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米国トランプ政権は、あと10日余りを残す任期という土壇場で、米台の外交・軍事の接触禁止令を撤廃することになった。9日、ポンペオ国務長官が発表したもの。中国の反応は、現時点では不明だが、厳しい反対を表明することは間違いない。米中復交時に取り交わした「一つの中国論」に抵触するからだ。ただ、先に中国によって香港に関する「一国二制度」が破棄されたこともあり、米国が台湾について「一つの中国論」廃止は十分に予想されていた。

 

昨年8月、チェコが80名に及ぶ大使節団を台湾に送った。チェコは、公然と「一つの中国論」を破っており、それに続く国が米国になるとは予想外であった。

 

『BBC』(1月10付)は、「米国務長官、米台関係に制約不要と台湾との公的接触規制を解除へ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米国務省は声明で、台湾当局者との接触に関する「自主規制」は、台湾に対する自国の主権を主張する中国政府を「なだめる」ため数十年前に導入されたものだと説明。現在は「無効」だとした。今回の対応は中国の怒りを買い、米中間の緊張を高めることになりそうだ。ドナルド・トランプ大統領の任期終了が20日正午に迫る中、「自主規制」解除が発表された」

米国が、「一つの中国論」を放棄することは歴史的な事件である。これまで中国に遠慮して、米高官が台湾を訪問することを控えて来た。この「禁足令」を放棄した訳で、米国は公然と中国へ対抗する姿勢を見せることになった。

 

(2)「中国と台湾は1949年に分断した。中国は台湾を離れた領土とみなしているが、台湾の指導者たちは、台湾は主権国家だと主張している。両者の関係はぎくしゃくしており、台湾と友好的なアメリカを巻き込みかねない衝突の危険にさらされている」

 

米国は、すぐに中国が台湾への軍事攻撃を始めるとは見ていない。台湾の完全占領には中国兵30万人が動員されると見ている。この大軍が台湾海峡を越えるには、相当の準備が必要で事前察知が可能という。

 

米国が強硬姿勢に転じたのは、英国、ドイツ、フランスが西太平洋へ軍艦を派遣することを決めたことも大きな理由であろう。英国は、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が日本を母港にして長期派遣する。こうなると、中国軍が大軍を台湾海峡へ殺到させることができなくなる。

 


(3)「ポンペオ氏は9日の声明で、米国務省がアメリカの外交官と台湾との接触を制限する複雑な規制を導入したと説明。「本日、これらの自主規制を全て解除すると発表する」と述べた。「アメリカと台湾の関係は、この国の官僚制度が自らを縛ってきた自主規制に制約される必要がなく、制約されるべきでないことを認める」と長官は表明した。さらに、台湾は活気あふれる民主主義の場所で、信頼できるアメリカのパートナーだとし、外交関係への規制はもはや有効ではないと付け加えた」

 

他の報道では、外交・軍事の接触を可能にするとしている。外交官以外に、国防省高官の接触も解禁である。米国は、国内法として「台湾関係法」を整備している。この中で、安全保障として、次の事項を決めている。

 

1)平和構築関係維持の為に台湾に、台湾防衛用のみに限り米国製兵器の提供を行う。

2)米合衆国は台湾居民の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動を取らなければならない。

 

2)によって、米国が台湾を防衛する義務を決めているのだ。今回の「一つの中国論」廃止は、米国の強い台湾防衛を鮮明にしたのだ。

 

(4)「昨年8月にはアレックス・エイザー保健福祉長官が台湾を訪れ、蔡英文総統と会談した。1979年にアメリカが台湾と断交して以来で最高位の訪問となった。これに対し中国は、「一つの中国」の原則を尊重するようアメリカに求めた。米国は台湾に武器も売却しているが、日本や韓国、フィリピンとのような正式な防衛条約は結んでいない

 

防衛条約は通常、相互防衛条約である。米台の間では、米国が国内法で台湾関係法を定め、一方的に台湾防衛義務を負うという内容だ。台湾は、米国防衛の義務がない。逆に、米国によって防衛されるのだ。

 

(5)「中国政府は長年、台湾の国際的な活動を制限しようとしており、両者は太平洋地域での影響力をめぐり争ってきた。中国と台湾の緊張は近年高まっている。中国側は台湾を奪還するため、武力行使も辞さない構えを示している。台湾を正式に国として認めている国はわずかだが、民主的に選出された台湾政府は貿易で多くの国と結びつくほか、諸外国政府と非公式のつながりを持っている」 

中国は、台湾を外交的に孤立させるべく画策している。現在、台湾の国交維持は15ヶ国に減っている。米国は台湾と断交して中国と国交を結ぶ国に対して、経済援助をしないなどの圧力を掛けている。こうして、米国が台湾の後ろ盾になる理由は、「インド太平洋戦略」で台湾が重要な地政学的位置にいるからだ。次期バイデン政権が、このトランプ政権の政策を踏襲するか注目される。