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文在寅氏の性格について、本欄はこれまで種々の分析を重ねてきたが、生涯にわたり「学校秀才」の域を出られないようである。「1+1=2」という方程式からはみ出た回答はできないのだ。

 

文氏は徴用工賠償問題でも、「被害者中心主義」を貫いている。これは、人権派弁護士の手法である。昨年12月、文・前国会議長が提案者になって「代位弁済」方式の解決案を議会へ提案した。この際、徴用工遺族など1万人が署名して、早期解決を申入れていた。だから、「被害者」は「代位弁済」に納得していたのである。

 

この案を潰したのは、「反日」市民団体である。徴用工問題が解決すれば、反日活動ができなくなるという思惑であった。慰安婦支援団体は、反日を理由に募金を集め流用してきた。現在、係争中の事件である。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月4日付)は、「元徴用工問題、韓国側が投じた『凍結』 『弁済』案の波紋」と題する記事を掲載した。

 

日本企業の資産の売却による現金化を2021年夏の東京五輪までは凍結(封印)する――。第2次世界大戦中に日本統治下にあった朝鮮半島出身の元徴用工訴訟をめぐり、韓国の要人が日本に投げかけた提案が波紋を広げている。

 

(1)「『凍結』案を示したのは、韓日議員連盟の金振杓(キム・ジンピョ)会長だ。「韓日首脳が決断できれば最善だが、今できないなら東京五輪が終わるまで凍結(封印)しようと提案した」。11月中旬に来日し、菅義偉首相や日本の与党幹部らと面会した後に韓国紙・中央日報のインタビューで明かした。韓国国内では、具体的な凍結の手段として、裁判所が被告企業による不服申し立てや資産価値の確定などの手続きを遅らせる方法や、原告側は日韓政府が妥結に至るまでの延期に合意するなどの案が挙がっている」

 

「凍結」案は、ただの時間稼ぎである。その間に、状況が好転するという淡い期待があればよいが、現実に日韓の感情的な拘りが解ける見通しはない。徴用工問題の解決主体は、韓国である。韓国に妙案を出せる自信があればともかく、ないから他力本願の「凍結」案であろう。

 


(2)「凍結案とは別に、韓国の与野党内では、同国政府による「賠償金代位弁済」案を主張する声も多い。韓国大法院(最高裁)が日本企業に命じた賠償を韓国政府が立て替えて原告(被害者)に即時支払い、その後は原告に代わって韓国政府が日本に支払いを請求し続けていくという方式だ。次期駐日大使に内定している姜昌一(カン・チャンイル)氏は最近、日本メディアの取材に、解決法の一つとして、韓国企業などが中心となった代位弁済案を例示した」

 

代位弁済は韓国政府が立て替えるが、最終的に日本に払えと言う魂胆ではとんでもないこと。韓国大法院の判決によって、日本企業が縛られる義務はない。すでに解決済みの問題であるからだ。「司法自制の原則」に則るべきである。

 


(3)「凍結案、弁済案の実現には、それぞれ高いハードルがある。韓国ではもともと年明けの早い時期にも裁判所が韓国で差し押さえられた日本企業の資産売却を命令し、資産が現金化されるとの見方があった。「凍結案は、進歩(革新)勢力が朴槿恵(パク・クネ)前大統領を糾弾した手法そのものだ」と語るのは、保守系のジャーナリストだ。司法判断がときの政権の意向や民意に連動しやすいといわれる国柄で、政権与党の要人が凍結案に言及した意味は小さくない。司法側が「政権の意思」と受け止め、司法手続きに影響をもたらすとの指摘がある」

 

韓国の日本企業の資産差押担当の裁判官は、日韓の政治情勢をみながら柔軟に対応する旨を、新聞インタビューで答えている。

 

(4)「弁済案も簡単ではない。現金化の遅延による凍結案と同様に、当事者である原告側の同意が必要になるからだ。もし原告側で1人でも日本企業への賠償要求の旗を降ろさず、政府からの補償を受け取らなければ、「被害者中心主義」が崩れてしまうと文政権側が憂慮する可能性が大きい。原告側を弁済案で説得できる見通しは立っていない。日韓の交渉に重くのしかかるのが、「見えない原告」の存在だ。韓国政府が認めた「強制徴用動員被害者」は22万人に上る。一方、弁済案の対象としているのは大法院で判決が確定している分だけだ。日本側は全てを包含したかたちでの決着を主張している」

 

文大統領は、人権派弁護士の感覚で「被害者中心主義」などと、格好を付けた発言をしているが、何万人にもなる人たちに、そんな夢のようなことを実現できるはずがない。こういうところが、「学校秀才」の限界である。時には、臨機応変という視点も必要になる。

 

(5)「韓国では、「将来分に備えるには日韓基金の創設しかない」との意見があるものの、15年の日韓慰安婦合意と似た枠組みには文政権の抵抗感が強いとみられる。文政権の要人の間で、凍結案や弁済案の検討が進められているのは、従来に比べれば前進ともいえる。権力を握る青瓦台は具体案に言及していない。青瓦台事情に詳しい韓国外交筋は「文大統領は頭を抱えているようだ。『被害者中心主義』にこだわっており、在任中にリスク覚悟で決断するのは難しいのではないか」と語る」

 

文氏は、教わったことを超えて決断できない人である。「1+1=2」から出られないのだ。日韓関係をメチャクチャにすることはできたが、修復方法について教えてくれた人がいなかったのであろう。文氏の在任中の解決は不可能であろう。