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韓国は、若者が銀行から借り入れて株式投資にのめり込んでいる。本欄では、その危険性を取り挙げてきた。株式投資を博打のような感覚で始めたこと自体に危険性を感じるのだ。

 

米国第35代大統領のジョン・F・ケネディの祖父は、有名な投資家であった。1929年10月の世界恐慌直前、ニューヨークの靴磨きの少年が、「旦那、今日の株価はどうですか」と聞いた一言に、株価の爛熟を覚り持ち株のすべてを最高値で売却し無傷であったという。この話は有名である。ケネディ家から大統領を出す経済的基盤は、こうしてつくられたのだ。

 

私は、韓国の若者が借金して株式投資を始めていることに、極めて大きな危険性が訪れていることを予感してきた。本欄でも取り挙げている。その矢先に、米英の二大経済紙である『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)と『フィナンシャル・タイムズ』(FT)が、揃って株価暴落危機の警告記事を掲載した。この記事を取り上げることにした理由だ。

 


WSJ(1月25日付)は、「今の米株はバブル? ITバブルと5つの類似点」。FT(1月25日付)は、「プロ投資家の間で高まる株式バブル懸念」をそれぞれ、掲載した。同時期に、このような記事を掲載したことに偶然の一致とは言え、耳を傾けるべきと思う。

 

ここでは、WSJの記事を取り上げることにする。

 

ドットコム・バブルと足元の株式市場の比較に筆者は抵抗があった。だが今となっては無視できないほど似通っている。以下に、大きな5つの類似点をまとめた。市場全体をバブルと呼ぶ注意点も1つ挙げておく。

 

(1)「話題株の指数関数的成長:電気自動車(EV)やクリーンエネルギー関連株はこの数カ月、急上昇している。EVメーカーの テスラ はその最たる例だ。同社の株価は昨年8倍に上昇し、時価総額で5番目に大きな米企業となっている。今年は年初から時価総額を1340億ドル(約14兆円)増やしており、2020年初の時価総額780億ドルからはるかに規模が拡大している」

 

現在は、EV(電気自動車)が、新技術として人気を集めている。新興EV企業のテスラが、上海へ進出して以来、人気はうなぎ上りである。テスラは、世界の自動車企業トップのトヨタの時価総額を大きく引き離すほどの人気企業に踊り出た。

 


(2)「人気テーマに乗じた早期段階のIPO急増:
新規株式公開(IPO)と代替手段として現在利用されている特別買収目的会社(SPAC)がブームとなっており、著名な出資者を引き寄せ、利益はおろか売り上げもない企業の上場を可能にしている。新規上場銘柄で構成されるルネサンスIPO指数は昨年、2倍余りに上昇。2009年に同指数が始まって以来の好調をこれまで見せている。その筆頭格といえるのは、独自動車大手 フォルクスワーゲン (VW)が一部所有するクアンタムスケープだ」

 

クアンタムスケープは、全固体電池の研究で注目されている。だが、この分野でトヨタは1000以上の特許を擁する世界最前線に位置にある。全固体電池は、リチウムイオン電池と異なり、発火しないことや充電時間が三分の一程度に短縮されるなど、夢の電池とされる。トヨタは、2025年までに実用化してEVに搭載する。今年の東京五輪で試作品が登場する見込みだ。

 

こういう実績のあるトヨタ株は動かず、新興企業のクアンタムスケープが市場で注目を集めるという「バブル現象」を呈している。

 


(3)「何をしているのか分かっていない新参投資家:誤解しないでほしい。賢くて情報通の小口投資家もたくさんいる。だが、大勝ちを狙った初心者による素人的なミスに相場は振り回されている。筆者は最近、単に低位株であることを理由に株を買うことについて執筆した。それは見当違いも同然だが、年初から数週間、相場を押し上げた、という趣旨だ。さらに耐えがたいのは、間違った銘柄を買うことだ。昨年、銘柄コードが「ZOOM」という以外にほとんど知られていない中国の携帯部品メーカー、ズーム・テクノロジーズ株に買いが殺到した」

 

株式の「カ」の字もよく分からない新参投資家が、企業実態を調べないで投資している。これは、極めて危険なシグナルである。

 

(4)「オールドエコノミー株急騰、人気テーマにあやかる:米自動車大手 ゼネラル・モーターズ (GM)と フォード・モーター は今年、韓国の現代自動車と共に、電動モーターという魔法の粉を自身に振りかけることに成功している。3社の株価は年初来、それぞれ約30%上昇している。GMとフォードはS&P500種指数の構成銘柄で最も好調な銘柄に数えられる」

 

オールドエコノミーまで買われることは、バブル化した証拠として、しばしば「一相場」の終焉を告げるシグナルとされている。循環買いが終わったという意味である。
 


(5)「話題株の上昇支えた初期の投資家は売却:
再生可能エネルギーやEVに早期から投資する投資家の多くは、基調としてはそうしたテーマを今でも信じているものの、利益の一部もしくは全部を現金化して成長が見込める他の割安な分野へとシフトしている。英資産運用会社ベイリー・ギフォードのパートナーで投資マネジャーであるジェームズ・アンダーソン氏は、早くからテスラに投資していた。多くの保有株を売却した今でも、同氏は最大株主の一人であり続けている。アンダーソン氏は、バッテリーやソーラーカー、EVに関連したIPOとSPACへの熱狂的な需要を懸念している。「根拠があるといえるだろうか。私は全くそう思わない」

 

話題株を最初に手がけた玄人筋は、たっぷりと利益を上げてすでに売却している。現金化を終えて、この相場の暴落で再び買い出動するタイミングを待っているのだ。そうとは知らない大衆投資家が、目先の値上り益に酔って全財産をつぎ込み大損を背負い込む段階である。株式投資は、波のようなもの。上手く波乗りするテクニックが不可欠である。仮に、米国株に異変が起これば、日本や韓国など世界に波及する。その影響を恐れるのだ。

 

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