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文在寅大統領は、韓国を極めて危険な方向へ導いている。米中対立の長期化という国際問題が起こっていながら、その方向性を見通す努力がゼロである。米中が対立すると、韓国からの中国向け輸出が減って困る、という程度の認識なのだ。混迷した事態の中で、韓国の安全保障をどうすべきか、という根本的な問いかけはない。

 

豪州は、対中貿易比率がトップでも中国の経済報復に敢然と立ち向かっている。経済的問題は一時的だが、安全保障問題は永遠の問題である。豪州には、こういう認識があるから「インド太平洋構想」に積極的に参加している。片や韓国は、豪州とは真逆で「インド太平洋構想」に背を向けている。この違いは、国際情勢への認識の差によるものだろう。もっと突き詰めれば、文大統領の「従北・反日」という民族主義で、世界を見る目が曇っているからだ。

 


『朝鮮日報』(10月25日付)は、「反日・従北の民族主義が大韓民国を脅かす」と題する寄稿を掲載した。筆者は、ユン・ピョンジュン教授である。所属大学は不明。

 

光復(日本の植民地時代からの解放)75周年が過ぎた今も、反日民族主義は続いている。文在寅(ムン・ジェイン)政権の「官制民族主義」により韓日関係は崖っぷちに立たされた。市民社会は、日本帝国主義の残滓清算を掲げて中学、高校の校歌を変更したのに続き、幼稚園という名称を幼児学校に変えようという動きが盛んだ。政権支持率の絶対兵器である官制民族主義は、民心に根差した反日感情と爆発的な相乗作用を呼び起こしている。反日民族主義を批判すれば、土着の倭寇(注:日本人の海賊)というレッテルが貼られ、やがて生き埋めにされる。

 

(1)「民族とは想像された共同体」という主張がある。「民族が民族主義をつくったのではなく、民族主義が民族をつくった」というのだ。血統と言語を共有する5000年の白衣民族を誇る韓国人には驚くべきことのように聞こえる。長期にわたって持続した血統、言語、文化の上に建設された韓国民族主義と、近代の産物である西洋民族主義を平面的に比較するのは難しい。しかし、民族主義が民族を呼び起こすというのは明白な事実だ」

 

「民族が民族主義をつくったのではなく、民族主義が民族をつくった」という指摘は、現在の文政権にピッタリの言葉である。文氏は政権就任以来、「反日一筋」である。過去3年間も「反日」を叫んできたのだから、韓国の反日感情が絶頂に達して当然だろう。一方では、虚しさもあるはず。日本を批判して何のプラスがあるのか。安全保障面で、韓国を危機に追い込むだけである。

 

(2)「北朝鮮問題も感性的な民族主義が主流となっている。北朝鮮労働党創建75周年記念閲兵式の筋肉自慢でも、文在寅政権は金正恩(キム・ジョンウン)委員長のリップサービスによって一喜一憂する。しかし、大韓民国を焦土化する北朝鮮の核兵器と「愛する韓国の同胞たち」を慰める金正恩委員長の民族主義の修辞は、正反対の概念だ。「まさか北朝鮮が核で同族を攻撃することなどあろうものか」といった「同民族」に対する願望思考が、金正恩委員長による韓半島(朝鮮半島)統一戦略を見事なまでに覆い隠している」

 

文大統領は、日本を危険視し北朝鮮愛に燃えているが、これほど視野狭窄症はない。ソウルの目と鼻の先では核が日々、製造されている。その核が韓国で使われない保障はどこにもない。朝鮮戦争を始めたのは中国と北朝鮮である。その中朝に燃えるような愛をたぎらせる文在寅氏とは、いかなる頭脳構造であろうか。

 

(3)「反日感情の縦糸と従北情緒の横糸が韓国民族主義を歪曲している。北朝鮮が日本植民地時代の残滓をなくし、民族史的正統性でリードしたという偽りの歴史観が民族主義を汚染している。感傷的な民族主義は、厳しい国際政治に対する冷徹な認識を妨げる。21世紀の新冷戦時代を迎え、朝鮮半島は米中の帝国覇権競争の最前線となっている。民主主義と市場経済を共有した韓日間の相互協力は、「帝国中国」の無限なる膨張から韓国の主権を守る合従連衡の国家戦略資源だ。即物的な反日感情を超え、冷静な克日と用日が新たな韓国民族主義のキーワードにならなければならない」。

 

文氏の民族主義は、北朝鮮出身の両親が抱いた「望郷の念」と変わるまい。それは純粋だが単純であり、米中対立の長期化という国際情勢進展の中で、正確な判断を誤らせる「邪念」になり得るのだ。火薬庫となった朝鮮半島で、韓国の安全保障をどう守るのか。文氏の頭脳を超えた問題になってきた。

 


(4)「血統と習慣に縛られた種族的反日・従北民族感情は、歴史の退行にすぎない。種族的限界を振り切る市民的民族主義であってこそ、韓国民族主義が復活するのだ。反日・従北を超えて克日・克北に向かうとき、道が開かれる。光復75周年に実体もつかめない親日派という言葉を持ち出すのは、自由と正義の共和制の敵にすぎないのだ

 

反日・従北と言う言葉ほど、民族感情をくすぐる言葉はあるまい。それは、一種の麻薬である。将来展望のない刹那の言葉だ。一国の大統領が、そういう麻薬言葉を使って国民を「痴呆」にさせている。無責任な政治家と言うほかない。