a0960_006625_m
   

RCEP(東アジア地域包括的経済連携)のまとめ役は、中国という報道が見られる。確かに、RCEP参加国では最大のGDP規模であるが、主役はASEAN(東南アジア諸国連合)であった。中国の自由化率案は当初、80%台と低かったという。それだけ、国内産業保護を強く意識していたことを意味する。中国は、世界覇権へ挑戦すると豪語しているが、国内産業の競争力は弱いのだ。それが、輸出大国に踊り出られたのは、外資系企業の輸出に依存した結果である。

 

『ハンギョレ新聞』(11月17日付)は、「『世界最大のFTA』RCEPは中国が交渉を主導? 事実と異なる」と題する記事を掲載した。

 

韓国・中国・日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)など15カ国が参加する世界最大の自由貿易協定(FTA)である東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が11月15日、交渉開始から8年を経て最終妥結した中、「RCEPは中国が主導する協定」だという一部の通商専門家とメディアの報道は事実と異なるという指摘が出ている。一部では中国主導という点を前面に出し、「米中間のメガFTA対決」として今後の巨大貿易協定の構図を分析するが、韓国大統領府と政府は「RCEP交渉を今回の妥結まで主導してきたのは、中国ではなく韓国とASEAN」だと説明する。

 


(1)「韓国政府の通商当局者も「今回のRCEP加盟国間の輸入関税の妥結内容は、ASEAN10カ国に共通して適用される関税譲許案が基本で、これを基本に韓国・中国・日本・オーストラリアなどの非ASEAN各国の間の関税譲許のスケジュールと幅について交渉が行われる過程を経た」とし、「ASEAN各国は『非ASEAN各国の間の開放の譲許水準が、ASEANに適用される開放水準よりさらに優待してはならない』と要求し貫徹させた」と述べた。ASEANそして韓国が主導したという意味だ」

 

RCEPを推進したのはASEANであること。同時に韓国が側面から支援したとしている。ここでは、中国が旗振り役でなかったことを示している。

 

(2)「RCEP交渉の局面で中国が主導しなかったという事実と状況は、様々な側面に現れた。政府当局者は、「関税譲許(縮小・撤廃)の場合、中国は、今回の交渉過程でASEAN各国が要求したものより低い水準の市場開放と自由化を望んだ」とし、「韓中日3国の間の個別国家間の関税譲許水準も、協定の出発時からさほど開放の水準を高めず、80%台でひとまず妥結しようという方向に中国も立場を決めた」と述べた。中国はRCEP協定の影響力を左右する市場開放の水準をむしろ低めたという意味だ」

 

このパラグラフでは、意外な事実が明らかにされている。中国の自由化率案が80%台で低かったという点だ。中国は、日本の醤油と日本酒の関税撤廃が21年後である。この一事を見ても、いかに中国の生産性が低いかを示している。人口14億人の巨大マーケットを持つ中国が、醤油と日本酒の競争力で人口1億2000万人の日本より劣る。いかに、国民生活に直結する分野の投資がされなかったかを示している。中国の跛行的な産業構造を証明しているようだ。

 


(3)「インドは市場開放により、中国産の安価な工業製品やオーストラリア産の農産物が自国の市場になだれ込むと憂慮し、妥結を長くためらってきた。このように「中国主導のRCEP」に対する懸念が強いインドを協定に再び引き入れるため、中国は交渉過程で後ろに退いている状態だった。他のRCEP加盟国も、中国が先頭に立たず後方で消極的に取り組んでいることを望んでいたことが知られている

 

インドは、土壇場でRCEPに署名せず参加を見送った。それは、中国主導のRCEPという印象を嫌ったこともある。下線のように、他のRCEP加盟国もインドの参加を求める立場から、中国の役割が小さいことを望んでいた。

 

(4)「RCEP地域ブロックは、貿易・人口、総生産の規模で世界最大であることは正しいが、実際のRCEPの市場開放化の水準は、他の巨大地域貿易協定に比べ低い方だ。CPTPPは、サービス・労働・知識財産権・競争・投資政策を含む極めて包括的な範囲を扱うのに対し、RCEPは、主に協定参加国の漸進的な工業製品の関税縮小と原産地規定の統合に焦点を合わせている。開放の水準だけをみると、実際の内容はさほど野心に満ちた協定ではないこともありうるという意味だ

 

RCEPとTTP(CPTTP:現行のTPP)を比較すれば、規模はRCEPに軍配が上がるものの質の面ではTTPにはるかに及ばない。下線のように開放水準から見ると、野心的なFTA(自由貿易協定)ではない。

 


(5)「中国はRCEPを通じ、自国の商品をさらに多く輸出しようとする目的よりは、21世紀の陸上・海上シルクロード経済ベルトと呼ばれる「一帯一路」をASEANに拡張しようとした。RCEPは関税の撤廃・縮小を目標とする貿易協定だが、中国は、関税よりも一帯一路に目的を置いていたので、RCEPの交渉・妥結の過程で主導者の役割を果たさず、また、果たせられなかったということだ」

 

中国がRCEPに期待している役割は、関税率の引下げ・撤廃よりも、「一帯一路」で影響力を増そうとしていると指摘している。この中国の狙いは成功するだろうか。ASEANは、すでに中国の勢力拡大へ神経を使っている。今後の中国の経済力低下を考えれば、ASEANが経済援助額の減る中国の言いなりになるとは思えない。