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米GM本社は、韓国GMの賃上げストに撤退の意向を示唆するなど緊迫した場面を迎えている。GMは、2018年にも撤退の意向を仄めかしたことがある。今回は、単なる労組牽制の範囲を超えて、真剣さを覗わせている。

 

韓国自動車業界は9月の生産が、新型コロナの影響から抜け出す気配を見せていた。しかし10月は、韓国GMの部分ストライキの影響で再び、生産減少に転じている。韓国GMの動きが、自動車業界の注目点になってきた。

 

『中央日報』(11月19日付)は、「GM本社、韓国から撤退も、賃金交渉めぐり労働組合に警告」と題する記事を掲載した。


韓国GMの使用者側と賃金・団体協約交渉で対立する韓国GM労働組合に対し、GM本社が「韓国から撤退することもある」と警告した。

(1)「18日のロイター通信によると、スティーブ・キーファー米GM上級副社長兼海外事業部門代表は、「労働組合のストライキで約1万7000台の自動車生産に支障が生じていて、今週末までに2万台に達する」とし「新型コロナウイルスの感染拡大で年初に失われた6万台まで考慮すると、韓国GMは今年利益を出すことができない」と述べた」

 

部分ストによる、影響が強く出ている。このままでは、韓国GMの決算は赤字となる。

 

(2)「キーファー副社長は、「韓国GM労働組合は生産台数を人質にして経営的に打撃を与えているため、今後の韓国GMへの投資を難しくさせる」とし、「こうした労働組合の態度は韓国を競争力がない国にしている」と強く批判した。続いて「数週以内にこの問題が解決しなければ長期的な影響があるだろう」と話した」

 

韓国は、「労働貴族」と言われるほど優雅なストライキをやって、会社側に徹底的な打撃を与え、高賃金を獲得する常連である。社会の批判も強く、労組に対して同情的な雰囲気はゼロである。要するに、経営側に無理難題な要求を突付けて賃上げを実現する。日本の労組のような節度がない「暴走スタイル」である。

 

(3)「これに先立ち、全国金属労働組合韓国GM支部は16日の中央争議対策委員会で、17日から20日まで部分ストをすると明らかにした。韓国GMの前半組と後半組の勤労者はこの期間に4時間ずつストをし、先月23日に始めた残業・特別勤務拒否も続ける方針だ。労働組合の幹部は部分ストの最終日の20日から徹夜の座り込みに入る計画だ。韓国GM労働組合が先月30日から始めた部分ストは今回の中央争議対策委員会の決定で計12日に延長された」

韓国GMの労使は、7月から今年の賃金団体交渉を続けているが、合意点を見いだせないままだ。10月末から3日間、4時間ずつの部分ストを始め、11月も18日まで9日間(営業日基準)の部分ストをした。部分ストをした期間は今月14営業日基準で半分以上の9日間にのぼる。

 

部分ストは、労働側の損失が少なく会社側への打撃が大きい。自動車のように流れ作業では、部分ストが、全行程を止めてしまうからだ。それだけに、会社側の損失は大きく「撤退」を言い出す事情が分かる。

 

ストライキは労働者の権利であるが、その過剰行使によって雇用を失うことは最も愚かなことだ。妥協地点を間違えると、自分の首を締める結果になる。部品製造の関連企業も、ハラハラして見ているところだ。

 

『中央日報』(11月19日付)は、「韓国GM協力会社社長100人『ストのため電気代も払えず、助けて』」と題する記事を掲載した。

 

韓国GMの協力会社からなる「協信会」が、韓国GMの労使対立で協力会社は危機を迎えていると訴え、労使に賃金団体交渉の早期妥結を求めた。

 


(4)「協信会は19日、韓国GM富平(プピョン)工場西門で「韓国GMの妥結しない賃金団体交渉に対する協力会社の生存のための訴え」を発表し、「賃金団体交渉がすぐに妥結しなければ、流動性が脆弱な協力会社は不渡りを出す事態を迎えるかもしれない」と憂慮を表した。特に先月末から続いている韓国GM労働組合の残業・特別勤務拒否、4時間の部分ストで、協力会社が被害を受けていると主張した。この日の集会には協力会社の代表およそ100人が参加した」

 

部品製造の協力会社は、弱い立場である。多分、「ジャスト・イン・タイム」制で納品しているであろうから、組み立て部門の部分ストは協力会社の生産過程に大きな影響を与えているであろう。労組は、そういう協力会社の痛みも感じなければならない。

(5)「協信会は、「賃金団体交渉の遅延で生産に深刻な支障が生じている。さらなる支障が生じてはいけない」とし「協力会社の不渡りなど取り返しがつかないことが発生すれば、韓国GMの部品サプライチェーンに深刻な影響が及ぶ」と強調した。また「生産への支障で協力会社は自動車企業より厳しい苦痛に直面している」と訴えた。協信会は「一部の会社は電気代のほか、職員の給与も適時に支払えない状況」とし「第2次、第3次協力会社は事業をあきらめるところが増えている」と伝えた」

 

韓国進歩派は、相手の身になって考えることがない階層である。「自分達だけよければそれでいい」という極めて身勝手な振る舞いを行う。これは社会を「敵・味方」という区分けをしているからだ。味方には極めて甘く、敵方には極めて冷酷に振る舞うのである。協力会社についても「敵方」という分類であろう。資本家は敵という単純な区分けであるからだ。