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韓国文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、新外交部長官に鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領外交安保特別補佐官を指名した。この人事は、対米国関係では失敗でないかという見方が出ている。

 

米国の対北朝鮮外交は今後、トランプ時代のトップダウン方式を捨てて積み上げ方式に戻る。トップダウン方式は、今回の韓国新外交部長官に内定した鄭氏が推進したもので、米韓の外交トップの組み合わせは、はなはだチグハグなものになる。

 

現在の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官を続投させた方が無難であったという指摘もある。康氏は、国連時代にバイデン事務所のスタッフと良好な関係であったというのである。

 


『中央日報』(1月21日付)は、「韓国の新任外交部長官、バイデン時代の外交に適合しているか」と題する社説を掲載した。

 

文在寅大統領が20日、3部署の改閣に踏み切った。今回の人事では、現政権で最長期間在任した康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領外交安保特別補佐官と交替する。鄭氏は、この政府初代の国家安保室長を3年間務めた。


(1)「康京和長官は在任の期間に「無能論」に苦しめられた。自分の声を出すことができず「目に見えない長官」「人形」という汚名まで着せられた。韓米同盟、韓日関係が危機に処したという懸念の声があがった。それでも文大統領は3年7カ月もかたくなに康氏に外交部長官を任せた。その間、韓国外交は孤立無援の立場に置かれた」

 

康京和長官については、これまで内閣改造のたびに「更迭候補」に上げられてきた。それでも、文政権発足時の閣僚では唯一の「生き残り」として閣内に止まってきた。文大統領夫妻から強い信頼を得てきた結果という。外交手腕ではなかったのだ。

 


(2)「文大統領が事実上、自身と任期をともにする外交首長として鄭氏を選んだ。これを受け、文大統領が残りの任期の外交の傍点を「韓半島(朝鮮半島)の平和プロセス」の再稼働に置いたという解釈がある。文大統領は18日新年記者会見で2018年シンガポール米朝会談に言及して、「シンガポール宣言から再び始めよう」とも述べた。鄭氏は、国家安保室長としてドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の会談を仲裁した

 

鄭氏は、トランプ氏と金正恩氏の会談を仲裁した。文氏は、この実力を高く買っており、来たるべき「バイデン・金」米朝関係にも生かそうという狙いである。だが、バイデン米国政権では、トップダウン方式を嫌っており、鄭氏の出番がない。むしろ、米国側からは無益な「米朝会談」をお膳立てした張本人として、戦犯扱いされかねないのだ。文氏の目論見は、完全に外れた。

 

(3)「問題は、鄭氏の人事と重なって20日(現地時間)発足するジョー・バイデン米国行政府の考えは違うということだ。バイデンは鄭氏が仲裁した米朝会談を、「成果のないリアリティーショー」として失敗作だと評価する。金正恩委員長の政治的地位を高めただけで、実質的に得たのはないという見方だ。米国務長官指名者アントニー・ブリンケン氏は19日、上院承認聴聞会で北核問題に対して「良くならず、さらに悪くなった」として「われわれが試みる最初のことは全般的な接近法を見直すこと」と明らかにした」

 

このパラグラフで、鄭氏の出番は非常に狭められる理由が、明らかにされている。鄭氏は、「米朝トップダウン方式」を勧める基盤を失った。

 

(4)「これは韓国政府が、トランプ氏を通じて実現しようとしたトップダウン方式の再検討を意味する。このような見解のバイデン行政府が発足する時点に「失敗した」米朝会談の仲裁者とされる人物を外交首長として前面に出した韓国政府に対して、米国は疑問を持つほかはない。より能力があって斬新な人物が必要な時点だった

 

米国が、鄭氏に対して反感を持つのでないかと危惧されるほどだ。文大統領は、完全に米国の動きを見誤っている。

 


(5)「鄭氏は2019年、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の交渉過程で維持を強く望む米国と意見の隔たりがあった。韓日強制徴用問題が浮上した時も成果をあげることができなかった。最近では慰安婦判決まで加えられ、韓日関係はさらに複雑になっている。新たな関係を築いていくべき韓米同盟、葛藤が激しくなっている韓日関係など山積した外交懸案を解決するうえで鄭氏が適任者ではないという考えを振り払い難い」

 

鄭氏は、外交官上がりである。朴政権時では、重用されなかったので「積弊一掃」でパージの対象にならなかった人物である。となると、外交官として主流にいたのでないかも知れない。このパラグラフでは、複雑な日韓関係で能力を発揮できるか疑問視している。

 

鄭氏は、金正恩氏を説得して東京五輪へ出席するようにできれば「大金星」となろう。ただ、米国側が首脳会談に応じるか疑問である。文大統領が描く、東京五輪を舞台にする日米韓朝4ヶ国会談の可能性は極めて低い。

 

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2021-01-21

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