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「溺れる者は藁をもつかむ」という言葉通り、文大統領は南北対話再開の糸口を探るため、米国バイデン政権の外交戦略に100%乗るという方向を明らかにした。インド太平洋戦略の「クアッド」(日米豪印)にも参加し、日韓問題も日本の主張に接近するという、これまでなかった方針を打ち出している。ここまで変身してでも、南北対話再開にこぎつけたいという執念を見せているのだ。

 

『中央日報』(1月25日付)は、「文政府の対日基調が変わった 『日本に追加請求しない』」と題する記事を掲載した。

 

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の外交戦略が急旋回している。中国を牽制(けんせい)するために韓日米同盟の強化が必要だと主張する米国バイデン政府の要求を受け入れると同時に、南北問題まで考慮した流れだ。


(1)「文大統領は、今月21日に自ら主宰した国家安全保障会議(NSC)で、「韓半島(朝鮮半島)を含めたインド太平洋地域の秩序が急激な転換期に入りつつある」と話した。この発言は、米国が主導し、日本・インド・オーストラリアなどが参加する中国封鎖戦略である「日米豪印戦略対話」(QUAD=クアッド)を念頭に置いたものだ。文大統領任期序盤の2017年11月には当時の金顯哲(キム・ヒョンチョル)経済補佐官がインド太平洋戦略に対して「(韓国は)そこに編入される必要がない」と話し、外交的な波紋を呼ぶほどだった。だが、青瓦台(チョンワデ、大統領府)の雰囲気は大きく変わった」

 

文政権はこれまで、中国重視の外交を進めてきた。南北対話を軌道に乗せるには、中国のご機嫌取りをすることが第一という判断からだった。だが、中国重視の軌道から離れて、米国と一体化する外交戦略の中で、南北対話再開のチャンスを握る方向へ切り替わる。そのためには、インド太平洋戦略の「クアッド+α」に参加する意思さへ見せる、大胆な方向転換をするのだ。

 


(2)「これは、バイデン大統領の強力な要求に伴う変化だ。バイデン大統領は選挙に当選したばかりの昨年11月、文大統領との最初の電話会談で「韓国はインド太平洋地域の安保と繁栄において核心軸(リンチピン)」と規定した。米国主導の東アジア戦略を受け入れろという圧迫であり、米中のうちどちらかを選べという最後通告だと解釈された」

 

韓国が、「クワッド」入りを決意したのは、バイデン氏の圧力が大きかったと指摘している。

 

(3)「文大統領の外交戦略の変化は、残った任期の間になんとか南北問題解決に向けた糸口を見つけるという切迫さのためというのが与党関係者の分析だ。政府組織「民主平和統一諮問会議」の丁世鉉(チョン・セヒョン)首席副議長はメディアとのインタビューで「米国は、北東アジア政策で中国問題が一番大きく、中国問題の付属問題として北朝鮮を考えている」と話した」

 

文大統領は、南北問題がライフワークである。学生時代からの夢なのだろう。両親が北朝鮮出身であることから、祖先墳墓の地は北朝鮮である。文氏は、自分の魂も北朝鮮へ帰るという深い思いがあるに違いない。こういう信念がなければ、ここまで外交基軸を一挙に変える決心はつくまい。

 

(4)「文大統領が、短期間内に韓半島政策の成果を出すには、米国の要求に応じるよりほかはないという状況認識だ。特に文大統領は、このため韓日関係改善にも速度を出し始めた。米国は中国封鎖戦略の基本条件として韓日米同盟の強化が不可欠だと判断している。文大統領は今月18日の記者会見で「慰安婦判決は2015年度の合意が両国政府間の公式的な合意だったという事実を認める」とした。2018年2月、安倍晋三前首相との首脳会談で「政府間の交換式交渉で解決できるものではない」としていた言葉を、事実上、翻したことになる」

 

文氏の思い通り、早期の南北対話再開にこぎつける情勢が生まれるだろうか。率直に言ってその可能性は、極めて小さいと言うほかない。バイデン氏が同盟国の意思統一をするには時間もかかる。中国の思惑封じという外交戦略は、思いつきではできないからだ。こうして対中戦略を確立したうえで、北朝鮮問題に取りかかるであろう。となれば、文氏の希望が叶うのは先の話になる。

 

文氏が、日韓関係改善に動いているのは、米国の心証を良くするためだ。特に日韓慰安婦合意では、バイデン氏が副大統領時代にバックアップした事案である。それを、文氏がぶち壊したのだから、元通りにする「義務」がある。

 


(5)「文大統領の立場変化は政府の公式対応にもそのまま反映された。韓国政府は23日のコメントを通じて、改めて「慰安婦合意が公式合意であることを認める」とし「政府レベルでは日本に追加請求しない方針」」と表明した。日本に対しては、外交的論争が避けられない法的賠償の代わりに「自ら表明した責任痛感と謝罪・反省の精神に立脚して被害者らの名誉・尊厳回復と心の傷の治癒に向けた真の努力を見せるべきだろう」と要請した。また、姜昌一(カン・チャンイル)駐日大使が日本赴任直後に記者団と会った席で、日王を「天皇陛下」と呼称したことも日本側の世論を刺激しないというジェスチャーだ」

 

文氏は、自ら振った「反日の旗」を取り下げるのである。韓国国内の反日派には、納得のいかない方向転換に映るに違いない。文氏の支持率低下に影響するだろう。こういう副作用を覚悟しても、文大統領は南北対話再開を図りたいというのが本音なのだ。


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