に関連して公正性を失っただけに、そのまま手を引いて退け』というのが今回の捜査指揮権発動の含意」と解釈した。検察内部では懸念の声が高まっている。地方のある検察幹部は「捜査中にある事件だけでなく、すでに提起されたデマ水準の疑惑まで軽重を問わず全部指揮権発動の対象に含んだため」と話した。他の検事は「大規模な金融詐欺犯の一方的な主張に基づいて総長の指揮権を無力にさせることが容認される奇異な現実が嘆かわしい」と話した」

 

秋法務部長官は、就任以来2回目の指揮権発動である。韓国法務部長官が、これまでに行った指揮権発動は3回だけ。秋法務部長官は、そのうち2度も発動するという「異常」さを見せつけている。文政権擁護のため、検察総長の捜査指揮権を奪ったのである。

 

(3)「野党もいっせいに秋長官の批判に出た。国民の力のチャン・ジェウォン議員は「詐欺師の手紙一枚で検察総長が『植物検察総長』に成り下がった希代の事件」とし「明白な法務部長官の捜査指揮権乱用であり職権乱用」と批判した。同党のキム・ドウプ議員も「長官が自分の政治をするといって検察をめちゃくちゃにしている」として「誰から見てもつじつまの合わない捜査指揮権の発動」と指摘した」

韓国の歴史では、文政権ほど恣意的な政治を行った例はないと糾弾されるであろう。持てる権力のすべてを国民のために使うのでなく、政権・与党を擁護すべく悪用したのである。