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ベトナム経済が好調である。米中貿易摩擦による好影響を受けている。2019年の輸出総額の23.2%は、米国向けでありむろん1位である。米国の貿易赤字に占めるベトナムのウエイトが高まり、摩擦を懸念される状況になってきた。

 

こうして、ベトナムが「アジアの工場」として浮上しており、これまでタイが占めていた主役の座をベトナムが奪うまでになってきた。ただ、タイとベトナムの関係は、好循環を描いている。相互依存によって、経済発展している構図が浮かび上がる

 


『日本経済新聞 電子版』(1月12日付)は、「アジアの工場『主役交代』? タイよりベトナムは本当か」と題する記事を掲載した。

 

2020年の国内総生産(GDP)は、ベトナムが前年比2.%のプラス成長を維持したのに対し、タイはアジア開発銀行(ADB)の直近予測で7.%の大幅減に陥る見通しだ。勃興するベトナム、頭打ち気味のタイ――。そんな構図は、数年前から顕著になっており、コロナ禍が拍車をかけた形だ。

 

(1)「両国の勢いの差を象徴するのが、最近のパナソニックの決断である。タイで昨年9月に洗濯機、10月には冷蔵庫の生産を打ち切り、白物家電の生産をベトナムに集約した。タイは1961年に戦後最初の海外生産拠点を開き、自動車部品や電池などの工場がなお残るが、外資誘致でライバル視するベトナムが移管先だったこともあり、タイ政府にショックを与えた。従来はタイが大容量、ベトナムは中容量の機種ですみ分け、いずれもアジア周辺国や中近東など十数カ国への輸出拠点でもあった。生産移管は昨年初めに決定し、コロナ禍とは関係がないという」

 

日本のパナソニックは最近、タイからベトナムへ工場を移転した。タイは、パナソニックにとって戦後最初の海外生産拠点であった。その記念碑的な場所からの移転である。

 


(2)「なぜタイからベトナムか。ひとつは市場の要因だ。英調査会社ユーロモニターインターナショナルによると、19年の冷蔵庫、洗濯機の各市場規模はベトナムが280万台と227万台、タイは192万台と175万台。すでにベトナムの方が上回っているうえ、世帯普及率はタイの92%、70%に対し、ベトナムは74%、40%となお伸び代が大きい。もうひとつは生産要因である。ベトナムは近年、労務費の上昇が著しいが、それでもタイの6割程度の水準にとどまっている」

 

タイとベトナムについて、市場と生産拠点の2つの面からみると、ベトナムに軍配が上がる。普及率の低さで今後の成長余地があること。人件費はタイの6割である。もう一つの隠れた「魅力」は、米国がTPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰すれば、ベトナムが生産拠点として持つ価値は「暴騰」する。こういう読みもあるのだろう。

 

(3)「タイは1980年代から「アジアの工場」として発展した。ベトナムへの製造業集積は2007年の世界貿易機関(WTO)加盟以降と遅いが、対内直接投資額は14年、輸出額も18年にタイを追い抜いた。米中摩擦やコロナ後の「脱中国」の受け皿として注目は高く、「これからはタイよりベトナム」とみる外資は増えている」

 

ベトナムは、米国との外交関係が良好である。米海軍艦艇の寄港地になるほどの関係を深めている。米国にとっては、地政学的価値が高まっている国なのだ。

 


(4)「本当にそうか。両国の経済構造を分析すれば、少し違った構図が浮かんでくる。第1はモノの輸出だ。ベトナムは4割が米欧向けだが、タイは3割を東南アジア域内が占める。特筆すべきは、タイがCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)と呼ぶ、メコン川流域の周辺後発国との貿易で19年に139億ドル(約1兆4500億円)の黒字を計上したことだ」

 

タイは、CLMV向けの輸出で19年に139億ドルもの黒字を稼いだ。

 

(5)「タイの貿易黒字全体が90億ドルだったので、CLMVを除けば実は赤字だったことになる。なかでも対ベトナムの貿易黒字は67億ドルと、対CLMVのほぼ半分に達した。消費財などで「メード・イン・タイランド」の人気は高く、ベトナムを中心に周辺国の成長力を取り込んでいる」

 

タイは、対ベトナム輸出で67億ドルもの貿易黒字を稼いでいる。多分、素材や中間財の輸出である。ベトナムはこれを組立てて輸出する。日本と韓国のような関係になっているのであろう。

 

(6)「同様の図式は第2のサービス輸出にも当てはまる。コロナ禍前の19年のタイの黒字は233億ドル。ベトナム(87億ドル)の3倍近くを確保した。モノと違い、国別の収支は分からないが、ここでも原動力は周辺国だ」

 

タイは、サービス輸出でもベトナムの3倍も稼いでいる。外国人観光客が多い結果であろう。

 

(7)「第3は投資だ。対内直接投資ではベトナムの後塵を拝するが、いまのタイはむしろ対外投資国としての顔を強める。「対外」は19年まで4年連続で「対内」を上回り、前者は累積投資額でも後者の6割まで積み上がった。対外投資は単年・累積ともマレーシアを上回り、東南アジアではシンガポールに次ぐ存在になった。タイ企業はベトナムへの投資を加速している。投資が向かう先もやはりベトナムだ。外資との提携で力を蓄えたタイ企業が次々と大型投資に踏み切る」

 

タイは今や、資本輸出国に変ってきた。その向かう先はベトナムである。ベトナムの発展余地に賭け始めている。日本は、1970年代から東南アジアへ工場進出したが、今度はタイで同じ構図が見られるようになった。