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人口大国1位の中国と2位のインドは、国境線を巡る紛争が発生しており、反目し合う関係になっている。このインドが、海洋進出を積極化させる中国へ牽制が目立つようになってきた。その中でもインドが、ミャンマーへ潜水艦を引き渡したというニュースは、注目すべきである。インドが、中国けん制で隣国ミャンマーと軍事関係の強化に努めているからだ。インドは、ミャンマーだけでなく広く東南アジア諸国との連携を深めている。

 

インドが1990年代、「ルック・イースト政策」を掲げて東南アジア諸国との関係を重視し始めたのは、次のような背景がある。当時のインドがソ連という後ろ盾を失い、中国に対抗する新しいパートナーを模索していた。インドは、日本やアメリカへの接近をはかっただけでなく、経済成長し始めた東南アジアとの協力を模索し始めたのである。

 

東南アジア諸国の側でも、ベトナムだけでなく、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポール、ミャンマー、フィリピンまでが、インドとの協力関係を深めようとした。その結果、特に軍事面の協力関係が深まり始めたのである。こういう背景を理解すれば、インドがミャンマーに潜水艦を引き渡した事情が理解できるであろう。

 


『大紀元』(10月27日付)は、「
インド、潜水艦1隻をミャンマーに引き渡し、中国に対抗する海軍能力を強化」と題する記事を掲載した。

 

インドは10月、ミャンマーに両国の軍事協力に基づき潜水艦1隻を引き渡した。戦略アナリストは、インドは東南アジアと関係強化を図り、中国共産党の影響力の高まりに対抗していると見ている。インド外務省のアヌラグ・スリバスタバ報道官は、潜水艦の引き渡しについて「海事協力はミャンマーとの多様な関係強化の一環」と述べた。

 

(1)「この潜水艦はロシアのキロ級潜水艦で、排水量3000トンのディーゼル攻撃潜水艦。1988年にインド海軍に投入された。引き渡し前にインド国営のヒンドゥスタン造船所が改造した。最大航速18ノットで、水深300メートルまで操作できる同艦艇は、ミャンマー初の潜水艦となる。この攻撃潜水艦は、もともとはインド海軍が使用していたシンドゥビル号(S58)だ。引き渡し後に、「ミヤ・デンカドゥー号」というミャンマーの歴史的英雄の名前に改名した。10月15日には、ミャンマー海軍艦隊の演習にも参加した」

 

インドが、自軍の中古潜水艦を改修してミャンマー潜水艦第1号として譲渡した。これは、インド・ミャンマーの友好関係を象徴している。

 


(2)「インドの主要メディア『ヒンドゥスタン・タイムズ』によると、匿名希望の消息筋は、「キロ級潜水艦は旧型設計だが、ミャンマーに引き渡される前に大幅な改造と改良が施された」という。さらに同氏は、「インドがこの時期に潜水艦を引き渡すことに意義がある。中国海軍の活動が増えたことで、地域海域を監視するためにこの艦艇が必要になった」と付け加えた。別の情報筋は「ミャンマーには『中国の機械、すぐ壊れる』という言葉がよく使われる。ミャンマー軍部指導部は中国が提供する装備の品質に不満を抱いており、すでに輸入の多角化を始めており、インドに目を向けている」と語った」

 

ミャンマーは、中国の粗悪品に不満を抱いており、ロシア製の中古潜水艦が、中国製よりも高い評価なのだろう。

 

(3)「10月4~5日にかけて、インドのナラバネ陸軍参謀総長と外務省アンゲラ・シーガル副大臣がミャンマーを訪問し、アウンサンスーチー国務顧問とミンアウン軍総司令官(などと会談した。両国間の防衛および安全保障協力を強化するため、他国の安全保障上の利益に対する自国領域の使用を認めないことに合意した。これは、インドが中国によるミャンマーのインフラ投資の増加を懸念し、とった対抗策であるとみられている。中国政府は、ミャンマーと国境を接する雲南省で、道路と鉄道で結ぶ深水港の建設に取り組んでいる。インドはこの接近を強く警戒している」

 

ミャンマーは、中国の安全保障上の利益のために自国領土の使用を認めないことでインドと合意した。これは、中国にとっては痛手である。

 


(4)「ミャンマーは、東南アジアでインドに国境を接する唯一の国家。接する国境は約1600キロメートルに渡り、ベンガル湾では725キロメートルの海上国境を共有している。インド当局は、中国海軍に対抗するために海上の防衛・防衛パートナー強化にますます注力している。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、インドのジンダールにある全世界大学国防・安全研究のプラカシ・ジャハ教授は、「ミャンマーは軍事的にも経済的にも中国への依存を減らしたい」と述べた」

 

ミャンマーは、東南アジアでインドと国境を接する唯一の国である。中国依存を減らすには、インドとの関係強化が不可欠である。こうして、静かに中国離れが進んでいる。

 

(5)「インドは以前、海軍偵察機や通信機器など装備品を提供した。しかし、「彼らは最近、もっと進んだ装備を探している」とし、潜水艦の供給は、インドがミャンマーとの協力関係をより深めていく意思の現れだとジャハ氏は語った。近年、バングラデシュやベトナムなども、海軍の近代化に向けて水面下でインドと作戦能力の強化を続けているという」

 

「安全保障のジレンマ」という言葉がある。一国が軍備を増やせば、相手国も同様に軍備増強に走る、というもの。中国の海洋進出は、バングラデシュやベトナムなどが、海軍の近代化に向けて水面下でインドと協力関係を強めることになった。中国は、自分で自分の首を締めているのである。