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世界一の自動車市場である中国で、日本車が快走している。昨年の中国市場での日本車シェアは、26%に達した。4台に1台は日本車である。外資系シェアで首位を維持してきたドイツ車を抜いた。

 

日本車が、外資系でトップに立ったのは、今後の中国市場で大きな収益チャンスを握ったにも等しい。2030年には、EV(電気自動車)とHV(ハイブリッドのほかにプラグインも含む)のみが許される。日本車が、HVで独走態勢を固めるので絶対的有利と言えよう。

 

『朝鮮日報』(2月7日付)は、「コロナでも善戦した中国自動車市場、日本車快調・韓国車後退」と題する記事を掲載した。

 

(1)「世界の新車販売で3台に1台が売れる中国市場で今、日本車が快調に走り続けている。日本の自動車メーカーは昨年、中国だけで520万台を売り上げ、シェア約26%を記録した。中国で売れた乗用車の4台に1台が日本車だったことになる。これにより、日本車はドイツ車を抜き、昨年の中国市場で外国車のトップ(現地生産車と輸入車の合計)に立った。日本車が外国車でトップとなったのは2012年に尖閣諸島を巡る中日外交紛争の影響で販売が減少して以来8年ぶりのことだ。中国で外資系最古参のドイツ車は509万台(シェア25%)にとどまった」

 

日本車が有利なのは、故障が少ないことや中古車価格が崩れないことである。つまり、コスト・パフォーマンスが抜群である。長い間、日本車は悪い噂に悩まされてきた。薄い鉄板が弱い証拠とされてきたが、高張力鋼という最高品質を理解できなかったのだ。その誤解も解けたのであろう。

 


(2)「トヨタが180万台を売り上げ、昨年を11%上回ったのが目立った。昨年、中国の乗用車市場(セダン・SUV・バン)が6%縮小したのと対照的だ。トヨタは中国での販売増でフォルクスワーゲンを抜き、5年ぶりに世界でも販売台数首位に返り咲いた。ホンダも163万台を売り上げ、前年より5%販売を伸ばした。中国の『愛国マーケティング』にも動じなかった。地場メーカーの販売台数は774万9000台(シェア38%)だが、前年を8%下回り、全体平均よりも減少幅が大きかった」

 

中国の民族系が、前年より8%も減った中で、トヨタは11%増、ホンダは5%増と好調であった。日本車の評価の高さを裏付けている。

 

(3)「自動車メーカーは現在深刻な資金難に直面している。トヨタ、フォルクスワーゲンなど優良メーカーも電気自動車(EV)、自動運転車など未来技術の開発費を確保しようと苦慮している。自動車メーカーが実際に収益を上げるまでにはまだ5~10年を要する。収益源が減る中、投資需要だけが雪だるま式に増えている。こうした状況で自動車メーカーが多額の収益を上げられるのは中国しかない。欧米は環境規制が厳しくなり、自動車メーカーは収益を上げるどころか、規制に伴う罰金が上回りかねない。このため、日本車が中国で年間500万台以上を売り上げるということは、各社が未来に備えた資金力を蓄えるという意味でもある」

 

日本車が、中国で26%のシェアを確保したことは、将来の経営戦略で大きな橋頭堡を築いたことになる。日本車が、中国で年間500万台以上を売り上げる基盤ができたからだ。

 


(4)「日本車の躍進が恐ろしいのは、中国が現時点で最大の自動車市場であるのみならず、未来のエコカー市場で「金のなる木」に等しいからだ。
中国市場で劣勢に立てば、自動車メーカーとしての未来がないと言える理由は、中国のエコカー市場の成長はこれからだからだ。中国政府は2030年から内燃機関車の販売を禁止し、新車販売の50%をEV、残る50%をハイブリッド車とする方針だ」

 

トヨタは、HVの基本技術特許を無料で公開している。HVの動力源は、電気とガソリン併用であるので、簡単にEV(電気自動車)に転換できるのだ。これは、2030年以降の中国自動車市場で、トヨタが強い競争力を確立したことを意味する。トヨタの部品を地場の自動車企業に供給できるメリットがある。トヨタ系部品企業が潤うのだ。

 

(5)「2030年時点の中国の自動車市場を3000万台規模と仮定しても、年間でEV1500万台、ハイブリッド車1500万台の市場が形成されることになる。ハイブリッド車の技術力が高いトヨタ、ホンダには絶対に有利だ。日本車は現在のペースで販売を伸ばすだけでも、中国市場で巨額の収益を上げる可能性が高い」

 

2030年でHVが1500万台売れるとすれば、トヨタとホンダがほぼ100%占めることになろう。日本車が、絶対的な強みを持つ理由である。

 


(6)「数年前からトヨタなどが中国の提携先のハイブリッド車開発まで支援しているのもそうした布石だ。日本が、30年時点で1500万台という中国のハイブリッド車市場を独占できるわけでもなく、中国がそれを座視するはずもない。中国と協力し、彼らにも利益を上げさせることで、未来の中国のハイブリッド車市場で日本も恩恵にあずかる計算が働いている」

 

トヨタがHVで特許を無料公開したのは、中国企業にもメリットを与え、トヨタも得られるという共存共栄路線である。

 

(7)「トヨタが昨年、中国企業5社と燃料電池開発に取り組む合弁会社を設立したこともその延長線上にある。トヨタが65%を出資し、習近平国家主席の母校である清華大学や北京汽車、第一汽車、東風汽車、広州汽車という中国の自動車メーカー4社もそれぞれ5~15%を出資した。合弁会社が開発した水素自動車システムは22年から中国製のトラック、バスに搭載される。トヨタとしては、技術を握って市場を独占するという戦略を捨て、中国に与えるものを与え、最終的な勝者を目指す狙いだ」

 

究極の無公害車であるFCV(水素燃料電池車)では、トヨタが強力な布陣を固めた。韓国の現代車も競っている。この燃料電池開発で、トヨタは中国で合弁会社を設立し、EVやHVの先を見据えた中国戦略を構築している。

 

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