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中国経済の凋落3要件

米国と張り合い傷深く

転換困難な投資主導型

豪州が成長率低下予測

 

中国の7~9月期実質GDP成長率は、前年比4.9%増となり、伸び率は4~6月期の3.2%増から加速した。ただ、事前予想の5.3%増にはならなかった。それでも、パンデミック下における主要国の経済成長率としては、唯一のプラス成長を実現した。

 

この結果、2008年のリーマンショック時と同様に、中国経済がパンデミック下で世界経済の牽引力になるという期待を持つ向きもいる。果たして、再び世界経済を引っ張る力はあるだろうか。

 

中国経済の凋落3要件

結論から先に言えば、世界経済を牽引する力はなくなっている。以下に、その理由を挙げる。

 

1)中国経済の潜在成長率を形成する生産年齢人口比は、2010年がピークであった。生産年齢人口(15~59歳)は2010年まで上昇したが、それ以降に下落へ転じている。中国の生産年齢人口は、国際標準の15~64歳を5歳も下回る。これは、健康上と定年年齢60歳がもたらして変則的なものである。それだけ、中国は「労働力の質」が劣っていることを意味する。

 

実は、中国の生産年齢人口が国際標準よりも5歳も少ない事実は、意外と知られていないのである。名だたる国際機関が、中国の潜在成長率を計算するのに、生産年齢の国際標準を用いて計算しているのだ。中国標準は国際標準より5歳も少ない事実から計算すると、生産年齢人口は、国際標準よりも約10%少なくなるはず。この点が、中国経済の将来予測を過大にさせている。

 


2)米中対立が、抜き差しならぬものになっている。世界経済における米中デカップリング(分断)が、現実問題として登場してきたのだ。2008年のリーマンショック時、世界経済はグローバル経済で発展した。今後は、その「逆バージョン」となる。原因は、中国の対外進出とパンデミック襲来への警戒である。中国が、世界のサプライチェーンであることのリスクは、先進国にとって安全保障面と経済面で強く認識されてきたのである。

 

中国にとっては、一夜にして世界の舞台が変わるほどの激変となろう。習近平国家主席は、あくまでも米国と対決する姿勢を取り続けている。その結果、「長征」(逃走)という毛沢東の選んだ苦難の道を、習近平氏も「新長征」として歩む決意を表明した。米国との対決を避けながら実力を蓄え、一気に米国を叩くという構想である。

 

この夢のような話に国民を引入れ「隠忍生活」で我慢するというものだ。共産主義と無縁の13億余の中国国民にとっては、これほど迷惑な話はないはず。道連れにされるからだ。毛沢東の「長征」は、日本の敗戦という僥倖に助けられた。習氏の「新長征」には、そういう僥倖はないであろう。米国が経済や政治の面で自然に没落することはあり得ない。制度的に言えば、独裁政治は一夜にして崩壊する。民主主義政治はその前に、政権交代という新陳代謝が「延命」をもたらすのだ。

 

3)中国の経済政策は、生産年齢人口比の低下、米中対立の長期化に伴う「新長征」で、内需主導経済に転換する。従来の輸出主導経済から内需主導経済へ転換すると発表している。14億人の人口を抱える中国の内需市場は、活性化すれば大いに発展の可能性があるように見える。だが、中国の内需市場は空洞化しているのだ。低所得層が、次のような比率を占めている。

 

月収 500元(約8000円)以下  国民の7.5%

   1000元(約1万6000円)以下 23.5%

   2000元(約3万2000円)以下 50.7%

(資料:『大紀元』10月22日付)

 

中国国民の5割が、月収約3万2000円以下で生活している。しかも、国民健康保険制度がない国である。病気にかかったときの治療費の高さは、目が飛び出るほど。医師は、患者を診察前に「金はあるか」と聞く国である。共産主義の「平等・博愛」の欠片もない国なのだ。それでも、軍備拡張には金に糸目をつけず、天井知らずの膨張を続けている。この中国が、「内需転換経済」で成功するには、生活安全ネットの国民健康保険制度を完備する。軍備拡張費を社会保障費に回す。この2点が、早急に実現できなければ、絵に描いた餅となろう。(つづく)