a0960_008729_m
   

主要国では、海外進出した製造業のリショアリング(国内回帰:Uターン)に力を入れている。国内雇用の確保が目的である。韓国でも力を入れているが、これに応える企業が年間十数社というわびしい状態だ。理由は、国内の賃金の高さのほかに、労働時間数の制限や悪名高き労組の存在に二の足を踏んでいる。

 

こういう状況が改善されない限り、Uターン企業の増加は不可能だけでなく、海外企業の中国進出も望めまい。文政権の反企業政策が、企業の国外追出しを招いているので、構造的な問題である。

 

『中央日報』(2月8日付)は、「日米は1年間に数百社がUターン、韓国は16社だけ」と題する記事を掲載した。

 

米国や日本では海外から自国に戻るUターン企業が毎年数百社にのぼるが、韓国は10社ほどにすぎないことが分かった。韓国貿易協会は7日、こうした内容の報告書「第4次産業革命時代、製造業技術革新とリショアリング」を出した。

 


(1)「韓国貿易協会の報告書によると、韓国国内Uターン企業数は次のような推移である。

2014年 20社

15年  3社

16年 12社

17年  4社

18年  9社

19年 16社

以上のように極めて少ない状況である」

 

韓国企業のUターンが少ない理由は、すでに説明した通りである。「貴族労働組合」と揶揄されるほど、賃上げ交渉力が強いほか、反企業的な規制が多い。企業活動の制約が増えていることが、企業のUターンを拒んでいるものと見られる。

 

(2)「米国のUターン企業は毎年急増している。海外に進出して米国に戻った企業は、2010年が95社にすぎなかったが、18年には886社に増えた。8年間に9倍以上に増えた。韓国貿易協会は米国のUターン企業が今後さらに増えると予想している。貿易協会のカン・ネヨン研究員は、「新型コロナ以降に発表した米政府の景気浮揚策に6000万ドル規模のUターン企業インセンティブが含まれるなどリショアリングを積極的に誘導している」と説明した」

 

米国では、Uターン企業が増えている。2010年の95社が、18年には886社へと急増している。技術革新によって多品種少量生産でも、大量生産に比べて生産コストがさほど変わらない状況が生まれているからだ。

 


(3)「日本でもUターン企業が増えている。2006~18年に7633社が日本に復帰した。年平均587社だ。2008年のグローバル金融危機以降、日本企業のUターンは加速している。貿易協会によると、グローバル金融危機以前は年470社ほどが日本に戻っていたが、金融危機以降は600~700社に拡大した。特に中国進出企業のリショアリングが活発だ」

 

日本企業のUターンが激増している。「メード・イン・ジャパン」の価値が上がっているからだ。同じ日本製品でも「メード・イン・チャイナ」では、製品価値が下がるという珍現象が起こっている。中国企業が、わざわざ日本国内で製造して「メード・イン・ジャパン」を名乗るほどである。

 

(4)「欧州は英国、イタリア、フランスを中心に本国に戻るUターン企業が増えている。2014~18年のUターン企業数は英国(44社)、イタリア(39社)、フランス(36社)だった。貿易協会は「欧州のリショアリングは製造業が全体の85%以上を占め、主に中国に進出した企業を中心にリショアリングが活発になっている」と分析した」

 

欧州企業も、Uターン数が増えている。中国での人件費増加によって、採算が悪化しているのが理由である。また、企業内に共産党支部がつくられていることも嫌気されている。ここでも、技術革新によって生産コストの切り下げが実現している。

 


(5)「貿易協会は、米国などでUターン企業が増える理由として、第4次産業革命による製造技術革新を挙げた。貿易協会は「リショアリングが活発な米国・日本などは技術革新関連の主要指標で上位30位以内に入っていることが調査で分かった」と説明した。貿易協会は国内に戻ってくるUターン企業を増やすためには、税金減免や雇用補助金支援のほか、ICT技術を活用した製造工程革新に対する支援が必要だと指摘した」

 

技術革新の停滞時には、人件費の安さが最大の武器であった。現在の第4次産業革命の進行は、多品種少量生産でもコスト増を抑えられることに成功している。大量生産のメリットが減っているのだ。

 

(6)「貿易協会カン・ネヨン研究員は、「国内製造業の生態系を高付加価値化する必要があり、このためには製造工程のスマート化が必須」とし、「政府および企業レベルの研究開発投資拡大や高級人材育成が必要で、中小企業のための技術開発支援も重要」と強調した」

 

韓国でも、生産技術のスマート化に取り組めば、Uターン企業を増やせる方法を見つけられるかもしれない。ただ、政府の反企業的政策が、ブレーキであることに変わりない。

 

次の記事もご参考に。

米国、「対中強硬策」日欧と協議済ませ米企業回帰狙い「秋から始動」

2018-08-27