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中国の習近平氏が将来、TPP(環太平洋経済連携協定)へ加入希望を持っていると発言した。先のRCEP(東アジア地域包括的経済連携)署名式での「ハプニング」である。そう、まさにハプニングである。RCEPですら、中国の目標達成はかなりの努力を必要としているからだ。中国が、現状でTPPを口にするとは理解不能である。

 

中国は当初、RCEPの自由化率でも80%台と緩い目標を出していたほど、国内産業の未熟さに足を掬われている結果だ。その中国が、自由化率99%というハイレベルのTPPへの加入論を口にするのは、中学生が大学入試を受けるような、無謀な話である。

 

それにも関わらず、習氏がTPP加入問題を口にしたのはなぜか。それは、ベトナムがすでにTPPの「原加盟国」であること。もう一つ、来年には台湾がTPPへの加入交渉を開始するからだ。台湾のTPP加盟は、中国にとってメンツ丸潰れである。台湾については、WHO(世界保健機関)のオブザーバー参加すら拒否する中国だ。台湾がTPPへ加入すれば、中国の立場は「形無し」となろう。本心は、阻止したいのだ。

 


中国の王毅外相が、日韓を相次いで訪問することになった。その目的について、中国メディアが取り上げている。

 

『レコードチャイナ』(11月24日付)は、「中国外相の日韓訪問が注目される『三つの時機』ー中国評論」と題する記事を掲載した。

 

中国の王毅(ワン・イー)外相が今月24日から27日まで日本と韓国を訪問する。これに関連し、中国の評論家の徐立凡(シュー・リーファン)氏は、中国紙『新京報』への寄稿文で、「王氏の日韓訪問が注目される理由は三つの時機にある」と論じている。

 

(1)「それによると、一つ目の時機は、9日前に中国、日本、韓国を含む東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定が署名されたばかりであることだ。徐氏は、「RCEP交渉は約8年を経てようやく合意した。8年計16回の交渉を続けてきた中日韓自由貿易協定(FTA)交渉も『最後の1キロ』を走り終えることができるかもしれない」と期待を寄せている」

 

中国は、日中韓FTAの交渉促進を目指しているという。だが、RCEPの達成すら努力を要する中国が、日中韓FTAとなれば、自由化率をさらに上げる必要があろう。中国には耐えられないだろう。真の姿は、米中デカップリング進行の中で、中国が日韓に「すがりつく」という構図が浮かび上がる。

 


(2)「二つ目の時機は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に関連するものだ。徐氏は、先ごろ開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、中国がCPTPPへの参加を「積極的に考える」と表明したことを受け、韓国大統領府も「RCEPCPTPPは相互補完的関係にある」としてCPTPPへの参加に「開放的な態度」であることを示唆したと指摘し、「CPTPP交渉の難易度は、中日韓FTAよりも高いだろう。しかし、3カ国の意見交換を妨げるものではない」とした」

 

中国は、TPP加入問題を話題にしながら、台湾の加入を阻止したいのが本音であろう。韓国もTPPは未加入である。日本の工業製品(特に自動車)が、ドッと輸入されることに神経を払っているためである。このように、中韓のTPPに対する思いは別々で、日本への思惑は複雑である。中国は、台湾と同時にTPPに加入できるようなるまで、台湾の加入を抑えて欲しいという談判であろう。

 


北京大学の賈慶国教授は、『日本経済新聞 電子版』(11月22日付)でTPPについて次のように語っている。

 

「日本にとって、(中国のTPP加入問題は)試練になるだろう。断れば中国と敵対することになるからだ。かといって、簡単に受け入れるわけにもいかない。米国が絶対に同意しないからだ」

 

この中に、中国の傲慢さが滲み出ている。中国がTTPの加入条件を満たせなければ、もともと加入は不可能である。そういう中国の条件不備を棚に上げて、日本を脅迫する言動は絶対に許すべきでない。この裏には、台湾をTPPへ加盟させて中国を阻止すれば、「ただではおかない」という暴力的な臭いである。中国は、どこまでも幼稚なのだ。

 

(3)「三つ目の時機は、中日韓3カ国首脳会談に関連するものだ。徐氏は、「これまでに計8回開催され、今年は議長国を務める韓国が12月の開催を望んでいる。今年は日本の首相が交代したため、中国は日本側と意思疎通する必要がある。王外相は今回の訪日で菅義偉首相との初会談が実現する」とした。その上で、「王外相の日韓訪問の主題は、3カ国による首脳会談の開催および新たな経済圏の構築のための基礎固めだ。3カ国はいずれもGDPが世界トップ10に入る。自由貿易で一歩前進するという姿だけでも、外部から注目されるには十分だ」としている」

 

中国は、日本に対して日中韓3ヶ国首脳会談を開催できるように要請するのであろう。日中韓首脳会談が開催できれば、米国へ対抗できるという「見栄」である。日韓は、米国の同盟国である。中国が、その日韓と首脳会談すれば米国へ何らかの対抗シグナルになると考えているのだろうか。現実には、なんの外交的な意味もない。米国から足元を見透かされるだけだろう。