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中国は、合理的な経済計算が不可能であるようだ。アフリカ諸国へ天然資源を担保にして、過剰貸付をしてきたが、パンデミックの嵐でアフリカ諸国は返済不可能になっている。このままだとデフォルトの津波は、貸付先の中国国有企業に及ぶことが必至の情勢である。

 

中国は、「一帯一路」の夢に託して世界を自陣の中に引入れて、世界覇権への第一歩にするつもりだった。それが、皮肉にも中国発症の新型コロナウイルスによって破綻させられかねない事態を招いている。まさに、合理的な経済計算ができない悲劇が、中国を襲っている状況である。合理的な経済計算とは、マックスヴェーバーの名言である。市場ルールに基づく資本主義経済の決定過程を指す言葉だ。腰だめ的な統制経済の中国には、理解不可能なプロセスである。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(10月26日付)は、「アフリカ諸国の対中債務『最貧国の大きな負担に』」と題する記事を掲載した。

 

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で、2国間融資における中国の一貫しない融資計画、そして世界的な債務猶予への同調を渋る中国政府の姿勢があらわになっている。ザンビアがアフリカで10年ぶりのソブリンデフォルト(国の債務不履行)に向かいつつあり、他の債務国も返済の圧力が強まっている。

 

(1)「中国は過去20年間で、2国間での公的融資においてアフリカに対する最大の貸し手になった。アフリカ諸国政府と国有企業への貸付額の総額は1500億ドル(約16兆円)近くに上る。天然資源などのコモディティー(商品)を確保しつつ、経済圏構想「一帯一路」の発展につなげるのが狙いだ。世界銀行によると、世界の最貧国が主要20カ国・地域(G20)から受けた2国間融資に占める中国のシェアは、2015年の45%から19年には63%に上昇した。サハラ砂漠以南の多くのアフリカ諸国では、2国間融資に占める中国のシェアはもっと大きい

 

下線部は、中国が見境なく最貧国へ貸し出した実態が明らかにされている。G20が、最貧国へ融資した金額の中に占める中国シェアは、19年には63%にもなっている。サハラ砂漠以南の多くのアフリカ諸国では、中国シェアがさらに高くなるという。

 

意地悪な見方をすれば、最貧国の焦げ付き債権発生で最大の被害国になるのは中国である。G20メンバーが、中国と最貧国の債権債務関係だから、「ご自由に」と突き放してもさほど困ることにはならないのだ。もっとも、中国に次いでフランスと日本も、2位と3位の融資国になっているが、中国に比べれば「長期低利融資」である。中国は商業銀行ベースであるから、「中期高利融資」であろう。

 


(2)「中国の政府・金融機関はアフリカ大陸のほぼすべての国に融資しており、今世紀に入り、50億ドル以上借りた国が8カ国ある。だが、世界最大の経済国・地域で構成されるG20の「債務支払い猶予イニシアチブ(DSSI)」への中国の関与は、動きが遅い。「非常にいらだたしい」。世界銀行のマルパス総裁は今月、「中国の最大級の債権者の一部がまだ参加しておらず、最貧国にとって大きな負担となっている。(中国の)契約を見ると、多くの場合、金利が高く、透明性も欠いている」と語った」

 

中国は、G20のDSSIに参加しながら、中国最大級の債権者が債務支払い猶予プログラムに参加しないというチグハグさを見せている。中国の個別金融機関にとって、債務支払い猶予が全面的に適用される事態になれば、資金繰り上で大きな齟齬を来たす恐れがあるからだろう。つまり、中国側金融機関にそれを受入れる経済的なゆとりがないことを「告白」しているに等しいのだ。

 

DSSIは、G20諸国と各国政策銀行が世界最貧国73カ国に貸し付けた2国間融資について、期限を迎える返済を一時的に猶予し、4年かけて返済できるようにする制度だ。今月、DSSIの対象期間が21年6月まで延長され、返済期間が6年間に拡大された。中国企業は、この返済期間の6年延長で資金繰りが困難になるのだろう。中国金融機関は、過剰貸出でしかも返済期間がさらに先へ延ばされれば、資金繰り事情は一層の逼迫化に見舞われるはず。最貧国と中国双方で、困る度合いがそう変らないことを示唆している。

 

(3)「本紙『フィナンシャル・タイムズ』が確認したG20の内部資料によると、中国は今のところ、DSSIの最大の貢献国になっている。債務国44カ国に対してG20諸国が返済を猶予した約53億ドルの債務のうち、中国は今年期限を迎える債務について少なくとも19億ドル分の返済を猶予した。中国に続いて貢献が大きいのは、約8億1000万ドルのフランス、約5億4000万ドルの日本だ」

 

(4)「中国がどれだけ関与するかは不透明だ。世界銀行によると、中国は今年、G20の加盟国で最大の返済を受ける予定になっており、DSSI対象国から約134億ドル返済されるはずだった。一方、フランスと日本はそれぞれ、約11億ドルの返済を受けることになっていた

 

中国は今年、DSSI対象国から約134億ドル返済されるはずである。一方、フランスと日本はそれぞれ、約11億ドルの返済を受ける予定であった。中国にとって、この資金が返済繰り延べとなれば、中国全体のドル資金繰りが苦しくなることを意味する。現在の中国には、10億ドル、100億ドルという資金が極めて重要な意味を保つようになっている。外貨準備高維持で汲汲としているのだ。「中国マネー」といわれていた頃と事情は激変している。「米ドル」が貴重な存在なのだ。

 

それゆえ中国は、無闇やたらと融資返済を先送りされては、自分の首を締める結果になる。だが、融資返済の先送りを渋って、最貧国がデフォルトになれば、元も子もなくなる。中国国営企業が、深い傷を受けるのだ。借手の最貧国と貸手の中国が、ともに進退に窮するという皮肉な場面に遭遇している。この事実こそ、中国の置かれている苦境を余すところなく示している。