テイカカズラ
   

中国政府は、2035年までにガソリン車を廃止する意向を固めた。EV(電気自動車)とHV(ハイブリッド車)のみが認められる。EVとHVは、トヨタ自動車が中国メーカーに基本特許を無料公開しているので、日系車が有利な地歩を築ける見通しが強まっている。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月27日付)は、「中国、2035年全て環境車に、通常のガソリン車は全廃」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国政府は2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討する。50%は、電気自動車(EV)を柱とする新エネルギー車とし、残りの50%を占めるガソリン車はすべてハイブリッド車(HV)にする。トヨタ自動車などHVを得意とする日本メーカーに追い風となりそうだ。中国の自動車専門家組織「中国自動車エンジニア学会」が「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を27日発表した。工業情報化省の指導を受けて作成しており、中国の自動車政策はこのロードマップに基づいて実施される見通しだ」

 

世界一の大気汚染国が、2050年を目標にガソリン車を廃止して、EVやHVなどに転換する方針を決めた。EVの普及は、蓄電池の性能がすべてを決める。EVの航続距離が、ガソリン車に及ばなければ、HVがその橋渡し役になるはずだ。トヨタ自動車の構想通りの動きである。

 


(2)「『EV』を中心とする新エネ車の比率を高める。19年の新車販売に占める比率は5%だったが、ロードマップでは25年に20%前後、30年に40%前後、35年に50%超まで高める。新エネ車の95%以上はEVとする。残りのガソリン車などは、すべて省エネ車のHVに切り替える。HVの比率を25年にガソリン車などの50%、30年に75%、35年に100」%に高め、HVではない従来型のガソリン車などは製造・販売を停止する方針だ」

 

トヨタは、HVの基本特許を無料公開している。今回の中国政府の動きで、ガソリン車しか技術のない企業は、一斉にトヨタの下に馳せ参じることになろう。トヨタ・ブームが来る。

 

(3)「習近平国家主席は9月、60年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を表明した。排出量世界1位の中国が脱炭素社会に移行するにはEVなどの爆発的普及が不可欠とみて、通常のガソリン車を全廃する大胆な方針転換を図る。自動車の「脱ガソリン」は欧州が先行する。英国がガソリン車などの新規販売を35年に禁止すると表明し、フランスも40年までに同様の規制を設ける方針。9月には米カリフォルニア州が35年までにガソリン車の販売禁止の方針を表明した。日本でHVやEVなどが販売台数に占める割合は19年に39.%。政府は30年に50~70%にする目標だが、中国や欧州などに比べ見劣りする」

 

中国は、2060年までに「二酸化炭素ゼロ」社会を目指すと発表した。菅首相は、2050年までに「二酸化炭素ゼロ」宣言を出しており、HVやEVもそれに合せた戦略が練られるであろう。

 


(4)「新車販売台数で世界最大の中国市場が、世界の自動車大手の戦略に影響を与えるのは確実だ。トヨタは9月の北京国際自動車ショーで、中国でHVの累計販売台数が100万台を超えたと発表した。ホンダを含めHVに強い日系メーカーに有利との見方は多い。中国国有の重慶長安汽車と北京汽車集団は25年までのガソリン車などの製造・販売停止を発表している」

 

中国国有の自動車企業は、背水の陣で臨まなければ生き延びられない環境だ。すでに脱落し始めた国有自動車企業が出てきた。

 

中国遼寧省政府の管理下にある国営自動車メーカー、華晨汽車集団(以下は華晨汽車)は、10月23日に償還を迎えた社債をデフォルト(債務不履行)したことが明らかになった。中国メディア『財新網』などによると、同省瀋陽市に本拠地を置く華晨汽車は、2017年10月に発行した社債をデフォルトした。同社は元本の10億元(約156億円)に加えて、元利金5300万元(約8億円)の支払いが滞っている。以上は、『大紀元』(10月27日付)が報じた。

 


(5)「米中対立の先鋭化や国際物流の停滞にも備える。35年には部品などを海外に依存しない中国独自のサプライチェーンを構築する。販売だけでなく技術でも世界をリードする「自動車強国」への転換をめざす。燃料電池車(FCV)に力を入れる方針も盛り込んだ。25年に保有台数10万台、35年には100万台にする。当面はバスなどでの利用拡大をめざす」

 

米中対立の長期化に伴い、米中デカップリングが進行するので、中国製EVが輸出される機会は減るはずだ。中国最善の道は、米中対立から共存する政治体制への変革であろう。今時、「中華再興」などという夢を掲げても、世界が受入れないのだ。夢遊病者のごとき振る舞いに映るだけである。