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文在寅大統領が、脱原発推進を宣言してから今年の6月で3年経った。4月の総選挙で与党が圧勝し「エネルギー転換政策も強い推進力を得た」(韓国メディア)という見方まで出ていた。だが、月城原発1号機の停止では、文政権が仕掛けた経済性計算で、黒字経営を赤字経営にすり替えるという国家的犯罪があったのだ。韓国監査院(会計検査院)の手で、その不正が暴かれたが、韓国検察が告発を受けて捜査に着手している。すでに、3人の逮捕請求が出ている。

 

今回、秋法務部長官が躍起になってユン検察庁長官を「解任」に持込みたい画策しているのは、前記の月城原発1号機の停止に関わる経営数字改竄容疑の究明にある。文政権の看板政策である「原発廃止」が、噓の数字で塗り固められていたとは仰天である。

 


韓国水力原子力は18年6月の取締役会で、延長運転中の月城原発1号機を政府の政策に従って突然、早期に閉鎖することを決定した。この「突然、早期閉鎖決定」が事件性を覗わせている。この舞台に関与していた一人の教授の執念が、経営データねつ造発覚の糸口になったという。この間の事情を伝えるコラムを取り上げた。

 

『中央日報』(11月12日付)は、「『ニ等国民』は沈黙しない」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・ジョンジェ中央日報コラムニストである。

 

国家が犯罪を、それも組織的に犯す現場を目撃した市民はどうすべきか。ここに、趙成鎮(チョ・ソンジ)教授〔慶星(キョンソン)大学エネルギー学科)の「模範解答」を紹介する。

趙教授は月城(ウォルソン)1号機の早期閉鎖に対する監査院の監査と検察の捜査を引き出した隠れた功労者だ。趙教授が目の前で行われている「おかしな非常識かつ正常でない決定」に目をつぶっていたら、監査院の監査も検察の捜査もなかったかもしれない。

 

趙教授は2016年9月から2018年7月までの約2年間、韓国水力原子力(以下、韓水原)の社外理事を務めた。趙教授は原発賛成論者だ。新古里(シンゴリ)5、6号機の工事中断と月城1号機の早期閉鎖を決定したときに、唯一反対票を投じた。趙教授の反対票がメディアの注目を呼び、そのため月城1号機の経済性評価がねつ造されたという事実が明らかになり、完全犯罪に終わるところだった国家権力の組織犯罪の揚げ足取りになった。



(1)「趙教授は先月、監査院の監査結果が発表された時、「内心がっかりした」と述べた。関係者の処罰の程度が弱すぎたためだ。しかし、200ページの監査報告書を読んで涙が出るほど感激したという。報告書は、どのように、誰が、なぜ月城1号機を閉鎖に至らせたのか1つ1つ記録されていた。偽造と切り貼りで綴られた月城1号機閉鎖の黒幕の中には不審な匂いが充満していた」

 

(2)「報告書の完成は趙教授の功が大きかった。趙教授は絶えず韓水原と政府に働きかけた。問いかけ、確認した。ねつ造の証拠を探し、聞いて回った。一般からの情報提供を受けた。各種セミナーに出席し、国会に出て証言もした。与党議員には「国政監査が所信を明かす場なのか」と皮肉を言われたりもした。そうして収集した資料と録取記録を監査院に提出した。それが手がかりになった。決して覆すことができなかった真実はそうして明らかになった」

 

詳細を究めた監査院の報告書には、趙教授が丹念に聴き取り調査した資料提供がいかされていた。これが、決め手になって政府のデータ偽造が明らかになったのである。



(3)「趙教授は監査報告書を見て、初めて知ることができた。なぜ2年前のあの日(2018年6月15日)、月城1号機の閉鎖を決定した韓水原理事会が開かれたあの日、議長だった自身が通知もなく解任され、他の人に電撃交代したのか、なぜ議事録が偽造されたのか、なぜ会計法人の経済性評価が1カ月で1000億ウォン(約945億円)の黒字から数百億ウォンの赤字に転じたのか、産業部と青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)が何をしたのか。過去2年間余り、趙教授が幾度となく問いかけたが、答えを聞くことができなかった疑問だ」

下線部は、文政権が最も隠したかった点である。過去2年間、趙教授が政府に問い合わせても沈黙していた理由が、データ改ざんであったからだ。

 

(4)「国家の組織犯罪に対する断罪はこれからが始まりだ。監査院は政治的外圧や前・現職官僚の組織的抵抗に押され、折衝と妥協を選んだ。代わりに、検察が断罪の剣を受け継いだ。大統領選挙の公約だからという理由で、大統領の言葉だからという理由で、法と規定を無視して国家の百年の計を崩した犯罪がうやむやになってはならない。そんな国は国ではない。しかし、政府・与党は、一斉に検察の捜査に反発している。秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官は、「非政治家の総長が政府を揺るがそうと不公正かつ過剰な捜査をしている」と述べた。李洛淵(イ・ナギョン)共に民主党代表は「これは政治捜査であり、検察権の乱用」とし「検察はすぐに無謀な暴走を止めろ」と述べた」

 

政府と与党が手柄としてきた「脱原発政策」は、データ改ざんによる国家犯罪であったのだ。韓国政府は脱原発政策のせいで生じた損失を電気料金の一部を積み立てた基金で補填することを決めている。脱原発の損失補填に活用することにした電力産業基盤基金は、全国民が毎月支払う電気料金から3.7%を差し引いて積み立てた資金だ。脱原発政策に伴う費用を国民に負担させる形となる。まさに、「一将功成りて万骨枯る」である。国家犯罪である。