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韓国地方裁判所は、旧慰安婦判決で国際法を無視して、日本政府への賠償命令を下した。日本は、この裁判が違法なものとして一度も法廷へ出席しなかった。国際法の「主権免除論」は、他国を裁けないという原則である。日本政府は、国際法を無視した裁判なので判決について控訴もせず、一審で判決が確定する。

 

韓国では、日本に対しては何をしても許されるという思い上がりがある。国際法無視の判決が出るのは、正義の実現という錯覚のもたらしたものだ。旧徴用工賠償問題は、1965年の日韓基本条約に反するもの。これも、国際法の「司法自制の原則」に違反する判決である。

 

こういう国際法を無視する判決を相次いで出す裏には、韓国社会が「反日」であることが上げられる。裁判は、そういう国民感情を離れて純粋な法的視点で行われなければならない。韓国は、「感情8割、理性2割」の社会である。日本に関わる裁判では、「感情8割」が支配するのであろう。

 


『朝鮮日報』(1月23日付)は、「韓国裁判所の反日冒険、その次に来るもの」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の鮮于鉦(ソンウ・ジョン)編集副局長である。鮮氏は、長く日本特派員を経験した「知日派」である。

 

(1)「韓国の裁判所が18日、日本に対し「慰安婦被害者に対して賠償せよ」と判決した。日本政府は「裁判自体を受け入れない」とした。完全に勝訴した被害者も控訴する理由はない。一審判決は間もなく最終判決として確定する。慰安婦制度は違法だ。であるならば賠償は当然で、判決は正当なのか? 過去史、とりわけ慰安婦問題が出てくると「韓国人らしさ」を要求される。韓国人なら被害者に従わなければならない。他の意見は許されない」

 

韓国は、日本との歴史問題になると「感情8割」が全開する。「日本が悪」という結論に異論を挟むことを許さない風土である。裁判も人間の行うこと。この「国民情緒」に支配されるのだ。

 

(2)「世の中には逆のケースが多い。ポーランドは韓国以上に外部勢力からひどい目に遭った。ドイツ軍の民間人虐殺被害者が自国の裁判所に、ドイツを相手取って賠償を請求した。2010年、ポーランド最高裁は原告敗訴を確定させた。「裁判管轄権がない」というのが理由だ。フランスの裁判所は3度の判決で、ドイツに連行された自国民の賠償請求訴訟を全て棄却した。スロバキア、ベルギー、セルビアも自国民の敗訴を言い渡した」

 

欧州は、韓国と違った判決を下している。他国を裁く「裁判管轄権がない」という理由である。これほどまでに、国家主権を重大視するのだ。欧州は、歴史的に戦乱の舞台であったので、これをさけるには「他国に干渉しない」ことである。歴史の知恵が生んだものである。

 


(3)「こんな仮定をしてみよう。ベトナム国民が、韓国軍の虐殺被害者だとしてベトナム国内の裁判所に韓国を相手取って賠償を請求した。ベトナムの裁判所は一方的に韓国を法廷に立たせ、原告勝訴を言い渡し、韓国政府の財産を差し押さえた。韓国はこの判決を受け入れることができるか。虐殺行為が正当だと主張しているわけではない。一国が他国を裁くことはできないという主権平等の原理を言っているのだ」

 

他国に干渉しないことは、「主権平等」という原則に立っているのだ。韓国が、ベトナムから賠償請求されたらどうするか。身近な問題として考えるべきである。

 

(4)「国際慣習法は、国の権力行為について、他国の裁判管轄権から免除(国家免除)されると規定する。主権平等を保ち、国家間紛争を防ごうという仕掛けだ。ポーランド、フランスなどが自国民敗訴の判決を下したのも、虐殺、拉致、強制労働を容認したからではない。自分の権利を保障してもらうために他人の権利を保障するというものだ。こう聞く人がいるだろう。「ならば国家責任は消えるのか」と。正義は司法の占有物ではない。司法が駄目なら外交が、外交が駄目なら民間もできる。世界の戦後和解のやり方だ。韓国だけがこれを無視する」

 

司法だけが、正義を実現する「専売特許」ではない。外交や民間でも可能である。旧徴用工賠償問題では2019年、韓国の国会議長(当時)が音頭を取って、日韓の民間による寄付金で賠償する法案を韓国議会に提案したものの廃案に終わった。文大統領が、無関心であったからだ。

 


(5)「日本相手であれば一事不再理、時効、協定、証拠、判例、国際慣習法の壁まで簡単に越えていく。スウェーデンのある法学者は、強行規範の論理の危険性を「パンドラの箱」になぞらえた。韓国の裁判所は、日本を万能の鍵として「国家免除」というパンドラの箱のふたを一息に開け放った。今後どんなことが起こるだろうか」

 

強行規範は国際法の上位概念であるが、具体的な内容は確定されていない。つまり、内容が流動的なのだ。韓国の地方裁判所は、この使ってはならない手法をあっさり使ったことで、韓国が、逆の立場に立たされる危険性を持込んだ。ベトナム国民が、ベトナム戦争での損害賠償を韓国政府に求めるケースがあり得る。この時、韓国政府は「主権免除論」を盾にするだろうか。それとも、賠償判決に応じるだろうか。韓国にとっては、決して他人事ではないはずである。

 

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