あじさいのたまご
   

文大統領は、残りの任期が1年余に迫った現在、北朝鮮との対話再開に全力を上げている。これに役立つと思えば、日本との膠着状態解消に向かって動き始めるほど。いったんは骨抜きにした日韓慰安婦合意について、「合意は存在する」とまで前言を翻したのだ。

 

肝心の北朝鮮は、文大統領の任期が少なくなっている点を計算しているとの見方が出て来た。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代、任期4ヶ月を残す時点での南北合意は、何ら実行されずに終わったという事実があるのだ。北朝鮮が、こういう過去を振り返れば、文大統領と交渉再開するか疑問というのである。

 

韓国系北朝鮮専門家である米国ブルッキングス研究所韓国碩座、チョン・パク氏(韓国名パク・ジョンヒョン)が、次のように気になる発言をしている。文政権は、「北朝鮮政権との関係で進展がほとんどない」と指摘したのだ。『朝鮮日報』(1月15日付)が報じた。パク氏は、元CIA分析官を務めた人物である。


『中央日報』(1月26日付)は、「金正恩の時間、文在寅の時間」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙のイェ・ヨンジュン論説委員である。

 

「分離線は簡単に越えることができるものだが、歴史的なこの場にくるまで11年かかった」。2018年4月27日、板門店(パンムンジョム)で文在寅(ムン・ジェイン)大統領と向き合って座った北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の第一声だった。金委員長は「失われた11年」という表現を何度か使いながら「過去にいくら良い合意や文が出てきても、まともに履行できなければ失望を与える」と語った。

 

(1)「金委員長が話した「過去」とは2007年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記の10・4南北首脳会談を意味する。当時の合意文にある約束はほとんど守られなかった。金正恩委員長は「失われた11年」の責任をそれとなく韓国のせいにし、核開発で制裁を自ら招いた責任には触れなかった。実際、10.4合意は発表当時から守られないという予想が多かった。盧武鉉政権の任期がわずか4カ月しか残っていない時点に莫大な予算が必要な事業を総網羅したものだったからだ。北朝鮮は任期末の政権を安易に相手にしてはならないという教訓をこの時に痛感したはずだ。いま文在寅政権の相次ぐ提案にも反応しない冷たい態度も残りの任期と無関係ではないとみられる」

 

金正恩氏は、「失われた11年」という言葉を繰返した中に、盧武鉉・金正日の首脳会談が何らの成果を残せなかったことを指している。そうとすれば、文在寅大統領についても残す任期の短さから見て、同様の推測が可能だろう。

 


(2)「文大統領も先週の記者会見で「残りの時間は多くない」と述べた。大統領の選択は鄭義溶(チョン・ウィヨン)前安保室長を外交部長官に指名したことで浮き彫りになった。大統領は新年記者会見で「シンガポール宣言から再び始めて交渉していけば、速かに米朝および南北対話ができるだろう」と述べた。この発言のように、南北首脳会談、米朝首脳会談を積極的に推進するのが彼の任務であるはずだ。愚直にこれまでの道を進むという執念、あるいは最後の瞬間までリンゴの木を植えるという姿は高く評価されるが、柔軟な現実感覚が見えないのが残念でならない」

 

文大統領は、次期外交部長官に鄭義溶氏を指名したが、これこそ北との交渉で最後の大勝負に出た印象を強めている。ただ、鄭氏はトップダウン方式の交渉に向くが、バイデン米政権のボトムアップ方式の外交には不適というジレンマを抱えている。

 

(3)「最も大きな問題は米国の新政権との認識の違いだ。バイデン大統領は米朝首脳会談を成果のないリアリティーショーと規定し、その時間を利用した北朝鮮の核武装強化を防げなかった失敗作と評価する。米朝会談の仲裁者だった鄭義溶候補(注:次期外交部長官)は「非核化プロセスは不可逆的な段階に進入し、北もこの過程を戻すことはできない」と述べた。バイデン政権と調整された政策を用意するのは決して容易でないという予想が出てくる理由だ」

 

鄭氏が、バイデン政権と上手く歩調を合わせられるかは疑問である。米国と外交方式が異なるからだ。

 


(4)「今この瞬間、金正恩委員長の頭の中は、バイデン政権の動向を探知して今後の動きを予測することで一杯だろう。筆者は金正恩委員長が対話も挑発も急がないとみている。金委員長は「時間は我々側にある」と語った。昨年10月の党創建75周年軍事パレード当時、「我々は(5年前に比べて)強くなり、試練の中でさらに強くなっている」と述べながらだ。南北首脳会談、米朝首脳会談に応じながらも不断に核武力を増強させたことに満足感を表したのだ」

 

北朝鮮の金正恩氏は、最終目標である核増強に向けて動いている。軍事力に頼っている以上、南北首脳会談を急ぐ理由はない。ましてや、残り任期が1年余の文在寅氏と会談して合意しても、実行はされないと見ているからだ。


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