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日本は、ワクチン購入について控え目な発表をしてきた。韓国の文大統領は逆である。交渉中を「合意」と発表して先方との食い違いが表面化している。韓国が、このように大統領自らが交渉するという異例の形を取っているのは、ワクチン購入が出遅れたからだ。それを挽回すべく「パフォーマンス」に転じている。とんだ、ピエロとなった。

 

昨日(12月30日)、文大統領は米モデルナから来年第2四半期に2000万人分のワクチン購入で合意と発表したが、モデルナによると「交渉中」である、としたのだ。

 


『朝鮮日報』(12月31日付)は、「青瓦台が『合意』発表した翌日、モデルナ社『韓国政府と協議中』」と題する記事を掲載した。

 

米国の製薬会社モデルナ社と2000万人分のコロナ・ワクチン供給で「合意した」とする青瓦台(韓国大統領府)の発表とは異なり、モデルナ側は「韓国政府と協議中」と説明した。そのため「青瓦台はワクチン供給契約についてやや先走ったのではないか」との指摘が出ている。

 

(1)「モデルナは29日(現地時間)「韓国に4000万回接種分のコロナ・ワクチン供給に向けた韓国政府との協議を確認する」という見出しのプレスリリースを公表した。その中でモデルナは「韓国政府と潜在的に4000万回接種分あるいはそれ以上のモデルナ・ワクチンを供給するため協議中であることを確認する」として「提案された合意内容によると、配布は2021年の第2四半期に始まるかもしれない」と伝えた」

 

供給側のモデルナが、下線のような発表をしている以上、契約として確定したものではない。文大統領は、それを「確定」のようなイメージで発表したもの。韓国の慌てている事情が透けて見えるのだ。

 

(2)「モデルナが米国、英国、シンガポールなどとワクチン供給で合意した際に発表した内容と比較しても明確な違いがある。モデルナは今年8月11日「米国政府と早期に1億回分供給で合意」という題目のプレスリリースを出した。これによるとモデルナは「米国政府は1億回分を確保したと発表する」という表現を使った。これに対して韓国に関する発表には「確保」という言葉がない」

 

モデルナ発表の文書には「確保」という文言がない。

 

(3)「11月17日、英国政府とワクチン供給で合意した際にもモデルナは「英国政府との供給合意を発表する」と伝えた。英国の規制当局が使用を承認すれば、2021年3月から供給を開始する」という具体的な文言もその内容に含まれていた。12月14日にシンガポールとワクチン供給で合意した際には「シンガポール保健省と契約を結んだ」と説明した。モデルナが韓国について使用した「協議を確認する」という表現は、通常であれば交渉中であることを正式に認める際に使う言葉のようだ」

 

モデルナは、韓国と協議中であることを認めたに過ぎないのだ。

 

(4)「モデルナは8月24日「欧州に8億回分を供給するため、欧州連合執行機関との協議が進展していることを確認する」と発表した。それから3カ月後の11月25日「欧州連合が早期に8億回分の事前購入契約を承認したことを発表する」と説明した。協議から契約まで3カ月以上の時間を要したのだ

 

下線のように、協議から契約まで3ヶ月以上の時間がかかっている。韓国もこの例から言えば、4月以降の契約となりそうだ。

 

(5)「モデルナは日本と交渉を行っていた今年8月28日「4000万回分を日本に供給するため、日本の厚生労働省と協議中であることを確認する」と発表した。それから2カ月後の10月29日、最終契約が結ばれた後に厚生労働省は「契約を締結した」と発表した。青瓦台がモデルナとの協議について「合意した」という断定的な言葉を使ったこととは対照的だ」

 

日本の場合、協議から最終契約まで2ヶ月間を要している。こういう状況を見れば、韓国大統領府の発表は「オーバーラン」したことは否めない。韓国国内は、ワクチン確保遅延で焦っている。31日発表の大統領不支持率は、59.8%で就任後最高を更新した。次第に、「藁をつかむ」心境になってきたのだろう。4月の総選挙で与党が、6割の議席を得た「勢い」は消えかかっている。