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米バイデン大統領就任式で、台湾の駐米代表に相当する蕭美琴氏(駐米台北経済文化代表処代表)が、公式招待客として出席した。1979年の米台断交以来、初めてのことだ。これまでは、米議員の招待状で出席してきたという。それが、今回は堂々とホワイトハウスの招待である。米国政府が、台湾をいかに重視しているかを内外に示す絶好の機会になった。

 

蕭氏は現地から、ツイッターに「台湾を代表して米大統領の就任式に参加できることを光栄に思う。次期米政権と協力し、共通の価値と利益を高めていくことを楽しみにしている」と投稿した。これに反発したのが中国である。「一つの中国」が、米中国交回復の条件の一つであったからだ。だが、トランプ政権高官によって昨年9月、「一つの中国」を放棄すると発表済みである。

 

中国は、政権交代後に頻りとトランプ政権を批判して、バイデン政権に阿(おもね)るような姿勢を見せている。米国は、政権交代しても外交政策不変が不文律である。バイデン政権は、トランプ政権の悪口をいくら聞かされても喜ばないのだ。むしろ、警戒するのが普通である。中国は、こういう微妙な心理を読めないのだろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(1月25日付)は、「中国外務省、米の台湾支援方針に反発」と題する記事を掲載した。

 

中国外務省の趙立堅副報道局長は25日の記者会見で、米国務省が台湾との緊密な関係を維持すると表明したことに「中国は国家の主権と完全な領土を守り抜く」と述べた。「外部勢力の干渉に断固として反対する決心はぶれない」とも強調した。

 

(1)「趙氏の発言は米国務省をけん制した形だが、米国が台湾への介入を強めた際に出す従来の答弁ラインの域は出ていない。習近平(シー・ジンピン)指導部はバイデン米政権の出方を見極めようと必死に情報収集しているとみられる。米台関係を研究するある大学教授は「トランプ米前政権に比べバイデン氏が台湾問題で介入をさらに強める可能性は低い」との見方を示す」

 

中国外交部の発言は、従来のような過激なものではない。ごく普通の形式に止まっている。これは、今後の米国との交渉を控えているため自制しているのであろう。中国は、早急な米中交渉をしたいが、米国にその気がないことだ。バイデン政権は、同盟国との結束を固めてから、中国に対応する考えである。

 

下線部では、バイデン政権の台湾政策を甘く見ているが間違いである。蕭美琴氏(駐米台北経済文化代表処代表)が、公式招待客となった意味をはき違えているのだ。

 


(2)「一方で台湾の国防部によると、23日に中国軍の戦闘機「殲16」4機、爆撃機「轟6K」8機、対潜哨戒機「運8」の計13機が防空識別圏(ADIZ)に侵入した。24日には計15機の中国軍機が侵入した。中国外務省と軍の間で対応に温度差があると見る向きもある」

 

中国軍は、士気を高めるべく防空識別圏に侵入する「野蛮行為」を行っている。米国にとっては、これが好都合なのだ。台湾の安全を脅かしたという理由で、米国から台湾への兵器売却の理由になる。まさに、「飛んで火に入る夏の虫」という格好である。

 

(3)「米国務省は23日の声明で、「中国に対して台湾への軍事・外交・経済的圧力を停止し、台湾の民主的に選ばれた代表者と有意義な対話を行うよう促す」と表明した。「十分な自衛能力を維持するよう台湾を支援していく」とし、台湾との緊密な関係を維持する意向を鮮明にした」

 

中国による台湾への威嚇行動は、米国からこういう形で逆襲されるのだ。専制主義が、民主主義を圧迫しているという構図で、西側は中国批判に回るのである。

 


(4)「
声明は、台湾を国交のある国と同等に扱ったり、台湾への武器売却を定めたりした1979年の台湾関係法や、台湾への武器売却について中国と事前協議しないことなどを定めた1982年の「6項目保証」などをあげて「米国は長年にわたる約束を維持していく」と説明した。「台湾との約束は安定したものであり、台湾海峡や地域の平和や安定の維持に貢献する」とも強調した」

 

1982年の「6項目保証」とは、次のような内容である。

1)台湾への武器販売の終了日を設定することに合意しない。

2)台湾と中国の間で、米国は仲介する役割はないとの認識がある。

3)また、台湾に圧力をかけて中国との交渉をさせようともしない。

)台湾の主権問題に関する我々の長年の立場に変化はない。

5)台湾関係法の改正を「求める予定はない」。

6)第二次上海コミュニケは、「我々が台湾への武器販売について北京と事前協議を行うことに合意したと意味するように読まれるべきではない」

 

以上の項目によって、米国の台湾への武器供与を継続し、台湾の自立を保証する内容だ。中国軍機の威嚇飛行は、「6項目保証」によって中国にマイナスとなる。

 

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