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習近平中国国家主席が、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加を検討すると発言した。日米中など21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にオンラインで出席して述べたもの。習氏がTPPへの参加検討を表明するのは初めてだ。

 

習氏がこういう発言をした背景は、米中デカップリング(分離)が現実に進んでいる中で、西側諸国からの孤立を最も恐れている結果であろう。「中国も忘れないでね」という程度のことで、積極的に参加する意思は疑わしい。リップサービスと見るべきだろう。

 

TPPを積極的に推進した米国オバマ前大統領の狙いは、中国を米経済圏から排除することにあった。当時オバマ氏は、南シナ海で他国領有の島嶼を占領する中国を苦々しく見てきた。この中国を反省させるには、武力でなく経済的に窮地に追込むことであり、これで間接的に安全保障を確立するという「オバマ的防衛」であった。だから、オバマ氏は自らの大統領任期が切れる直前まで、米議会へTPP承認の根回しをしていたほど、執着を見せたのだ。

 


オバマ氏が、中国を排除する上でもっとも拘ったTPP加入条件は、国有企業の比率をギリギリまで下げることであった。将来、中国が加盟したいと申し出てきても断るための条件として、国有企業比率を下げておくことであった。中国が、高い国有企業比率では参加不可能になるからである。

 

習氏は、逆に国有企業を中国産業の中核に据える方針へ切換えていた。従来は、「民進国退」で民営企業を発展させる方針であった。それが、習氏によって国有企業を前面に据える「国進民退」方針へ大転換したのである。

 

この「国進民退」の狙いは、習氏が中国革命に貢献した人々の二世(習氏も二世)の支持を取り付けるには、国有企業を核に据え二世の権益を保護する必要があった。習氏は、こうして自らの権力基盤を確立したのだ。国有企業保護は、結果的に国有企業の経営効率を大きく損ねることになった。民営企業の生産性と比較して、国有企業は大きく出遅れた。

 


習氏は、国有企業の非効率をカバーすべく、同業大手との合併を進め、巨大な国有企業の規模をさらに大きくした。こうして、TPP基準から見た国有企業のウエイトは、あまりにも大きくなりすぎており、TPP加盟が不可能なほどの事態を招いている。

 

中国が、TPP加盟を真剣に模索する条件は、習氏が国家主席を引退した後だろう。それは、計画経済の誤りを精算せざるをえない状況に追込まれた時だ。「国進民退」路線を放棄して、「民進国退」に戻る時だ。中国が、先ごろ署名した「RCEP」(東アジア地域包括的経済連携)の工業製品自由化率は91.5%である。TPPのそれは99%である。この工業製品の自由化率が示すように、RCEPとTPPは自由化レベルがかけ離れているのである。

 

中国における醤油と日本酒の関税撤廃は21年後である。これを見れば一目瞭然、中国の産業保護は度を超している。RCEPですら、これほどの超スローモーである。中国が、TPPへの参加も検討するとは、単なる口先の話と見るべきだろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(11月20日付)は、「習氏、TPP参加『積極的に検討』、APEC首脳会議」と題する記事を掲載した。

 

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は20日、環太平洋経済連携協定(TPP11)への参加を「積極的に考える」と表明した。日米中など21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にオンラインで出席して述べた。習氏がTPP11への参加検討を表明するのは初めて。

 

(1)「習氏は中国や日韓、ASEAN(東南アジア諸国連合)など15カ国が署名した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)にも触れ「歓迎する」と成果を誇示し、アジア太平洋地域への影響力拡大に意欲を示した。米国はTPP11、RCEPに参加していない。議長を務めるマレーシアのムヒディン首相は首脳会議の冒頭で「世界の国内総生産(GDP)の約6割を占める我々はコロナ後の経済回復を先導する役割を期待されている」と結束を訴えた。会議にはトランプ米大統領も出席した」

 

菅義偉首相は首脳会議で自由貿易を推進する必要性を訴えた。TPPを拡大して、アジア太平洋の自由貿易圏の実現を目指す考えを示した。TPPで、新規加盟交渉が始まると見られるのは、英国、台湾である。台湾については現在、福島など5県産食品の禁輸を継続している。台湾は、TPP加盟時に撤廃する意向だ。