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文在寅大統領は、バイデン米国大統領の同盟国主義に呼応し、これまで口にしなかった「インド太平洋戦略」について初めて言及した。文氏のライフワークである南北接近には、バイデン氏の歓心を買わなければならないと覚悟を決めたようである。これほど、文氏にとっては「南北問題」が最優先課題であることを示している。

 

『中央日報』(1月22日付)は、「バイデン氏が就任するや、文大統領『インド太平洋秩序』に言及」と題する記事を掲載した。

 

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は21日、「韓半島(朝鮮半島)を含めたインド太平洋地域の秩序が急激な転換期に入っている。堅固な韓米同盟と共に周辺国との協力関係を一層発展させて、今の転換期をわれわれの時間にしていく時」と述べた。文大統領はこの日、主宰した国家安全保障会議(NSC)全体会議で、「韓米両国政府が共通で志向している国際連帯と多国主義に基づいた、包容的かつ開放的な国際秩序を作るために緊密に協力していってほしい」と明らかにした。

 

(1)「文大統領が主宰した今回のNSC全体会議は、2019年3月米朝首脳会談「ハノイノーディール以降22カ月ぶりとなる。この日の会議は米国バイデン政府の発足に合わせて外交部・国防部・統一部など外交・安保部署の業務報告を兼ねて開催された。目を引いた部分は、文大統領が就任後初めて「インド太平洋体制」を国際情勢判断の新たな枠組みとして提示した部分だ。「インド太平洋戦略」という言葉の中には、米国を中心に同盟国が参加して中国の勢力拡大を牽制(けんせい)する概念が含まれている。文大統領は、これまで韓中関係などを考慮してこの用語を自制してきた」

 

文氏が、NSC全体会議を主宰して基本方針を指示するスタイルに驚く。文氏の方針が変らない限り、事態の進展しないシステムは、極めて硬直的なのだ。バイデン米国大統領はボトムアップ方式であるが、文氏は相変わらずのトップダウン方式である。韓国は、衆知を集めるべき時期なのだ。

 

韓国はようやく、米国のインド太平洋戦略に同調する動きを見せ始めた。そうしなければ、南北問題も解決しないという思いであろう。文氏の外交基軸は、相変わらず北朝鮮である。

 


(2)「文大統領のこの日の発言は、バイデン政府発足を意識したという分析が出ている。宋旻淳(ソン・ミンスン)元外交部長官はラジオのインタビューで「新たに組織される『バイデンチーム』は、中国に対応するにあたり、韓日米3カ国を一つにして力を合わせることに非常に比重を置くだろう」と話した。ただし、文大統領がインド太平洋体制に言及したことに対して「韓国政府の北朝鮮戦略はそのまま置いた状態で米国にコードを合わせようと外側だけ取り繕っても、米国がこれをそのまま受け入れるかは疑問だ」と話した」

 

下線部は、文氏の思惑を突いている。韓国の北朝鮮接近という命題をそのままにして、米国の歓心を買うべくインド太平洋戦略を持ち出しても、見抜かれると懸念している。南北問題は、米中対立という大枠の中で捉えるべき問題である。韓国が、インド太平洋戦略に加担することは、中国と離れる意味である。二股外交を諦めることだ。韓国が、中朝問題を曖昧にしたままで、インド太平洋戦略を口にしても、バイデン政権は信用しまい。

 

(3)「文大統領はまた、「変化する国際秩序と安保環境にさらに能動的かつ主導的に対応していき、韓米同盟をさらに包括的かつ互恵的な『責任同盟』に発展させていくだろう」と話した。あわせて中国に対して「最大の貿易国であり、韓半島(朝鮮半島)平和増進の主要パートナー」と規定した後、「来年修交30周年を迎え、一層発展した関係に進んでいく基盤を作らなければならない」と話した」

 

米韓同盟が、「責任同盟」と言い切ったことは、二股外交を諦めることを意味するのか。一方では、中韓修交30周年を持ち出している。韓国が、中国とあえて敵対する必要はない。ただ、本籍地は米韓同盟であることを片時も忘れてはならない。

 

日中関係を見れば分かるように、日本は日米関係が基本と態度を鮮明にしているが、中国と経済的にギクシャクした関係にない。韓国も、日本方式を踏襲すればいいのだ。米韓同盟を蜜にすれば、中朝は韓国に対して絶対に横暴な態度を取りにくくなるであろう。それは、背後の米国の存在が、有効なブレーキを掛けさせるからだ。同盟のメリットはここにある。

 

 

(4)「対日関係に関連しては、「過去に留まらないで、共に知恵を集めて建設的で未来志向的な関係に発展させていかなければならない」と強調した。また「特に今年東京オリンピック(五輪)を成功裏に行えるように協力し、韓日関係改善と北東アジア平和進展の機会にしなければならない」という目標も提示した」

 

文氏は、東京五輪を舞台に日本・米国・北朝鮮との首脳会談を狙っている。「一発逆転」で外交的行き詰まりの打開を狙うが、実現の可能性は極めて低い。米国は会談に乗らないだろう。北の金正恩氏の来日には大きな疑問符が付く。韓国へも行かない金氏が、「仇敵」日本へ来ることなど夢のまた夢である。外交的な下交渉が何ら進んでいない段階で、儀礼的会談を期待しても無駄だ。文氏は、トップ会談に拘っている。トップダウン方式という悪例に染まり過ぎている結果だろう。