米国アップルが開発中の自動運転EV(電気自動車)製造を巡り1月8日、韓国の現代自動車株価は急騰する騒ぎになった。アップルといえば、世界一のスマホ企業である。この連想から、「アップルEV」への期待が高まるのは当然だ。
アップルは、EV関連情報について極度に神経質であり、先の現代自動車の株価急騰の事態を嫌っている。今回の韓国での騒ぎについても一切のコメントを拒否する徹底ぶりだ。アップルは韓国での情報漏出を嫌い、その後の交渉をストップさせているとの情報が出てきた。一方、日本企業への打診説も流れている。アップルが、どこへEVの生産委託するのか、依然として白氏状態である。
『ブルンバーグ』(1月8日付)によれば、米アップルが進める自動運転の電気自動車(EV)開発は依然として初期段階にあるため、投入は5~7年先になりそうだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。従来のプロジェクトの重点は基盤となる自動運転システムの開発が中心だっただけに、一段と野心的な目標を掲げている。同社はEVメーカー、テスラの元幹部も同プロジェクトにより多く参加させている。
『ブルンバーグ』(2月6日付)は、「アップル、現代・起亜とのEV生産巡る協議が最近中断-関係者」と題する記事を掲載した。
米アップルは電気自動車(EV)の生産に向け、韓国の現代自動車と同社傘下の起亜自動車と協議を行ったが、話し合いは最近中断された。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同関係者によると、アップルは他の自動車メーカーとも同様の計画について協議してきた。情報が公開されていないことを理由に匿名で語った。
(1)「アップルが秘密裏に進めるEV開発プロジェクトは、この数カ月で勢いづいた。アップルが消費者向け端末市場をつくり変えたように、同プロジェクトは自動車産業とそのサプライチェーンに大きな影響を与え得る。アップルはコメントを控えた。現代自動車は今年1月、アップルと自動運転のEVを巡る開発協力で協議中との報道を認めた当初の発表文を修正し、アップルへの言及を削除した」
つい一月前、韓国株式市場は沸きに沸いた。だが、これは、現代自動車の早とちりが原因で、同社は一日に2度も訂正情報を出す混乱に陥った。アップルからの問合せを、「交渉」という現実味のある内容にしてしまった結果だ。
(2)「この発表や、協議に関するその他の報道にアップルは不快感を抱いたという。同社は開発プロジェクトを長年にわたって秘密にし、サプライヤーとの関係を容赦ない効率性を持って管理している。アップルと現代自動車の協議が再開するかどうかや、その時期は不明。車両を大量生産する能力を有する世界的な自動車メーカーの数は限られ、そのうち何社がアップルとの提携に関心を持つかも不明だ」
前記の韓国の騒ぎについて、アップルは不快感を抱いているという。このため、「口の軽い」韓国企業を敬遠しており、その後の交渉が中断した。
(3)「関係者1人によると、アップル向けにEVを生産するのが「現代」「起亜」のどちらのブランドになるかを巡り、現代自動車グループ内で対立があるという。交渉が再開された場合、起亜となる可能性の方が高く、同社は米ジョージア州の工場で「アップルカー」を組み立てることを目指していると、同関係者は語った」
韓国では、現代と起亜の話合いで、起亜が「アップルカー」を担当することで話合いがついたという。肝心のアップルは、中断している交渉を再開するかどうか不明である。目下、日本企業へ打診しているとのニュースが出てきたのだ。
『日本経済新聞 電子版』(2月5日付)は、「アップル、日本勢にEV生産打診か 水平分業の決断迫る」と題する記事を掲載した。
米アップルが電気自動車(EV)を巡り、日本を含む複数の自動車メーカーに生産を打診しているもようだ。サプライヤー幹部は「少なくとも6社くらいで交渉が進んでいる」と指摘する。自動車各社は設計・開発と生産を分担する「水平分業」モデルを受け入れるかどうかの難しい判断を迫られている。
(4)「あるサプライヤー幹部は、「韓国メーカーで決まるか分からない。(アップルが)どこにつくらせるか、交渉を進めている段階だ」と明かす。ファブレス(工場なし)経営で知られるアップルは、スマートフォン「iPhone」の生産を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業などに生産委託するなど、水平分業モデルを採用する。EVへの参入にあたっても自身はデザインや設計に特化し、生産は自動車メーカーなどへ委託する方向で交渉が水面下で進む」
「アップルカー」の製造を引き受ければ、水平分業となる。アップルから設計図とデザインを渡され、カー・メーカーがそれに従い製造するもの。大量の台数が保証されれば別だが、少ない台数で指導権をアップルに奪われることのデメリットも考えなければならない。トップ企業としては、難しい選択であろう。スマホのような数万円単価の製品と、数百万円単価のEVでは話が異なるのだ。
(5)「日本では、アップルが横浜市に構える研究拠点が国内の完成車メーカーや部品メーカーとの接点になっているようだ。アップルからの打診について、ホンダやマツダは「コメントできない」(広報)と説明。三菱自動車は「そのような事実はない」(同)とし、日産自動車はコメントを控えた」
コメントしない企業は、アップルからの打診があるのだろう。ホンダ・日産・マツダは打診を受けていると見られる。
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