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豪州のモリソン首相は、パンデミックの中でわざわざ日本を訪問。菅内閣で最初の外国要人訪問となった。モリソン氏は、コロナ防疫のために帰国後14日間、隔離生活を送り国会登院も見合わすという「犠牲」を払っての訪日であった。

 

訪日目的は、日豪の防衛協力のための「円滑化協定」を協議することにあった。豪州と中国の外交関係は日増しに悪化している。そこで、インド太平洋構想で「クアッド」(日米豪印)を組む日本と、対中で防衛協力を固めるという目的である。中国は、これに敏感に反応している。日豪を結束させているのが中国である。自らの行動を棚に上げての振る舞いである。

 

『レコードチャイナ』(11月29日付)は、「日豪『円滑化協定』に警戒心あらわ、『地域の安全と安定にも資さない』と中国メディア」と題する記事を掲載した。

 

日本とオーストラリアが大筋合意した防衛協力のための「円滑化協定」に中国メディアが警戒感をあらわにしている。「中国を警戒し共にけん制する狙いがあるからだ」と批判。「中日関係と中豪関係の不確実性を高め、地域の安全と安定にも資さないことも間違いない」と反発した。

 


(1)「菅義偉首相と来日した豪州のモリソン首相が11月17日に大枠で合意した「円滑化協定」は、両国部隊の共同訓練や災害協力を容易にするもので、両国の「準同盟国」関係を深化させた形だ。交渉は長く停滞していたが、覇権主義的な行動を強める中国への危機感が交渉進展を促した。両国は今回、司法制度などの詳細部分で折り合わず、署名には至らなかったものの、首脳合意をテコに今後、外務、法務当局が細部を詰める方針だ」

 

日豪軍の「円滑化協定」は、互いに相手国の領海に入っても特別の手続きをしないで済むと言う、一種の「準同盟国」である。日豪軍が親戚付き合いを始めるという宣言である。

 

(2)「協定について、『中国網』は防衛省のシンクタンク・防衛研究所が13日に発表した「中国安全保障レポート2021」に言及。「日本としては日米同盟の抑止力と対処能力の向上のために引き続き米国との関係を強化することに加えて、独自に防衛態勢の充実を図ることも重要であろう」とした上、「実際に日本は引き続き日米同盟関係の強化を外交の礎とし、日米安全協力を強化するほか、他国との協力の強化により地域における防御、特に南西方面の防御を補おうとしてきた」と伝えた」

 

日本にとって、南西地域の防衛が手薄になりがちである。そこで豪軍の協力を仰ごうという狙いもある。これが、同盟国、準同盟国のメリットである。

 


(3)「豪州に関しては、「中国を自国の国益への『挑戦および脅威』としている。中国への懸念により、豪州は初めて国家安全を口実とし、華為技術(ファーウェイ)による5Gネットワーク構築を禁じた国になった。豪州は今年、新型コロナウイルスの発生源と感染拡大をめぐり国際調査を行うよう求め、中国に汚名を着せることもいとわなかった」と強い調子で糾弾。「豪政府は近年、トランプ政権のアジア太平洋における一連の戦略的行動を積極的に支持し協力するほか、アジア太平洋のいわゆる豪州と同じ価値観を持つ国との安全関係の強化を求めている」と述べた」

 

中国と豪州の関係が悪化し始めた要因は、新型コロナウイルス発生源の究明問題である。モリソン首相が、徹底調査を要求したことで中国が先手を打って経済報復をしたもの。以来、両国関係は悪化の一途だ。WHO(世界保健機関)でも最近、「新型コロナウイルスの発生源は、中国以外に考えられない」と発言するほど既知の事実になっている。中国はその汚名を被ることに我慢ならないと逃げ回っているのだ。無駄なことである。

 

(4)「中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報はさらに一歩踏み込んで「日豪は悪い例を示したと言うべきだ」と非難。「両国は各自の最大の貿易パートナーである中国を『安全の脅威』と位置付け、かつ米国の要求に応じた措置を講じ、アジア太平洋の米国を除く初の2国間準軍事同盟の大枠をつくった」と続けた。その上で「米国と共にインドを抱き込み中国を『包囲』するのを回避するよう忠告しよう」と強調。「中国の国益が侵害され、中国の安全が脅かされれば、中国がこれを座視することは決してない。これがシンプルな道理であり、彼らは必ず代価を支払うことになる」などと警告した」

 

日豪にとって、中国は輸出先ナンバーワンの国である。それでも、安全保障が第一、経済問題は第二の認識である。中国の軍事行動に警戒観を強めているのだ。こうなると、海洋進出第一を目指す中国との摩擦は不可避である。原因をつくったのは中国である。中国が、身のほど知らずに世界覇権を狙うという野望を捨てない限り、周辺国は結束して中国へ対抗姿勢を取るはずだ。