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米国は、中国へのハイテク技術漏出に強い警戒をしている。中国政府系投資ファンドは、その警戒網をくぐって米ハイテク企業へ出資して技術窃取を試みている。ワシントンでは国家安全保障への影響を懸念する声が党派を超えて広がっているという。

 

一方、米司法省が、今年1000人超の中国のスパイを出国させたと明らかにした。中国のスパイたちは研究員になりすまし、バイデン次期米政権を標的としたスパイ活動を繰り広げていたことが分かった。米国政府が30の都市で捜査を繰り広げ、ヒューストンの中国総領事館を閉鎖するなど厳しい取り締まりを続けるうちに、スパイたちは自ら出国したという。『朝鮮日報』(12月3日付)が伝えた。

 

産業スパイと異なって、ハイテク企業への投資は形式的には合法的である。ただ、技術窃取という点では同じだ。共和党のクルーズ上院議員は、「中国企業による米企業・政府への傍若無人なスパイ活動がまかり通っている」と警鐘を鳴らしている。

 


『フィナンシャル・タイムズ』(12月2日付)は、「
御してもやまぬ中国の対米ハイテク投資」と題する記事を掲載した。

 

米国が外国企業の投資規制を強化する中で、中国政府系ファンドによる重要技術分野への対米投資が依然続いている。

 

(1)「重要品目の半導体分野ではピクセルワークス、ブラック・セサミ・テクノロジーズ、ライトICテクノロジーズの米3社が最近、中国の政府系ファンドの出資を受けた。中国のコンサルティング会社、清科集団によると、重要産業に重点投資する中国の戦略投資ファンドは1600社を超え、資産総額は推計4兆元(約64兆円)に達する」

 

米国は、中国への半導体技術の漏出を警戒している。中国の政府系ファンドは、米国の半導体企業へ合法的に出資して、技術を手に入れようとしており、まんまと虚を突かれた形だ。中国の戦略投資ファンドは1600社を超え、資産総額は推計4兆元(約64兆円)に達するという。これが、世界中の最先端技術を狙っている。

 


(2)「中国の政府系ファンドは経済政策の司令塔である国家発展改革委員会の指導の下で投資先を決定している。投資対象となるのは戦略的な新産業や、米国と肩を並べる産業育成を目指す半導体をはじめとする先端製造分野だ。米国の半導体3社への投資のうち、2社には国家集成電路産業投資基金(CICF)が関与している。CICFは14年、中国政府主導で200億ドル(約2兆1000億円)を集めて組成した半導体産業育成ファンドで、中国財務省が筆頭株主として名を連ねている」

 

中国には、国家集成電路産業投資基金(CICF)が存在する。200億ドルの資金を擁する半導体産業育成ファンドである。中国は、自国で半導体技術の開発をするよりも、世界中からめぼしい技術を買い集める方式をとっている。促成栽培方式だが、基礎技術の不足している結果、手に入れた技術の実用化に手間取っている。中国半導体の自給率が、2019年でも15%台に止まっている理由だ。

 

(3)「中国による対米ベンチャー投資は2年前にトランプ大統領が対米外国投資委員会(CFIUS)の企業審査を厳格化してから急減した。CFIUSは米政府の複数の省庁でつくる組織で、安全保障上の観点から外国企業による投資を審査・規制している。新たな規制により、バイオテクノロジーや半導体など「重要技術」に関わる投資案件をすべて審査するようになった。それまで審査対象は米企業への支配権を握る案件に限られていた。

 

(4)「米調査会社ロジウム・グループによると、中国のベンチャーキャピタルによる19年の対米投資額は25億ドルと前年比ほぼ半減した。20年1~6月期は8億3000万ドルだった。ロジウムのアナリスト、アダム・ルイセンコ氏は重要産業とされる分野への投資がなお続いている理由について不明だと話す

 

トランプ政権が、対中で急ブレーキを踏んだので重要技術の中国への漏出に待ったが掛っている。19年の中国による対米投資額は25億ドル、前年比ほぼ半減した。20年1~6月期は8億3000万ドル。年率換算では、約17億ドルになろう。18年を50億ドルとすれば、20年はその3分の1へ縮小する計算だ。

 


(5)「前述のルイセンコ氏は、「中国の国策ファンドの多くは国家目標を達成するためならば世界中のどんな資産にでも投資する使命を担っている」と説明する。「CICFは数百社に上る巨大な国内ネットワークを持ち、複数の投資を経由して海外企業ともつながっている」という」

 

中国は、米国だけに網を張っている訳でない。世界中へ鵜の目鷹の目である。特に、イスラエルに注目している。半導体技術で先端を走っているからだ。米国務長官がわざわざイスラエルへ飛び、「中国に警戒せよ」と促すほどである。米国がバイデン政権になれば、同盟国を対中警戒で結束させるであろう。