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中国の昨年の実質GDP成長率は、2.3%と主要国では唯一の黒字成長を実現した。だが、2010年比で20年のGDP倍増計画は未達に終わった。1.94倍にとどまったのである。この10年間、GDPの改ざんが行われてきた。GDP10年間での倍増計画が、改ざんを促進させたのであろう。成長の主役は、インフラ投資と不動産バブルである。地に足がつかない「竹馬経済」であった。

 

引用記事は数字が多いので、私のコメントを読んで頂けるだけでも理解できるように配慮した。中国経済の成長中身は、旧来型の腕力による「押し上げ成長」である。今後の楽観は禁物で、家計と企業が過剰債務を抱えていることが、成長下押し要因になると見られる。

 


『日本経済新聞 電子版』(1月18日付)は、「中国、20年2.3%成長 GDP倍増目標は未達」と題する記事を掲載した。

 

中国国家統計局が18日発表した2020年の国内総生産(GDP)は、物価の変動を除く実質で前年比2.%増えた。新型コロナウイルスを早期に抑えこみ、投資など企業部門が回復をけん引した。主要国で唯一プラス成長を維持したもようだ。20年10~12月は前年同期比6.%増と、7~9月(4.%増)より拡大した。

 

(1)「中国経済は新型コロナが直撃した20年13月、1992年に公表を始めた四半期ベースで初のマイナス成長に沈んだ。その後、新型コロナを抑え込んで生産を立て直した。投資や輸出が成長を押し上げ、成長率は4~6月以降拡大した。ただ20年暦年の伸び率は、文化大革命の最終年で経済が混乱した1976年以来、44年ぶりの低さとなった。20年の実質GDPは10年の1.94倍にとどまり、中国共産党が掲げた倍増目標は未達だった」

 

20年の実質経済成長率は2.3%。不動産バブルとインフラ投資が下支えした。住宅高騰は、家計債務を増やしているので個人消費支出を長期にわたり抑制する。バブル後遺症として、家計支出にマイナスの影響を与えるはずだ。

 


(2)「20年10~12月の実質成長率は市場予想の平均(5.%)より上振れした。新型コロナの感染が広がる前の19年10~12月(6.%)を上回った。生活実感に近い名目成長率は6.%と、7~9月(5.%)より拡大した。前期比の実質成長率(季節調整済み)は2.%だった。7~9月(3.%)よりやや鈍化した。先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は11%程度となる」

 

10~12月期の実質GDPは、前年同期比6.5%増と事前予想を上回った。この段階では、パンデミック以前に戻った感じである。ただ、12月の小売売上高は前年同月比4.6%増。事前予想の5.5%増を下回った。11月は5.0%増だった。小売売上高は、家計債務増加の悪影響をはっきりと受けている。

 

(3)「GDPとは別に他の経済統計も発表された。工場やオフィスビルの建設など固定資産投資は20年通年で前年比2.%増えた。春以降、政府がインフラ投資を加速。主な担い手である国有企業の投資は堅調で、鋼材やセメントの生産も好調だった。一方、民間投資は伸び悩み、設備投資は減少した。投資のうちマンション建設など不動産開発投資は7.%上回った。新型コロナ対応の金融緩和であふれたマネーが金融市場に流れ込み、1月からの累計額は6月にいち早く前年同期比プラスに転じた。外需も成長を押し上げた。輸出(ドル建て)は前年を3.%上回った。輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は27%の大幅増となり、金額も最高だった15年に次ぐ過去2番目の大きさとなった」

 
要約すれば、次のようになる。

1)工場やオフィスビルなど固定資産投資は、通年で前年比2.%

2)マンション建設など不動産開発投資は、同7.%

3)輸出(ドル建て)は、同3.%

4)輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は、同27%

 

2)の不動産開発投資が、7.0%増で突出している。市民が、相変わらず「住宅先高観」に踊らされて購入している。適当な金融資産がないため、住宅購入が貯蓄手段になるという歪な資産形成である。この反動による住宅価格暴落が始まれば、庶民は地獄をみるだろう。その時期は遠くない。

 

4)貿易黒字が27%も増えたのは、「パンデミック特需」である。自宅作業の増加でパソコンが爆発的な売れ行きである。中国が、この特需を一手に引き受ける形になった。特需だけに、今年後半には、下火になると予想されている。

 


(4)「百貨店やスーパー、電子商取引(EC)などの売上高を合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は20年通年で3.%減少した。比較可能な1994年以降で初めてマイナスとなった。家計調査でみた消費支出も実質4.%減少した。要因は経済の正常化に対して所得の改善が遅れたことだ。1人あたりの実質可処分所得の伸びが2.%にとどまり、6%前後だった新型コロナ前と比べて見劣りする。工業生産は2.%増えた。投資関連の原材料のほか、リモート需要が追い風となったパソコンなどの生産が伸びた」

 

小売売上高は、20年通年で3.%減少した。習近平氏は、国内需要中心の経済循環構想を描いているが今後、バブル後遺症である家計債務増加によって、個人消費への圧迫は本格化するはず。虹色の青写真は描けないであろう。

 

(5)「足元の経済成長率はすでに新型コロナ前の水準に戻った。21年は前年の反動増もあり、中国当局は8%前後の高成長を見込む。ただ新型コロナの感染が局所的にぶり返している。省をまたぐ移動制限が消費など経済活動を鈍らせる可能性もある」

 

22年は、習近平氏の国家主席改選期に当る。それだけに無理した経済成長促進策を取る可能性がある。そうなればますます、中国経済は構造的な危機を強めるだろう。