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前政権の悪口三昧の中国外交

民主党政権はチーム力で対抗

新国務長官は外交路線を踏襲

ふらつく中国追撃の組織作戦

 

米国バイデン大統領が就任した。これまで4年間、トランプ前大統領に攻められっぱなしであっただけに、さぞかし鬱憤が溜まっていたと見られる。中国外務省は1月21日、トランプ前政権で国務長官を務めたポンペオ氏ら28人に制裁を科すと発表した。鬱憤ばらしをしたのだ。

 

制裁内容は、中国本土や香港、マカオへの入境を禁じる。また、関係企業・団体の中国での経済活動を制限するというもの。この発表は、バイデン氏の大統領就任直後に行われたのである。トランプ政権中に制裁しなかったのは、報復を恐れた結果だろう。現役でなくなった人間へ制裁を科しても意味はない。遠吠えなのだ。中国、弱さの証明である。

 

トランプ米大統領の任期が切れる数時間前、中国国営の新華社通信は20日、英語のツイッターアカウントから「いなくなってせいせいする、ドナルド・トランプ!」と投稿した。投稿には「厄介払い、トランプ政権と政権末期の狂気」と題した16日掲載の論説のリンクが貼られていたという。その論説では、任期切れ間近にトランプ政権が打ち出した中国を標的とする措置を「ばかげた見せ物」と断じ、新政権の米政策担当者に対し、米中関係が「一握りの過激派によって間違った方向に」導かれないよう求めた。

 


前政権の悪口三昧の中国外交

中国はここまで前米政権を批判・罵倒している。バイデン政権が、これをどのように受け止めているかといえば、何ら臆することなく米中対立の長期化を予告するのだ。米新政権は、人権擁護や民主主義防衛という普遍的な価値を前面に打ち出しており、前政権以上の対決姿勢を取る構えである。特に注目すべきは、新政権が同盟国重視を掲げている点である。前政権は、欧州同盟国とギクシャクしていたが、これを修復して一丸となって中国に対抗する姿勢を取っている。この点は、中国にとって気懸りであろう。

 

新華社通信は、英語のツイッターで「いなくなってせいせいする、ドナルド・トランプ!」と投稿するほど感情的になっている。米国バイデン政権が、これを喜ぶとでも思っているのだろうか。もしそうだとすれば、とんだ見当違いの「発信」と言うほかない。

 

トランプ政権も米国政権である。外国から悪口を言われて、喜ぶ後継政権はいない。中国への警戒姿勢は、前政権と変らないからだ。中国は、そういうデリケートな気持ちが分からないのだろう。

 

中国は、米国とのこじれた関係を立て直すため、外交担当トップを派遣してバイデン大統領側近らとの高官級会合にこぎつけ、首脳会談を実現させたい考えを持っていると指摘されている。中国当局者はこれまで水面下で会談を要請していたが、バイデン政権の国家安全保障チームや他の政府機関へ正式な要請を行っていない。

 

米国『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(1月23日付)によれば、中国は、米中間の亀裂が深まっていることや、対面での会談申し出が拒否されることへの警戒感で、バイデン政権との交渉に慎重になっている、と報じている。

 

中国は、それでもなお水面下で米国へ働きかけを行っている理由は、次の点にある。

 

1)中国の貿易や技術への制裁。

2)中国の領土権主張への拒否。

3)中国の人権抑圧問題による摩擦。

 

民主党政権はチーム力で対抗

以下、私のコメントを付したい。

 

1)貿易や技術への制裁で、中国は深刻な影響を受けている。バイデン政権は、前政権の課した制裁を継続する方針だ。イエレン財務長官は、「中国の悪質な慣行にはあらゆる手段」を積極的に使うとし、対中関税は同盟国と協議するまで変更するつもりはないと言明した。また、「中国に実際に意味のある圧力をかける違ったアプローチが必要だ」とも指摘。バイデン大統領と共に各国の為替操作をやめさせるよう取り組んでいくと表明した。

 

技術は、高級半導体と技術ノウハウの輸出禁止措置が取られている。すでに、中国にとって致命的打撃を受けている。中国自動車業界では、半導体不足によってEV(電気自動車)開発に重大な支障が生じる見通しである。中国の国家新能源汽車技術創新中心(NEVC)の原城寅ゼネラルマネジャーは、「数十年前の状態に戻る」とまで発言する始末だ。EVで、高級半導体が入手できなければ、開発はお手上げになる。

 

2)中国の領土権問題も深刻である。南シナ海での島嶼占領と軍事基地化は、抜き差しならぬ事態を招いている。米国のほかに、英国・ドイツ・フランスが海軍を派遣してけん制する状況にまでなってきた。これは、中国一国で主要国を相手にした軍事対決へ陥りかねないという危機に繋がっている。(つづく)

 

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2021-01-18

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