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現代自動車は8日、米アップルと自動運転の電気自動車(EV)を巡る開発協力で協議中との報道を認めた当初の発表文を修正し、アップルへの言及を削除した。現代自は数時間のうちに発表文を2回変更。最新の発表文は「さまざまな企業から自動運転EVを巡る協力の可能性について要請を受けている」とし、「話し合いは初期段階であり、何も決まっていない」と説明した。以上は、『ブルンバーグ』(1月8日付)の報道による。

 

ことの発端は、『韓国経済新聞』のケーブルテレビ部門が、現代自動車とアップルが現在、自動運転EV開発協力の条件について交渉していると報道。現代自動車で社内的な議論は終わり、会長の承認を待っているところだと伝えた。この報道では、具体化している印象だが、現実はそこまで話合いは進んでいないのかも知れない。

 

仮に、アップルが既存メーカーに生産を委託するような形になる場合、どういう問題があるか検証しよう。

 


『日本経済新聞 電子版』(1月8日付)は、「アップル、EV参入へ交渉 現代自が『初期の段階』認める」と題する記事を掲載した。

 

この記事は、現代自動車が米アップルと自動運転の電気自動車(EV)を巡る開発協力で協議中との報道を認めた当初の発表文に基づいている。その後、現代自はアップルという社名を削除した。事態は流動的であるが、問題点を見る上で参考になろう。

 

(1)「アップルはかねてモビリティー分野への進出に意欲があるとみられてきた。社内で約5000人が自動運転技術の開発に携わっていることが過去の資料で明らかになっている。17年ごろから本社のあるカリフォルニア州内で公道走行試験を始め、19年には米スタンフォード大学発の自動運転スタートアップも買収した」

 

アップルが、自動運転技術の開発に携わっていることは明らかになっている。当然、EV(電気自動車)は視野に入っている。

 


(2)「アップルは、スマートフォン「iPhone」などの開発を通じて半導体やセンサー、電池、人工知能(AI)などの技術を蓄積している。これらはEVや自動運転の開発にも応用できるとされる。スマホと同じようにEVも製造設備を持つ外部企業に組み立てを委託することで、早期に製品を市場に送り出す考えとみられる。iPhoneが生み出す高い収益に支えられた圧倒的な資金力も、EV参入にあたっての強みとなりそうだ。アップルの20年9月期の研究開発投資は187億5200万ドル(約1兆9400億円)と、トヨタ自動車(20年3月期は1兆1100億円)の約1.7倍、米テスラ(19年12月期は13億4300万ドル)の約14倍に上る」

 

EVは、走る「iPhone」と言われるほどで、アップルにとっては「隣接分野」である。アップルの研究開発費は、トヨタの約1.7倍。テスラの約14倍と言われる。資金的には何らの心配があるわけでない。ただ、スマホは新規分野であったが、EVは既存分野である。ライバルが山ほどいるジャングルである。簡単に進出を決意できないことも確かだろう。

 

(3)「これまで車の開発はエンジンが中心だったが、EVは「走るスマホ」とも言われ、電気まわりに近い部品やシステムが多いため車体開発へのハードルが下がる。とはいえ、これまでデジタル機器などの開発が主力だった電機メーカーが自ら部品を集め、自動車を製品としてまとめることは容易ではなく、英家電大手のダイソンはEV参入を目指したが、断念した経緯もある」

 

ダイソンは一度、EV進出を決断した。技術的に問題ないが、生産コストが掛りすぎるということで断念した。アップルも、同様の難問を抱えているかも知れない。

 


(4)「このため新規参入組は自動車の車体・部品メーカーとの提携・協業や技術者の引き抜きが必要になっている。車体を生産委託すれば、テスラのような時間はかからないとの見立てもあるが、アップルのEV参入計画の行く手にも、多くの壁が立ちはだかる可能性が高い」

 

テスラは、すべて自前で操業開始しただけに多くの難関にであってきた。この過程を見ると、アップルといえども簡単にEV生産を決断できるはずがない。現代自は、労組のストライキが世界一で知れ渡っている。組む相手として、ベストではない。