a0960_008531_m
   

中国経済システムは、経済の合理性で動くのでなく「人縁」で動くことが証明された。半導体大手の紫光集団は昨年、4回とも言われるデフォルトに陥りながら、子会社は操業しているという不思議な現象が起こっている。この裏には、紫光集団が精華大学系列企業であり、習近平氏が精華大学OBであることが影響していると見られている。

『日本経済新聞 電子版』(1月13日付け)は、「紫光集団、債務不履行でも操業続く 中国政府が後ろ盾」と題する記事を掲載した。

(1)「中国を代表する半導体大手、紫光集団が債務危機に揺れている。2020年末までに4度の社債の債務不履行を起こす一方、傘下企業は操業を続けている。その背後には政府資本が複雑に入り込む中国独特の企業統治の仕組みと、22年の共産党大会を控えた政治情勢が見え隠れする。「資金繰りがつかなかった。投資家におわびする」。12月10日、わずか2億6000万元(約42億円)の社債の利息を支払えず、紫光集団は2度目の債務不履行に陥った。同日満期のドル債4億5000万ドル(約470億円)も資金の手当てがつかず、年末には別の元建て債でも利払いが滞った」

日本では、一度のデフォルトで破産か会社更生法かの選択になるが、中国はこのように4回もデフォルトに陥りながら会社は存続しているから不思議だ。契約概念の希薄な中国ならではのこと。これが、経営規律を弛緩させる原因であろう。



(2)「紫光集団は習近平(シー・ジンピン)国家主席の母校でハイテク人材を輩出する清華大学が51%出資する企業。13年に中国の半導体設計大手、展訊通信を傘下に収めたのを皮切りに、大規模な買収や投資を重ね、半導体を主力事業に育てた。有名になったのは、15~16年の米半導体大手マイクロン・テクノロジーとウエスタンデジタルへの買収や出資の提案だ。米当局の反対で頓挫したが、最近では傘下の長江存儲科技(YMTC)が、世界的にも一定の競争力を持つ半導体製品の開発に成功していた」

習近平氏や前国家主席の胡錦濤氏も、精華大学OBである。中国の人縁社会では、こういう大物政治家を輩出した大学ゆえに、その企業も大目に見てもらっているのだろう。これが、経営という真剣勝負の場で甘さを出す背景だ。

(3)「ただ財務の厳しさは前から知られていた。6月末の有利子負債は1566億元まで膨れ上がり、連結対象ではないグループ会社も多額の債務を抱える。貸借対照表に計上する現預金は515億元しかなく、資金繰りが楽ではないのは明らかだ。元建て社債は国内銀行と、銀行が販売する投資商品「理財商品」に組み込まれた分で全体の3割を超えるとされる。融資の変形という性質を持ち、債務不履行に陥っても取引を打ち切らないことが多い。このことが信用不安のすぐに広がらない要因となっている」

財務の厳しさは、売上高が伸び悩んでいた結果であろう。中国の半導体は、品質さえ良ければ売り手市場のはずだ。それが、資金繰りに窮したのは製品の歩留まりが悪かったからに相違ない。



(4)「米中間のハイテクの覇権争いが続くことは必至のなか、米国から中国の弱点として狙われる半導体産業の育成は習氏にとって喫緊の課題だ。紫光集団は重要な「コマ」であり、急激な資金難は不可解とする指摘があるのは確かだ。銀行の与信枠は6月末時点で1555億元あった。紫光集団は「当社は持ち株会社であり、グループ企業は平常通り操業している」と強調する。なぜ紫光集団の資金繰りが悪化する一方で、事業会社は通常に営業できるのか。カラクリは国有企業や政府系ファンドが複雑に入り組む資本構造にある」

紫光集団は、財閥系列を思い浮かべればその全体像が想像しやすい。紫光集団は、文字通り「親会社」であるが、何層にも分かれた子会社→孫会社→ひ孫会社などと系列が組まれている。そして、それぞれ資金調達パイプをつくっているので、親会社の紫光集団がデフォルトに陥っていても系列企業は資金パイプが繋がっている限り、存続できるシステムになっている。

となると、親会社の紫光集団は何を担当しているのか。人事や技術開発であろう。ただ、紫光集団の全体経営を考えれば、子会社群全体が非効率経営になっていることは間違いない。風にそよぐ葦である。



(5)「紫光集団は09年に出資しトップとなった趙偉国董事長の陣頭指揮で成長した。趙董事長は否定するが、背後には胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席の息子の胡海峰氏との「関係」があるとの指摘がある。中国では党幹部との人脈が企業の成長には欠かせない」

ここに、胡錦濤氏の名前が出てくる。中国共産党指導部の家族は、こういう形で国有企業に関係を持っている。

(6)「紫光集団の経営陣がこれからも党や政府の支援を得られるかは、22年党大会での人事刷新が左右する可能性がある。中国の半導体産業は党や政府の保護を受け、経営の規律が問われることはまれだった。一方で政治に翻弄されるリスクは否定できない。中国が米国に対抗できる半導体産業を育成するには、市場原理を活用した競争政策の導入が近道かもしれない」

人縁社会の中国では、人の縁が切れればそこですべてが終わる。習近平氏の政治家運命と紫光集団は深い関係にある。これでは、中国の半導体産業の位置づけが、脆弱であることを意味する。人縁経済の弱点である。