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米国では、EV(電気自動車)の新興メーカー・テスラの株価急騰によって、EV関連企業全体に大きな注目が集まっている。現在のEVは、リチウムイオン電池を動力源にしているが、充電に長時間かかることや、発火事故を起こすなど克服すべき技術的課題を抱えている。

 

いま少し詳しく説明すると、次のようになる。

 

全固体電池は現在、主流のリチウムイオン電池の電解液の代わりに固体の電解質を使う。発火などのリスクを低減し安全性を高められるほか、電池容量を示すエネルギー密度が数倍に上がる。充電時間も現行EVの3分の1の10分程度ですむという。

 

こういう「夢の電池」である全固体電池が、米国では、クアンタムスケープの手で進んでいる。クアンタムスケープの技術は、資金力の豊富な支援企業を引きつけている。ドイツの自動車大手フォルクスワーゲンは、同社に3億ドルを投資し、数年内に実用化される予定のバッテリーを使う計画と報じられている。クアンタムスケープは、昨年11月下旬、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通して上場した。ビル・ゲイツ氏が設立したクリーンエネルギー基金「ブレークスルー・エナジー」からも支援を受けている。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(1月19日付)が報じた。

 


全固体電池の開発では、トヨタが世界のトップを走っている。トヨタの全固体電池関連の特許数保有は、1000を超えて世界トップという。他の自動車メーカーに先駆け20年代前半の実用化を目指している。21年に試作車を公開し、性能試験を本格化させる。日産自動車も28年めどに自社で開発した全固体電池を実車に搭載する計画だという。以上は、『日本経済新聞』(2020年12月10日付)が報じた。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月19日付)は、「EVバッテリー競争、全固体電池の実装なるか」と題する記事を掲載した。

 

電気自動車(EV)には2つの大きな欠点がある。限られた航続距離と充電の遅さだ。バッテリーメーカーが「デンドライト(樹状突起)」問題を解決できるまで、問題は続く公算が大きい。解決策は何十億ドルもの価値になる。多くの新興企業が、開発初期における成功をアピールしている。こうした新興企業は自動車メーカーが後ろ盾となっていることが多い。投資家は数少ない上場企業の一つ、クアンタムスケープに群がっている。

 

(1)「リチウムイオン電池のデンドライトとは、微少な枝状の小針のようなリチウム堆積物をいう。電池の内部で形成され、ショートや火災まで引き起こす原因となる。現在、自動車に搭載されているバッテリーは時間をかけて充電する必要があるが、これはデンドライトの形成リスクも一因となっている。充電が早過ぎると、デンドライトが形成される可能性があるからだ。クアンタムスケープのバッテリーはデンドライト問題を解消したもようで、より短時間で充電することができる」

 

リチウムイオン電池の弱点は、全固体電池によって取り除かれる。発火事故もなく短時間の充電が可能である。

 

(2)「一方、コロラド大学のスピンオフ事業で、フォードや現代自動車、BMWが支援している新興企業ソリッド・パワー(本社デンバー)は、リチウムイオン電池の生産と同じ設備や技術を使える全固体電池の生産に取り組んでいる。乗用車用サイズのセルを試作中で、1年以内に大型セルを作成し、2025年までに量産車に搭載することを目指している。トヨタ自動車も全固体電池の開発に長年取り組んでいる。昨夏の東京五輪で実用レベルの試作品を披露する予定だったが、五輪は延期された」

 

フォード、現代自動車、BMWが支援している新興企業ソリッド・パワーも全固体電池に取り組んでいる。トヨタは、世界一の全固体電池の特許保有とはいえ油断ならない。

 

『日本経済新聞』(2020年12月10日付)は、「新型EV電池、官民で実用化 20年代前半にトヨタが搭載車 三井金属 素材生産へ」と題する記事を掲載した。

 

電気自動車(EV)の次世代基幹技術として本命視される「全固体電池」の実用化への動きが官民で加速し始めた。トヨタ自動車は同電池の搭載車を2020年代前半に販売する方針で、三井金属なども関連素材の生産準備に動く。政府も数千億円規模の支援を検討する。現行のEV電池は中国勢が高いシェアを握る。車の電動化の拡大をにらみ次の主要技術で主導権確保を狙う。

 

(3)「完成車メーカーの動きにあわせ国内の素材メーカーも主要部材の生産体制構築を急いでいる。三井金属は電流の流れを左右する「固体電解質」と呼ばれる素材の生産に乗り出す。埼玉県の研究所で設備を稼働させ、21年には企業の試作レベルの発注量に対応できる年間数十トン規模をつくれるようにする。出光興産も自動車向けを念頭に固体電解質の生産設備を千葉県市原市の事業所に新設し21年から稼働させる。全固体は硫化系物質などを固める作業が重要で、金属や化学メーカーが手がけやすい。住友化学も関連部材の開発に乗り出した」

 

日本は、「素材の日本」と言われるほどの強みをもつ。高度経済成長時代に培った技術に磨きを掛けて、他国の追随を許さぬ体制を取っている。久しぶりに「オールジャパン」が結束して、全固定電池でトップを走らなければならない。

 

(4)「日本政府は現状のままでは車の性能に直結する中核技術の多くを中国に頼ることになるとみて全固体電池の開発を後押しする。これから新設する2兆円規模の脱炭素技術の支援用基金などを活用し、数千億円規模の生産開発補助を検討していく。国内での量産体制の整備支援などを想定している。リチウムイオン電池同様に全固体も世界で埋蔵量が限られるリチウムを使うため、材料調達での協力も進める」

 

政府も脱炭素技術の一環として技術開発を支援する。リチウムの確保も政府の支援を必要とする。